60 おっさん弄ばれる
俺は街の城壁の門の傍にある馬車ターミナルにあるベンチに1人座っていた。
時刻は夕方。
そろそろ日が沈み、街の城門が閉じられる時間である。
城門が閉じても街に入ることができなくはないが、時間外の対応手数料をとられてしまうのでこの時間は街に駆け込もうとする冒険者や商人たちでごった返している。
そんな混雑の中であっても俺は我がパーティーの面々を直ぐに見つけることができた。
「あっ、おじさんだ。迎えに来てくれたの?」
目ざとくも俺を見つけたのはピンク頭の我がパーティーのリーダーであるアンジェだった。
俺が声を掛けるよりも早くに俺に気付くとはなかなかやるな。
アンジェは衛兵に冒険者の身分証を見せて難なく手続を済ませると一目散に俺の元へと駆け寄ってきた。
なんかご主人様にしっぽを振っている犬のようで何か微笑ましい。
そんなアンジェを保護者役のケインは後ろで苦笑いを浮かべて見ている。
「おかえり、元気そうで安心したよ。ダンジョンはどうだった?」
「うん、やっぱり魔物とか強かったけど何とかなったよ。おじさんの付与魔法のおかげで攻撃を受けてもダメージもあんまり受けなかったし」
やはりケインの言う通り、上のランクに行けばいくほど防御が大事になっていくのだろう。
というよりもそもそも今までが雑過ぎた。
いくら機動力重視といってもそれには限界があるというものだ。
「おじさま、わたくし早くお風呂に入りたいですわ。立ち話も何ですし、早くパーティーハウスに戻りませんこと?」
「そうだよ。携帯食ばっかでお腹空いたよ」
「(コクコク)」
そうだな。
こんなところで立ち話もなんだし、とっとと帰るか。
俺はケインと話をして急ぎの話がないかを確認したが、苦笑いされて「とっとと帰れ」という言葉とともに『シッシ』と手を振られた。
なら、お言葉に甘えて帰るとしよう。
俺たちは5人で一緒にパーティーハウスへと歩いて帰った。
その途中でアンジェからダンジョン内でのあれこれを簡単に話してもらった。
話してもらったというよりはアンジェが興奮収まらないのか、一方的に話をしてくれたって感じだ。
結構な内容を聞き取れたので、報告書を書くにはもうほとんど材料がそろったと言えるほどだ。
歩いて10分ほどでパーティーハウスに到着した。
「どうする? 風呂でも飯でもどっちでもいけるぞ?」
「う~ん、ご飯はやっぱりみんなで食べたいし、かといって早くお風呂にも入りたいし、でもでもお腹も空いたしな~」
「だったらみんなで風呂に入ろうぜ。湯舟は2人ならいけるし、その間、外で身体を洗えばいいだろ?」
「そうですわね。元々このパーティーハウスは冒険者の殿方たちを想定して作られていますのでわたくしたちであれば入れそうですわね」
ほうほう。
年若い娘さんたちがみんなでお風呂か。
いいね。
やっぱり洗いっことかするのかな?
「あっ、おっさん、何か想像してるだろ? いやらしーな~。だったらいっそのことおっさんも一緒に入るかよ?」
「あら、それは面白そうですわね。なかなか殿方の裸は見る機会がございませんし」
「ボクも恥ずかしいけどおじさんがどうしてもって言うんなら……」
えっ、ホント!?
ほんとにいいんですか?
「もう、おっさん、嘘だよ。そんなわけないだろ。変な期待するなよ~」
むうっ。
ユリアの言葉で我に返ったが、おっさんを弄ぶとはけしからんな。
ユリアはおっさんポイント減点だな。ピロリー。
こうして4人娘は仲良く一緒にお風呂に入りましたとさ。
さて、その間に飯を食えるようにしておくか。
俺は腕まくりをしてキッチンに向かった。