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41 そのころの古巣8

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「ギルドポイントが出ない? 討伐報酬も? それどころかギルドポイントの没収!? いったいどういうことだ!」



 冒険者ギルド主導の『北の森』へのレイドが終わり、結果的にはグリーンキャタピラーの群生地における『女王蛾クイーン』一党の討伐・排除は完遂することができた。


 しかし、その過程、内容がマズ過ぎた。


 先頭を切って攻撃参加したダニーパーティーの面々は各種予防薬を事前に飲んでいたにも拘らず、5名のメンバーのうち3名がしびれファレーナのマヒ毒により行動不能に陥り、うち2名が『女王蛾クイーン』の幻覚攻撃により他の3パーティーの足を引っ張る事態となった。


 幸い、マヒ毒で戦闘不能となったのがダニーパーティーのアタッカーであったことからダニーパーティーの面々の凶刃が他のパーティーをおびやかすという事態は免れることができた。


 しかし、補助魔法使いと回復魔法使いが幻覚作用により大混乱。


 敵である魔物にバフや回復魔法を掛けまくり、本来味方であるはずの他のパーティーにはデバフの嵐を浴びせることで戦闘は長期化の様相を呈することとなった。


 他のパーティーの面々はマヒや幻覚を解除するアイテムの使用を試みたがグリーンキャタピラーの数が多く、それらへの対処の必要や幻覚状態に陥った2人からの妨害でアイテムの使用をなかなかすることができなかった。


 本来余裕をもって討伐できるはずが、総力戦となり、かろうじて討伐できたというのが今回のレイドの真相だ。


 今回の戦闘経過はレイドに同行していた冒険者ギルドの職員から正確にギルドに伝えられることになった。


 他のパーティーの面々がダニーパーティーから直接的な身体への被害を受けることはなかったためパーティー間の賠償問題にまで発展することはなかった。


 しかし、他のパーティーにはダニーパーティーに対する強い不満が噴出し、ギルドに対する大きな圧力となった。


 その結果がダニーパーティーへのギルドポイントと報酬の不支給決定であり、『鋼の戦線』に対するギルドポイント没収のペナルティの決定である。


 前者はいわゆる『ノーワーク・ノーペイ』の原則からの判断だ。

 

 そして後者は、Sランククランという本来他のパーティーを引っ張り模範となる立場であるにも拘らず、失態を犯したということによるペナルティの裁定であった。


 







「くそっ、お前らいったい何やってんだっ!」


 ガルムはレイドから戻って来たダニーパーティーをマスタールームに呼びつけ、そう怒鳴り散らした。


 本来であればここで大きくギルドポイント稼ぎ、ケインたちが抜けたことの穴埋めしておきたかったところだ。


 ギルドポイントは増えるどころか減る事態となり正確に計算しないと何とも言えないところではあるが、Sランククランの認定基準を下回る可能性があった。


「しかし、ボス。あっしたちはボスからいただいた……」


「うるせえ、言い訳は聞きたくねぇー。お前らはしばらく謹慎だっ! しっかり反省しとけっ!」


 ガルムはイライラをぶつけるとダニーたちをマスタールームから追い払った。







「ちっ、いったい誰のせいだと思ってやがるんだっ」


 ダニーはマスタールームを出ていくと、舌打ちをしてそう悪態をついた。


 ダニーは今回の失敗が、有効期限の切れた予防薬を持たされたせいだと自分自身気付いている。


 ダニーがこのクランに入ってからクランから支給される消費アイテムで有効期限を気にすることはこれまでにまったくといっていいほどなかった。


 当然のように期限も品質も問題がないアイテムが『誰か』の手によって事前に用意されていたからである。


 そのため、他のパーティーであれば当然自分たちで事前にチェックするべきことが長い慣れによって疎かになってしまっていた。




「くそっ、やってられっか! どうせしばらくは休みだ。酒場にでも行くか」


 ダニーは今回のレイドに行く前にヴィクトールの報告書もガルムの指示どおり、適当に作って既にギルドに提出している。


 しばらく絶対にしなければいけないこともない。


 この日から連日、酒場では憂さをはらそうと浴びるように酒を飲むダニーの姿が目撃されるのであった。

 

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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