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23 おっさん打診される

 次の日の朝。


 俺は報告書を持って朝一番で冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルドも開いたばかりでクエストの貼り出し前の時間だからだろう。


 ロビーには人がまばらだ。


 俺は受付カウンターにいた馴染みの受付嬢に声を掛けた。


「カレンちゃん、ニックさんいる?」


「チーフですか? ええ、いますけど……ひょっとして特報とくほうですか?」



 ――特報



 いつも出している報告書のみで行う報告を正式には通常報告という。


 冒険者ギルドではそれに加えて2つの報告様式が規定されている。


 1つ目は緊急報告。


 通称『緊報きんぽう』だ。


 これはいわずもがなのんびり報告書を書いてられないレベルの急ぎの報告だ。

 基本的には口頭での報告になる。


 そして今回俺がする『特報』。


 ご想像のとおりこれは特別報告の略だ。


 これは緊急報告ほど差し迫ってはいないがかといって通常報告では時機に遅れる可能性がある場合に行う。

 報告書を朝一番に出したからといってそれを直ぐに責任者に読んでもらえるとは限らないからだ。

 他にも書面上では伝えにくい内容を口頭で補足しながら報告した方がいいケースにも使われる。


「ちょっと待って下さい。すぐに呼んできますので」


 カレンちゃんはそう言ってバックヤードに姿を隠した。







「なるほど、確かにそれは気になりますね」


 5分後。


 俺はギルドにある別室に案内され中年の男性とテーブルを挟んで向かい合って椅子に腰掛けていた。


 この人はニックさんといって冒険者ギルドの事務局長さんだ。


 年齢は30代後半で俺よりちょっと年上だ。


 職員のみなさんからはチーフと呼ばれている。


「それで参考までにギルドとして今後どうしたらいいか。あなたにお考えがあればお聞かせていただけませんか?」


「私の、ですか? そうですね……。私であればまずは調査隊を出しますね。森の奥で何かが起こっている可能性があります。隊の構成は機動性重視ですね。あの森の奥の奥にはまだわかっていないこともあるでしょうから、何かあったときは即離脱できる者が適任でしょう」


「なるほど、順当ですね」


「話は以上でしょうか?」


「ええ、仕事の話はそうですね」


「では、私はこれで……「まあ、待てよ!」


 再び声を掛けられて俺は中途半端な態勢でニックさん、いやニックに振り返った。


 さっきまでは能面のように表情を顔に出さなかったニックがニヤニヤと笑みを浮かべている。


「おい、トミー。聞いたところ新しいパーティーに再就職したらしいな。しかもお前以外はみんな女の子でしかも美少女のパーティーらしいじゃないか? いったいどうなってんだよ」


「ニック、お前態度変わり過ぎだろう」


「うるせーよ、仕事はさっき終わった。今は休憩時間でプライベートだ」


「なんだよそれっ」


「いいだろ。こっちも今の立場になって毎日真面目にやるのは疲れるんだよっ」


 俺が苦笑しながらそう返すとニックも笑顔でそう言いかえしてきた。




 俺とニックの付き合いは長い。


 初めてニックと出会ったのは確かこいつがギルドで買い取りの窓口担当だったときだ。


 俺は魔石や素材を持ち込む方で何度「状態が悪い」とか言われて買い叩かれたことか。


 まあ、時には俺がゴリ押ししてニックが後で上司に怒られたとか言ってたこともあったな。


 狭い業界だから長くやっていれば顔なじみにもなる。


 俺の方が年下だがお互いタメ口で言いたいことを言い合えるだけの関係にはある。


「こっちは忙しいんだっ! 用がないなら帰るぞ」


「ああ、待て待て。だったら真面目な話だ。お前んとこの美少女パーティー、確かCランクになったんだよな。なら今回の件、ひとつやってみる気はあるか?」


「……詳しい話を聞こうか」


 思いがけない提案に俺は上げかけていた腰を再び下ろした。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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