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19 おっさん不審者扱いされる

 俺は教会で御礼のお祈りを終えると街の中心部へと向かった。


 今日は休日ということもあり街は人出が多く活気が溢れている。


 平日には出ていない露天商の姿もあった。


 街ゆくひとたちを眺めていると我が世の春を謳歌する若者のグループに初々しいカップル、小さな子どもを連れた夫婦の姿が目についた。


 それを眺めるおっさん(童貞)。


 なんか無性にこの世界を滅ぼしたくなってきた。


 実は俺の前世は魔王で真の力が目覚めたりしないだろうか。


 休日の街は独り身のおっさんにはきつい。


 これはさっさとパーティーハウスに戻るのが吉だろう。


 俺はそう思って露天商で昼ご飯を買って帰ろうとよさげな食べ物を売ってそうな店を見て回ることにした。


「んっ?」


 とある露天商の前にできた列に見知った顔を見つけた。

 長い耳に透き通るような白い肌。

 金色のサラサラとした長い髪の毛。


 どうやらうちのサーシャのようだ。


 エルフはこの街でも時々見掛けることもあるがだからといってそこまで数が多いわけではない。


 元々エルフ全体の数は少ないみたいで、エルフの森を出て生活する者はさらに少ないらしい。


 ただ、昔と違って最近は外に出たがる若いエルフも多いとかでエルフのお偉いさんたちの頭痛の種になっているという話を聞いたことがある。




 俺はサーシャが何を買おうとしているのか近くで観察することにした。


 どうやら露天は食べ物を売っている店でそこから漂う匂いから肉をタレに付け込んだものを焼いて売る串焼屋みたいだ。

 眺めているとすぐに列が捌けてサーシャが注文する番になったようだ。


「……串焼き20本」


「え゛!?」


 サーシャの注文内容を聞いて俺の口から思わず変な声が出た。


 20? 


 今20本って言ったよね?


 サーシャの前に並んでいた人が手に持って近くで食べているが串焼きは1本でもそれなりのボリュームがある。

 俺ならいいところ5本も食べたらおなかいっぱいだろう。

 驚く俺をしり目にサーシャは代金を支払って串焼きが入った紙袋を受け取った。


 うわ~、すごい満面の笑み。


 持ち前の美人さもあって輝いて見える。


 今その手に持っているのが串焼きでなければとてもいい絵になっただろう。


 サーシャって日頃は無口で無表情だがご飯を食べるときは表情が豊かなのはこれまでの生活から何となくわかってはいた。


 というかサーシャって最初の自己紹介のとき以外、ご飯絡みじゃないとしゃべってないんじゃないか?


 俺がサーシャをしげしげと観察しながらいろいろ考察していると周囲から何やら視線を感じた。


 俺は冒険者ではないがそんな俺でも感じる刺さるような視線だ。


 何だろうかと思って視線のぬしを見ると俺よりも一回り年配のご婦人たちが俺を見て何やらヒソヒソと囁き合っている。


 ひょっとしたら俺って不審者って思われてる?


 ははっ、まっさか~。


 ははっ、はははは……。


 俺は自分のことは自分で客観的に見ることができるんです!


 そう、あなたたち(誰?)とは違うんです!


【客観視ON】


 俺の視線の先にいるのはサーシャ。


 ――若くて超美人なエルフの女の子。


 俺。


 ――30過ぎの脂ぎったおっさん(童貞)。


【客観視OFF】


 ヤバい。


 もう犯罪のにおいしかしない!


 これはまさか『衛兵さん、こいつです!』って奴か。


 まずいっ、まずいぞっ! 


 このままでは貴重な休みが『ちょっとそこの詰め所まで来てもらおうか』で終わってしまう!


 俺は心を落ち着けるとひとつ大きく息を吸い込んだ。


「お~い、サーシャ~。奇遇だな~」


 俺は知り合いであることをことさらアピールするため、わざとらしい大きな声でサーシャにそう声を掛けた。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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