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49 おっさん反省会を開く

 

「たっ、ただいま~」



「おう、おかえ……どうした? 大丈夫か?」


 アンジェの声が聞こえたので玄関に向かうとヨレヨレになった我がパーティーのみんなの姿があった。


 アンジェは腕を怪我しているようで、包帯を巻いていて血がにじんでいる。


 ユリアの足にも同様に包帯が巻かれていた。


「いや~、さすがはBランクのクエスト。危ないところだったぜ」


 ユリアはあっけらかんと言うがそれが空元気なのは俺の目からも明らかだった。


 アンジェとユリアについては、応急処置はされていたようだが一応きちんと傷口を確認した。


 どうやらクエストに持参していたポーションはすべて使い切ってしまったようで、完全には回復しきれなかったようだ。


 俺はパーティーハウスに備蓄されていたポーションを取り出してみんなの怪我を回復させることにした。


 冒険者とはいえ年頃の女の子だ。


 身体に傷が残るということはあってはいけない。





「で、背伸びしてみてどうだった?」


「……うん、ちょっとまだ早かったかな~って」


 アンジェは明るくそう言ったが他のメンバーの表情は固い。


「まあ、Cランクに上がったばかりだとそんなもんだ。じゃあ、今日は反省会といこうか。俺が愚痴を聞いてやるから言ってみな」


 今日のクエストは、オークの森と呼ばれる森のうち、浅いところにあるオークの集落の排除だ。


 事前情報ではそこには10匹前後のオークが住んでいることが確認されていた。


 ただのオークだけでなく、ハイオークなどの進化種も混じっているということでCランクではなくBランク指定されていた案件だ。


 うちのたちが着いたときには他のCランクのパーティーが戦闘を開始していたためみんなは後詰めとして様子見していたそうだ。


 しかしそこに運悪く、今回の討伐クエスト対象外の別のオークの集団が背後から現れて、うちを含めて乱戦になったらしい。


 元々Cランクパーティーでは少し手に余るクエストだったことに加え、敵となる第三勢力が現れたうえに、こちらは不意を突かれたとなれば、防戦一方となるのも当然だ。


 さらに後詰めとなるBランクパーティーが後から加勢してくれて何とか事なきを得たというのが今日の実態だった。


「なるほど、周りへの注意を怠ったことと不測の事態への対処ができなかったという2つが反省点だな」


「そうだね。ボクたちはギルドのクエストのことしか頭に入ってなくて、他のことはちょっと頭になかったんだよね」


 クエストはあくまでもギルドが指定する「やって欲しいこと」だ。


 それ以外の魔物や魔獣が出てこない保障はない。


 自分たちが受けたクエストに周りが合わせてくれるわけはないのだ。


 これが素材採取系のクエストだったら周囲への警戒は当然するんだろうが、討伐系のクエストではその辺りの意識が希薄になってしまうことはよくある話だ。


 俺の元いたクラン(古巣)でも俺が入ったばかりのころはまだまだ経験不足で、そういった失敗話はよく聞いていた。


 というかそれを報告書に書いて出していたのは俺だからな。


 昔に戻ったようで何だか懐かしい話だ。


「ただそれだけじゃないだろう?」


「そうですわね。乱戦模様となって、わたくしは攻撃魔法を使うことが難しくなりましたわ。敵味方入り乱れていましたので、撃つにも撃てませんでした。そのうえ、わたくしにじかに迫ってくる敵の対処で詠唱もままなりませんでしたし……」


 そう、魔法使いの一番の弱点は乱戦だ。


 攻撃魔法を使おうにもフレンドリーファイヤーが怖くて魔法を撃てない、いざ撃てると思っても盾役がいないと敵に間合いを詰められ、詠唱できない。


 特に日頃から魔法使いの火力に頼っているパーティーだとそれは致命的になる。


「で、助けてくれたBランクパーティー、どうだった?」


「うん、1人1人の実力はボクたちとそこまで違うようには思わなかったけど、安定してる、っていうのかな? 地に足がついているというか、パーティーが一つにまとまっているというか、一体感があったというか」


 冒険者ギルドでは個々の冒険者にも一応ランクをつけてはいるが、重視しているのはパーティーのランクである。


 冒険者1人ができることはたかが知れている。


 それこそ、個人でSSランク以上の竜殺しとか呼ばれるような奴だったら話は別だろうが、あくまでもパーティーとして何ができるかが重要とされている。


「じゃあ、今後どうしたらいいかはもうわかってるな?」


 俺の言葉に4人は静かに頷いた。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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