26 おっさん見送る
ブックマーク・評価をいただきました皆様ありがとうございました。
あれから直ぐに『華乙女団』は調査隊に参加することを回答した。
冒険者ギルドに調査隊参加の意思を示した2日後。
俺は朝早くからみんなに持たせるお弁当を作っていた。
今日は早朝にこの街の北門の馬車ターミナルに集合してそこから他のパーティーと一緒に馬車で北の森に向かうという手はずになっている。
みんな揃ってしっかりと朝ごはんを食べるといよいよパーティーハウスを出ないといけない時間になった。
「よし、忘れ物はないな?」
出発前、みんなの装備を確認して俺は言った。
「おっさん、もう何度目だよ。確認しすぎだっつーの」
失礼な、たったの5回じゃないか。
だいたい確認することにし過ぎるということはない。
ヒューマンエラーは常に起こり得るものだ。
自分としては完璧に確認したつもりでも思い込みで気付かないことも多い。
例えば、魔道コンピューターのキーボードを打つのに『ステータス』と打つべきところを『スタータス』と打つことだってあるかもしれない。
確認はできれば他の人にやってもらうことが望ましいだろう。
みんなにはまずは各自でチェックをしてもらったうえで俺が確認するというのがいいだろう。
今回の調査は森のすぐ外に宿営地を設置して今日と明日の2日がかりで調査をするということだ。
簡易テントや寝具などは冒険者ギルドが用意してくれるということだがそれ以外の物、例えば食事については自前だ。
お昼ご飯に俺が作ったお弁当とそれ以降に食べる携帯食も持たせたしこれで安心だ。
「じゃあ、行ってきま~す」
「行って参りますわ」
みんながそう言って出掛けていくのを俺は見送った。
さて、こうなってくると俺は暇に、はならない。
こうして空いた時間で日頃はできていないパーティーハウスの共用部分の掃除をしておこう。
特に台所は油汚れが気になってたんだよな。
大掃除は1日や2日ではとてもではないが終わらない。
できるときにできることをやっておこう。
あとは布団を干したりシーツを洗ったりということもできるな。
一応みんなの部屋に入る許可はもらっているので、みんなの分もやっておくとしよう。
まあ、事務職本来の仕事ではないかもしれないがみんなが外で頑張っているんだから、やっぱり俺も何かしておかないとな。
そう思って午前中に活動してお昼にはみんなに作ったお弁当と同じものを俺も食べた。
――ドンドン
昼食後に一服して、『さあ、午後もやるか』と思った矢先、荒々しく玄関のドアを叩く音がした。
誰だろうか?
物盗りが玄関を叩くことはないだろうし……。
俺が訝しく思いながら玄関を開けると、そこにはなじみの顔があった。
「あれっ、ケインじゃないか。久しぶりだな。うちに何か用か?」
俺たちのパーティーハウスにやってきたのは、俺の古巣であるSランククラン『鋼の戦線』でパーティーのリーダーをしているケインだった。
俺が古巣にいたとき、勿論ケインとは何度も顔を合わせているし、一緒に飯を食った回数は数えきれない。
しかし、プライベートで付き合うほどの関係ではなかった。
だから俺は冒険者パーティーつながりで俺ではなく『華乙女団』自体に用があると思ったわけだ。
「いや、俺はお前に用があってきたんだ。ちょっと外で話ができないか?」
俺は不思議に思いながらもケインの言葉に頷きで返した。
本作は第1話の投稿開始から1週間になります(注:10/10(土)現在)。
本作は投稿開始直後にたまたま本作を見つけていただいた読者の皆様のご支援をいただき、運よくジャンル別の日間ランキングに載せていただきました。
その結果からかその後多くの方の目にとまることができたようで、こうして皆様に読んでいただく機会を得ることができました。
この『小説家になろう』には本当に多くの小説が投稿され、今、このとき、この瞬間も新たに小説が投稿され続けています。
そんな多くの小説の中から読んでいただけるということは本当に奇跡のようなことであり、作者冥利に尽きます。
最初期に本作を見つけていただきご支援いただきました皆様、そして今こうして読んでいただきました皆様、本当にありがとうございました。
作者にとって読んでいただくこと自体が大変なご褒美です。
よろしければ今後も読んでいただけると嬉しいです。
【謝辞】
16話(おっさん覚醒の話)について誤字のご指摘をいただきました方ありがとうございました。
本作での大事なシーンでしたので大変助かりました。
本話はそれを反映させてみましたがいかがだったでしょうか?