30 おっさん出迎える
昨日は深酒もしなかったし特に二日酔いになることなく目覚めた。
誰もいないパーティーハウスは静かだ。
以前はクランが借り上げていた住居で長い間独り暮らしをしていた。
一人でいることには慣れていたはずなんだがここ最近みんなと一緒に暮らしていたからだろうか。
一人でいることがやけに寂しく感じる。
俺は簡単に朝食済ませると、今日の仕事に取り掛かった。
そうだ、そろそろ備品のチェックをしておかないとな。
消費系のアイテムは種類によっては時間の経過とともに劣化し、使い物にならなくなる。
代表的なものはポーションだろう。
冒険者にとって一番なじみのあるアイテムだが時間が経つことで劣化し、効果が薄くなったり、最後には効果がなくなったりする。
効果がなくなったポーションはただの野草汁だ。
このポーション。
一律に劣化するまでの時間が決まってくれていれば管理する側は大変楽なのだがいかんせんそういうわけにはいかない。
市販のポーションは錬金術師が作るものがメインだが錬金術師の力量によって品質だけでなく有効期限も変わってくる。
高いポーションだと瓶に有効期限が書いてあるが安いものだと何も書いていないものもある。
そのため管理が大変だ。
ポーションはまだ有効期限が長い部類なのでいいのだが、中には有効期限が短いものもある。
予めマヒや幻覚を防ぐ予防薬や状態異常から回復する薬なんかはそっちの部類だ。
いわゆる状態異常に対応するアイテムはいつそういう攻撃をしてくる魔物と遭遇してもいいように常時携帯しておくことが望ましいとされている。
ただ、ポーションと違って、使わないときは使わないことが続くので、うっかり有効期限切れのものを携帯し続けるということがよくある。
そういえば、うちのパーティーのみんなに持たせているのもそろそろ期限が切れるころだから更新しておかないといけないな。
今度買うアイテムのリストに追加しておこう。
昼休みの時間には昨日聞き取ったケインの話を元にしてケインから頼まれた報告書を仕上げた。
明日の昼以降に取りに来ると言っていたので早くできたに越したことはないだろう。
昼休みが終わると今日は夕方近くまで仕事をしてきりがいいところで切り上げた。
今回『華乙女団』が受けた依頼は初のギルドからの依頼だ。
それも他の冒険者、しかも先輩で格上のパーティーと合同での活動は初めてという話だ。
あまり人怖じするタイプの娘たちではないが、流石に疲れて帰ってくるだろう。
その慰労の意味を込めて夕食はちょっと豪勢なものにしよう。
赤飯、だとちょっと違う意味にとられるかもしれないので無難に固まり肉のいいところを使った料理にすることにした。
俺が台所で夕食作りを始めてもう少しで完成という頃、玄関の方がにわかに騒がしくなった。
「おじさん、ただいま~」
アンジェの大きい声が台所にまで聞こえてきた。
俺は鍋に掛けていた火を止めて玄関へと向かった
「おかえり、みんな無事だったか?」
俺はこうしてうちの娘たちを出迎えた。
みんなの様子を確認したが特に大きな怪我をした様子はない。
俺はほっと胸を撫でおろした。