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11 そのころの古巣2

 ※ 第三者視点です

「くそったれ、ようやくできたぜ」


 Sランククラン『鋼の戦線』が誇る4つのパーティーのうちの1つ『チームヴィクトール』のリーダーであるヴィクトールは魔道コンピューターの前でそう言った。


 報告書ひとつを作るのに既に半日。


 この日はパーティーの休日であったことから時間を掛けて何とか完成させることができた。


 ヴィクトールは報告書を手に持って意気揚々(いきようよう)と冒険者ギルドへとやって来た。




「ダメですね。やり直して下さい」


 ギルドの受付嬢のカレンは冷ややかにそう言った。


 手塩にかけて作った報告書をものの数秒で突き返されてヴィクトールは一瞬茫然とした。


「なっ、何でだっ。いい加減なことを言うなっ!」


「いい加減なのはどっちですか! 『魔物どもをやっつけた』って一体何の魔物かわからないじゃないですか! それに内容のほとんどがあなたたちの感想ばっかりで子どもの夏休みの日記の方がよっぽどマシですよ」


「ぐぬ~」


「はい、後がつかえてますからどいて下さい。次の方どうぞー」





 こうしたやり取りを経てヴィクトールは怒りを抱きながらクランハウスに戻ってきた。


 そして戻って来るなりヴィクトールはマスタールームへと駆け込んだ。


「おいっ、何が簡単な作業だっ! いつまで経っても報告書が終わらねーじゃねーか」


 突然怒鳴り込んできたヴィクトールにガルムは目を丸くする。


「おいおい、あんな誰でもできることを大げさな。よっぽどやり方がまずかったんじゃねーのか?」


「うるせー、そもそもトミーの奴はいったいどこいったんだよっ! これはそもそもあいつの仕事だろうが!」


「あいつは自分から出て行ったんだ。いなくなった奴のこと何か今さら言うなよ」


 ガルムはクランの他のメンバーたちにはトミーは自分からクランを辞めて出て行ったと話していた。


「そんなに簡単だって言うならお前がやれよ。俺はもうしらねーからなっ!」


 ヴィクトールはそう吐き捨てるとマスタールームから出て行った。




「ちっ、うるせーやつだぜ」


 ガルムはヴィクトールが出て行った扉を忌々しげに見つめる。


 ヴィクトールと入れ違いで腹心のダニーがやってきた。


「ヴィクトールの旦那、荒れてましたね。どうかしたんすか?」


「報告書ができないんだとよ。まあ、あの脳筋じゃ仕方ねーか。ダニー、お前が代わりに作ってやれ」


「えっ、俺がっすか?」


「誰にでもできる簡単なことなんだろ? お前が俺のところのを作るついでにヴィクトールのパーティーのも作ってやってくれ」


「ええ、ボスがそういうならまあ、仕方ありませんが……」


 ダニーはしぶしぶといった表情でそれを受け入れた。


 しかし、それが安請負やすうけおいだったと知るのはこの後すぐであった。

 ブックマーク・評価をいただきました皆様ありがとうございました。


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 引き続きよろしくお願い致します。


 

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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