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53 おっさん心を鬼にする

 ケインと交わした業務請負契約書の報酬の一部としてケインはうちのパーティーに助言や指導をすることになっている。


 ケインは俺のアーティファクトのことを知ると今後の指導の進め方を俺とも話しながら相談したいと言い出した。


「トミーが付与魔法を使えるっていうならちょうどいい。この機会に『華乙女団』の嬢ちゃんたちが装備にどんな付与をしているのか事前に確認させてくれ」


 この世界、いわゆる汎用装備についてはそれなりの性能しかない。


 そのため、冒険者たちは付与魔法使いに頼んで、定期的に装備に性能強化の付与魔法を掛けてもらうことが多い。


 付与魔法ギルドでは、有効期間を1週間単位で依頼を受け付けていて、有効期間の長さと付与の内容・レベルによって料金が変わってくる。


 ケインからの質問を聞いた俺の仲間(うちのこ)たちを見ると、みんな視線をあちこちに彷徨わせている。


 おいおい、待てよ……。


 ひょっとして……。


「なあ、まさか装備に付与を全くしていない、とかはないだろうな?」


 俺は恐る恐るみんなに尋ねた。


「にゃはは、いや~、付与をお願いする時間がなくって」


「ボクたち、お金がないからなかなか……」


 そういえば以前に武器の状態を鑑定したときも付与魔法は全くかかっていなかったな。


 冒険者の装備への付与は基本冒険者自身がするものなので古巣でも俺が関わることはなかった。


 そういうこともあって『華乙女団』に来てからも装備への付与に関しては俺は完全に思考停止していた。


 正直ちょっとぬかっていたな……。


 俺はちらっとケインの方に視線を向けると、ちょっとコメカミがぴくっとしたのがわかった。


「嬢ちゃんたち、じゃあ防具はどんなのを使ってるんだ? 今日の訓練では特別何か使ってないみたいだが修理にでも出してるのか?」


「いえ、わたくしたちはいつも今の様な格好ですので、そのままですわよ」


 ルージュがあっけらかんとそう答えた。


 アンジェたちの服装は見た目はいわゆる布の服よりもちょっと丈夫という程度の旅人の服とでもいうべきものだ。

 しかし、そこはやはり冒険者が着る服なので、その糸にはシルバースパイダーという魔物の糸が使われていて、低級の革製防具と同程度の防御力はある。

 年頃の女の子たちだけあって、そのデザインも若干おしゃれ気だ。


「は~、まあ、嬢ちゃんたちが機動力を柱にしているパーティーだからかろうじて許せるが、それでもその装備が通用するのはDランクのクエストまでだ。一人前のCランクのクエストからじゃ、正直ちょっと心もとない。そんな状態でBランク以上のクエストをやったら正直死ぬぞ?」


 ケインの言葉に先日の失敗を思い出しだようでみんなの視線が泳いだ。


「おいおいトミー、ひょっとして……」


「ああ、まあ、ご想像のとおりというか……」


 俺は先日の失敗をちょっと、ほんのちょこっとオブラートに包んでケインに話した。


 それを聞いたケインはちょっとうつむいてプルプルと震えているかと思うと、突然叫んだ。


「お前ら、何やってんだ! わかった。俺が一人前の冒険者のイロハってやつを叩き込んでやる!」



 こうして急遽『Aランク冒険者ケイン先生の死なないための冒険者講座』が開かれることになった。


 終わったときにはアンジェとユリアは魂が口から抜けそうな抜け殻のようになっていたが、これも一流の冒険者になるためだ。


 俺は心を鬼にしつつその様子を眺めた。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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