45 おっさん起こされる
「おじさま、朝ですわよ?」
今日は週に1度の安息日。
やけに眠いんだが今何時だろうか。
枕元に置いてある時計を見て俺は絶句した。
「……ルージュ、いつも起きる時間より早いんだが?」
「おじさま、早起きは3ゼニーの得ですわよ」
「3ゼニー払うからもう少し寝させてくれ」
俺は再び布団に潜った。
今日はルージュと一緒に外へ出掛ける約束をしている。
先日ルージュと話をした俺の両親に送る小物を一緒に買いに行くというやつだ。
しかし、いくら今日一緒に出掛けるからってこんなに早く起きなくてもいいだろう。
出掛けるのはお昼前の予定だ。
休みの日くらいはゆっくり寝させて欲しい。
「ならわたくしもご一緒致しますわ」
ルージュがそう言って俺のベッドに入ってきた。
えっ、なにこのプレイ。
あとで枕元にそっと請求書が置かれていた、なんてことはないですよね?
ううっ、若かりし頃行ったお姉さんのいるお店で、頼んでもないサービス(ソフトなもの)をされて帰りに目ん玉飛び出るくらいの請求された黒歴史がありありと……。
そんな思いを抱いている俺をよそにルージュは俺の後ろにぴったりと身体を寄せてきた。
俺が横を向いて寝ているその後ろをルージュも同じ向きでそうしているのだろう。
何でわかるかって?
背中に大変やわらかい何かの感触を感じるんですがそれってアレですよね?
やっぱり後で請求書を渡されるんじゃないだろうか。
しかしよく考えたらそもそも俺はルージュのことを何も知らないな。
第一印象で貴族のお嬢様かと思ったがよく考えたら貴族のお嬢様がこんなところで冒険者なんかやっているわけがない。
ということはお嬢様を装っているってことか。
新手の詐欺のにおいがするな。
「おじさま? どうされましたの?」
ルージュの甘いささやきが俺の耳をくすぐる。
いかん、寝起きということもあって思考がまとまらない。
後で請求書を渡されるのか、それともこのプレイに続きがあるのか。
ああ、もう!
いろんな意味でドキドキしてとてもではないが二度寝できそうもない。
くそうっ、童貞ゆえの防御力の低さが恨めしい。
俺は仕方なく起きることにした。
ふう、起きるまでに随分文字数がいってしまった。
今日はこれからだというのにもう随分疲れてしまったな。
ということで朝の風景は割愛。
あっ!
という間にお昼前。
「おじさま、待ち合わせは中央広場の噴水に致しましょう」
「待ち合わせ? 同じところに住んでいて同じところに行くのにか?」
「んもうっ、おじさまは女心がわかっていらっしゃいませんわねえ」
――ずきゅーん
おっさんに久しぶりの精神的ダメージ!
おっとクリティカル判定です。
おっさんが言われたくないキラーワードベスト3に入る言葉だ。
そうなんだよな。
だから俺って童貞なんだよな。
ああ……今日はもう買い物に行くのなんてやめようかな。
街の外れで悪魔召喚でもするか。
今なら魔王も召喚できる気がする……。
そんなこんなでまだ午前中だというのに大変アンニュイだ。
そんな気分のまま俺は待ち合わせのため一人でパーティーハウスから出掛けるのであった。