20 おっさん油断する
ブックマーク・評価をしていただきました皆様ありがとうございました。
皆様のおかげで本作を多くの方に見てもらうことができました。
「……?」
俺が声を掛けるとサーシャが俺の方を振り向いた。
「奇遇だな。サーシャは昼ご飯か?」
俺の言葉にサーシャはコクコクと2度頷いた。
そして間髪入れずに紙袋から串焼きを1本手にとって口に頬張った。
いや、何で今食べた?
まあ、それはサーシャだから仕方ないか。
俺はそう自分に言い聞かせるとサーシャと一緒に近くにあったベンチに腰掛けた。
「サーシャは今日1人……だよな?」
アンジェたちも今日は買い物に行くと言っていたがみんなで一緒ではないようだ。
まあ、仲のいい4人だと思うが趣味はそれぞれバラバラみたいだし今日は別行動なのだろう。
サーシャは俺の質問に頷きながら紙袋からまた1本串焼きを取り出してかぶりついた。
うん、きみはマイペースでいいね。
普通だったら俺みたいなおっさんはサーシャみたいなすごい美人さんと一緒にいれば気後れするところだろうけど中身はこんな娘だからな。
なんというか力が抜けてちょうどいいんだよな。
俺がじ~っとサーシャを見ているとサーシャは右手に持っていた串焼きを食べるのをぴたりと止めた。
なんだ?
俺が疑問に思っているとサーシャが紙袋から左手で1本串焼きを取り出すと俺の目の前に突き出した。
「くれるのか?」
「(こくこく)」
まあ、くれるというのであれば遠慮なくもらおう。
俺はサーシャに礼を言って串焼きを手に取った。
どうやらサーシャは俺が串焼きを欲しがっていると思ったようだ。
そんなに物欲しそうな顔をしてただろうか?
たしかに、もう昼時で俺もちょうど昼飯を買って帰ろうと思っていたところだ。
お腹が空いていたというのも事実だ。
俺はありがたくサーシャにもらった串焼きを頬張った。
うん、こってりとした甘辛いタレは食欲をそそられるな。
なかなかいい味をしている。
さすがサーシャが大量買いするだけはある。
こう見えてサーシャはグルメっ娘だからな。
俺たちは無言で串焼きを食べた。
俺は1本で結構腹にたまったんだがサーシャは結局10本以上は食べたようだ。
というかもう途中から数えるは止めた。
まあ、レディーの食事をじ~っと見続けるのは紳士としてあまりよろしくないからな。
ふとサーシャの顔を見ると口の周りに串焼きのタレだろう。
濃厚な茶色がべったりとついていた。
「まったくしょうがないな……。サーシャ、口の周りにタレがついてるぞ」
俺はそう声を掛けてからポケットからハンカチを取り出すとサーシャの口周りを拭いてやった。
ハンカチを持ち歩くのは紳士の嗜みだからな(キリッ)。
この娘にはもう少し自分が美少女だということを自覚してもらいたいものだ。
若い女の子に事前の確認や許しもなく普通はこんなことできないけどサーシャだしな。
思わず自然に身体が動いてしまった。
サーシャも口をもぐもぐさせているだけで別に嫌がっている様子はないしやっぱり問題ないようだ。
しかし、こうしていると小さい子どもの世話をしている父親の気分だ。
嫁さんはいないし、そもそも童貞だから子どもも生まれようがないけどな。
でも普通だったら俺ももう子どもがいてもおかしくない歳だ。
……。
うっ、再び破壊衝動が……。
ひっひっふ~、ひっひっふ~。
よし、収まった。
俺がサーシャの口周りを拭いているとサーシャの色白の顔に少し赤みが差しているように見えたが今日は天気がいいからだろう。
日が高くなってちょっと汗ばむ陽気になってきたもんな。
「よしっ、じゃあ口直しに甘い物でも食べにいくか。串焼きの御礼に俺が出すよ」
「!!!!!」
おっ、何かサーシャの目が大きく見開かれたぞ。
エルフっ娘覚醒か?
冗談はさておき、俺とサーシャは食べ終えたあとの串をゴミ捨て場に捨てると甘味処を目指した。
そういえば俺はあんまりそういう店に詳しくないんだがサーシャが迷いなく俺を引っ張っていくから目的地はもう決まっているんだろう。
そこまで高級店じゃなければ懐的にも問題ないはずだ。
まあ、サーシャもあれだけ串焼きを食べてたわけだしデザートをそんなにバカ食いすることはしないだろう。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
みんな知っているか?
女の子はデザートって別腹らしいぜ。
ここは20話目です。
一気読みの方はお疲れだと思います。
ここらで一旦ご休憩されてはいかがでしょうか?
ブックマーク(栞)を挟んでご休憩下さい。