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55 おっさん欲望に負ける

 

「おじさま、おじさま。次はわたくしのこれに付与を掛けていただけませんこと?」



 アンジェたちの冒険用の服に付与を終えて一段落したところでルージュが部屋に駆け込んできた。


 手にしていたのは1着の服。


 うん、えらくヒラヒラがついている豪華絢爛ごうかけんらんなドレスですね。


 この前一緒に買い物に行ったときに着ていた服かな?


 うちのは一体どこの貴族様のパーティーに行かれるんでしょうか?


「え~と、ちなみにこれにどんな付与を掛ければいいのかな?」


「そうですわね。防御力アップ、重さ軽減、身躱しアップ、それから……」


「ストップ! ちょっと待て。ひょっとしてこれを着て冒険クエストに行こうっていうんじゃないだろうな?」


「何か問題がありますの?」


 きょとんとした表情で俺を見るルージュ。


 いや、問題しかないだろう……。


「ふふん、おじさまは古いですわね。今や冒険クエストにドレスを着ていくことは一つの流れ(トレンド)、決して奇抜なことではありませんわよ?」


 えっ、マジか。


 さすがに事務職の俺としては冒険者の装備の流行(トレンド)にそこまで詳しくはない。


 もうおっさん、時代に取り残されてる感じ?


「いやいや、おっさん、だまされたらダメだぞ。ルージュが言ってるのは帝国の姫騎士殿下のことだから。他にそんな奴いないから」


 廊下にまで俺たちが話している声が聞えたのだろう。


 ユリアが部屋に入ってくるや間髪入れずにそう言い放った。


「ちょっと、ユリアさん。少し黙っていていただけるかしら。今はわたくしがおじさまとお話していますのよ?」


 あぶね~、ピュアなおっさんをだまさないでくれよ。


 それでも一応はいるんだ、そんな人。


「おじさま、ここは負けてはいけないところだと思いますわよ。せっかくおじさまがその様な能力を授かられたんですもの。ここは有効に活用致しませんと」


 おいおい、いったい誰と勝負してるんだよ……。


「う~ん、でもなぁ~」


 冒険クエストは遊びではない。


 そんな格好でうろうろして魔物にやられましたとなれば元も子もないというものだ。


 ここはひとつ心を鬼にして……。


「おじさま、やっていただけるのでしたら、是非おじさまにわたくしの着替えを手伝っていただきたいですわ」


「えっ!?」


「ドレスは1人で脱ぎ着できるわけはありませんもの。当然のことなら手伝っていただく方がいらっしゃいませんと。付与の調子を見ていただく必要もありますし、いかがです?」


 ルージュが、しなを作りながら俺を上目遣いに見上げる。


 うわ~、このまだ10代だよな?


 なんかもう、エロさというか男を狂わす妖艶さがにじみ出ているんだが?


「そう言って、そのときになったら目隠しとかさせるんだろ? ピュアなおっさんをもてあそぶのは感心しないぞ」


 あはは、と俺は乾いた声で笑った。


 それに対して、うふふ、とルージュ嬢。


「まさか、それではきちんと手伝っていただくことができませんわ」


 えっ!?


 本当にこんな若い女の子の生着替えを俺みたいなおっさんが手伝っちゃっていいの?


 見えるよね。


 当然、アレとかコレとか見ていいんだよね。


 後で訴えたりしないよね?


 それじゃあ一筆書いてもらおうかな。


 いまさらやっぱり嘘です、ごめんちゃいって言ってもダメだぞ。


 これであんなところやこんなところまでじっくりねっとり……。


 いや、いや、待て、待て。


 冷静になれ、俺。


 この前、調子に乗って失敗しかけたことを忘れたのか!


 俺みたいなおっさん(童貞)は色気を出すとろくなことがない。


 そもそもこんな一回り以上も年下の女の子の生着替えを見たからといって何だというんだ。


 しっかりするんだ俺!


 ここは大人の余裕をだな……。


「最近、胸のサイズが少し大きくなりましたの。ご覧になりたくはありませんこと?」


「はい」


 おっさんはあっさり欲望に負けた。





 でも結局、あの後アンジェのリーダー特権(横槍)が入って、ルージュの件は結局うやむやになった。


 何かひどくもてあそばれた気分だ。


 謝罪と賠償を求める、と言いたいとこだが……。


 まあ、おっさんが夢見ちゃダメだよな(反省はする、だが後悔はしない)。


 やっぱり現実を見ないと。


 あ~、誰か俺の嫁さんに来てくれる人はいないかな~。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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