表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/81

42 おっさん褒められる

 4000ブックマークありがとうキャンペーンで本日2話目です。


「おじさん、冒険者ギルドから手紙を預かってきたよ」



 休み明けの冒険者活動を終え、アンジェがパーティーハウスに戻ってくると俺にそう言った。


「手紙? 何のだ?」


 冒険者ギルドがアンジェたち冒険者ではなく事務職に過ぎない俺に宛てて手紙を渡すということはあまりない話だ。


 俺は訝しく思いながら手紙を受け取ると直ぐに目を通した。


「おじさん、何だって?」


「ははっ、こういうこともあるんだな!」


 手紙には先日、『華乙女団』が冒険者ギルドに提出した報告書を元に今回の『北の森』の異変に気付くことができたことへの感謝の言葉。

 そして、『華乙女団』が調査隊の一員として大きな成果をあげたことへのお褒めの言葉が書かれていた。


 そしてこれらのことで冒険者ギルドが『華乙女団』を表彰し、褒賞を授与したいとのことで、明日、冒険者ギルドに来て欲しいという内容だった。


 俺はみんなに手紙に書かれていたことを説明した。


「だったら直接あたしたちに言ったら済んだんじゃね? なんでおっさんに手紙を渡すんだ?」


 ユリアの疑問はもっともだ。


 単に『華乙女団』の冒険者たちを表彰し、褒賞を与えるのであれば帰り際に口頭で伝えるか、ついでにできた話だ。


 しかし、この手紙には続きがある。


 今回の『華乙女団』からの報告書については、報告態様から俺が中心となって行ったことは明らかという理由で、一事務職に過ぎない俺にも一緒に来て欲しいというものだった。


 通常、パーティーやクランが冒険者ギルドから褒賞を受ける場合、その対象はあくまでも冒険者のみだ。


 事務職などの補助職は含まれない。


 事務職が多少何かで貢献するようなことがあっても通常それは雇用主であるパーティー、すなわち冒険者たちの功績として扱われる。


 それが今回は、何故だかわからないが、事務職である俺の功績として認めるということで何と俺も表彰と褒賞付与の対象になるということだった。


 長い間冒険者業界にいるがそんな話は聞いたことがない。


「おじさま、頬が緩んでいますわよ」


 おっと、手紙を握りしめたまま思わず何度も読み返してしまった。


 自分では冷静なつもりだが、俺は自分が思っている以上に内心喜んでいるんだろう。


 この日の夕食は、急きょ追加でおかずをもう一品追加した。


 正式なお祝いは日を改めてまたやろう。




 そして翌日。


 俺たちはそろって冒険者ギルドへとやってきた。


 受付にいくとマスタールームに案内すると言われた。


 案内役の女性職員の後を俺たち5人はぞろぞろとついていく。


「ギルドマスターってどんな人かな? ボク会ったことないよ」


「ここのギルドマスターは元Sランク冒険者のウォーレンさんっていってな。現役時代は俺の古巣の先代と双璧と言われてた人なんだ。俺も会うのは久しぶりだな」


 2階にあるマスタールームに案内されると部屋には大きな体躯の中年の男、ギルドマスターのウォーレンさんがいた。


 久しぶりに会ったがその体躯は衰えているようには見えない。


 傍には冒険者ギルドの事務局長であるニックがいる。


「よく来てくれたな。表彰なのに呼び出すのかと思うかもしれないがそこは一つ許してくれ」


 ウォーレンさんがそう声を掛けてきた。


「イエ、コノタビハ、ミニアマルエイヨヲタマワリ、キョウエツシゴクニゾンジマス」


 アンジェが事前に俺が教えておいたセリフを壊れたスピーカーみたいにリピートした。


 すがすがしいまでの棒読みだ。


「はははっ、まあ、楽にしてくれ。冒険者が作法に疎いことなんざ、俺がよく知ってるからな」


「コホン、では、これより冒険者パーティー『荒野に咲く華乙女団」に対する表彰及び褒賞授与を執り行います。リーダーは前へ』


 ニックにそう言われてアンジェは一歩前に進み出た。


「北の森での調査隊としての活躍、大変助かった。その功績を表彰するとともに金一封を授与する」


「あっ、ありがとうございます!」


「次に特別褒賞、冒険者パーティー『荒野に咲く華乙女団』所属。事務職のトミー、前へ」


 ニックにそう言われて俺は一歩前に出た。


「今回の報告のおかげで大事にならずに済んだ。パーティーは冒険者だけで成り立つものじゃねぇ。事務職もパーティーを支える大事な一員だということを知らしめてくれるだろう。受け取ってくれ」


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げて表彰を受け、金一封をいただいた。


 一応正式な行事が終わると軽い雑談の時間となった。


「今回のお話をいただいて大変驚きました。まさか俺、いえ私が表彰される日が来るとは思ってもいませんでした」


「まあ、時代の変化ってやつだな。未だに何で報告書を出さないといけないかがわかっていない連中もいるしな。中には明らかに事実じゃない内容を書いて出す輩もいる。残念だけどな」


「ホントですか? そんなパーティーがあるんですね」


 ギルドマスターの話は耳を疑うような話だった。


 そんなパーティーがあるんだったら是非一度この目で見てみたいものだ。


 和やかなムードのままこの日は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 新作始めました。  是非お試し下さい。  

新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ