17 おっさんのギフト
ブックマーク・評価をたくさんいただきましたので御礼に前倒しで投稿させていただきます。
ありがとうございました。
次の日、俺たちはパーティーメンバー全員で話をすることにした。
テーマは俺の『ギフト』についてだ。
ギフトは自分の最大の武器である。
自分のギフトを隠しておくという者もそれなりにいるが通常パーティーのメンバー同士には教え合うのが一般的だ。
チームとしてお互いの得手不得手を把握するのは連携において重要なことの1つだ。
その場合でも本当の奥の手についてはパーティーの仲間にであっても秘密にするということもあるがそれは程度の問題だろう。
「昨夜は騒いですまなかったな。アンジェとルージュには話したが俺のアーティファクトのレベルが上がったんだ」
「へ~、それはおめでとう。で、そもそもおっさんのギフトって何なんだ? アーティファクトの方みたいだけど」
ギフトにはスキルとアーティファクトの2種類がある。
数としては圧倒的にスキルをもらう者の方が多く、アーティファクトをもらう方はどちらかといえばレアだ。
しかし、どちらにしても結局はそれが使い物になるかどうかが一番重要なことだ。
俺は、俺のアーティファクトが『マジックペン』であること。
13歳で授かってこの方、レベル1のままだったことを話した。
「おじさんが事務職なのはそのアーティファクトだったからなんだね~」
アンジェがふむふむと頷いた。
「派生スキルはかなり上がっていますわね。『達筆』にあと『速記』もあるみたいですし、事務職をされるのであればかなり有用ですわよ」
まあ、いまや魔道コンピューターにその有用性も奪われつつあるのだが、それをここで言わなくてもいいだろう。
「それでおっさんのアーティファクトはレベルが上がってどうなったんだ?」
昨日ルージュに尋ねられて保留にしていたことをユリアにも聞かれた。
まあ、当然だよな。
俺は、昨日確認した新しい能力について話して聞かせた。
「へ~、じゃあ、壊れた物を修理できるんだね」
「じゃあさじゃあさ、この割れたコップとかも修理できる?」
ユリアはそう言って、台所の端に置かれていた割れたコップを持ってきた。
何かに当たったのか真ん中あたりで大きく2つに割れている。
「よし、じゃあ試しにやってみよう」
俺はマジックペンを右手に顕現させた。
何もなかった俺の右手の中にマジックペンが突如として現れた。
みんなはそれを目の当たりにし、アンジェたちからは「お~」という声が上がる。
アーティファクトはこの瞬間が一番かっこいいんだよな。
まあ、俺のはペンだからそこまで格好がつかないんだけど。
これが『聖剣』とかだったらな~、と思ったことは正直何度もある。
俺はマジックペンに修理をするという意識をもつとキャップの色が白色に変わった。
そしてキャップの蓋を外して手に持ち、割れたコップと破片とを仮組して破損部分にペン先を押し当てた。
感覚とすれば、ボンドで割れた2つをくっつけるようなイメージだ。
マジックペンのペン先からはキラキラとした粒子が視える。
それが2つの隙間を埋めていきだんだんと光は収まった。
すると、さっきまで2つの割れていたコップとその欠片が一つの完全な形になってそこにあった。
(よしっ、上手くいった!)
俺は心の中でガッツポーズを作った。
おっさんが人前で実際にやるには年齢的にちょっと恥ずかしい。
「おおっ、ホントに直ったよ。これお気に入りだったんだよね~、おっさんありがと!」
ユリアにも喜んでもらえて俺もうれしい。
ちなみに俺の方も他のパーティーメンバーのギフトも教えてもらった。
みんなスキルをもらっていて、アンジェは『剣術』、ユリアは『悪意察知』、ルージュは『氷魔法』、サーシャは『速射』とのことだった。