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1 おっさん追放される 

はじめましての方も、前作から引き続きの方もよろしくお願いします。

 

「おっさん、おっさん! これ見ろよ!」



 この街周辺の冒険者の情報を扱う新聞『週刊冒険者タイムズ』の号外を手にしてひとりの女の子が俺の部屋に飛び込んできた。


 彼女は俺が事務をしている冒険者パーティーのメンバーの一人でユリアという名前のだ。


 記事には『とあるSランククラン』が3ランクもの降格処分となり、その結果Cランククランになったと書かれていた。



「……何をやったらクランランクがいきなり3ランクも降格になるんだ?」



 長年冒険者業界にいる俺としてもそんな話は聞いたことがない。


 不祥事の場合は通常1ランク降格、よほどのことでも2ランク降格となるかどうかだ。


 それが3ランクも降格となればもはや前代未聞の珍事である。


「え~と、無許可でダンジョン探索をし、他のパーティーへの攻略妨害、それから……」


「それだけで3ランクも降格になるのか? ちょっと見せてくれよ」


 俺はそう言ってユリアから号外を受け取ると、詳細にまで目をとおした。





「は~」


 俺は大きくため息をつくと部屋の端に置かれているベッドにどかっと腰を下ろした。


 あまりにもあまりな内容に頭痛がした。


「おいおい、おっさん、どうしたんだよ。もっと喜べよ、ここはおっさんを追い出したところなんだろう?」


「いや、まあ、な。ただこのクランは元々俺の恩人に当たる人が作ったクランなんだ。後釜がアホだっただけで、ちょっと複雑なんだよ。まあ、俺としては追い出されたおかげでこうしてユリアたちと一緒にいられるわけだし、今にして思えば逆に感謝してるくらいだよ」


「か~、おっさん、人が良すぎだろ。まあ、そんなおっさんだからあたしたちは……」


 目の前でユリアが急にモジモジし始めた。


 トイレにでも行きたいんだろうか?


 ああ、たしかに今思い返せば、すべてはあの日が始まりだったな~。




 〇   ○   ○




「おい、おっさん。お前はクビだ! とっとと出ていってもらおうか」


 俺がクランハウスで事務仕事をしていると俺を雇っているクランのトップ、つまるところクランマスターのガルムから突如そう宣告された。


 ちなみにクランハウスとはクランの拠点であり、クランメンバーの集会場となったり、俺のような事務職が事務作業をする建物だ。


「はあっ? おい、ガルム。お前いったい何言ってんだ?」


 ガルムは年下とはいえ俺の雇い主。


 このクランのトップだ。


 ガルムは最近クランマスターに就任したばかりとはいえ、それ以降、俺はクランマスターであるガルムのことを「マスター」と呼ぶようにし、それなりの口調で話している。


 しかし、流石に突然意味不明なことを言われて、思わず以前の感覚で返してしまった。


「うるせぇ、俺たちが外で汗水垂らして身体張ってんのにお前はここでのんびりしやがって」


「俺は事務職としてやるべき仕事をやっているだけだ。少なくとも誰にも迷惑を掛けてはいないはずだ」


 自慢ではないが俺が働いているこのクランはSランクのクランだ。


 この街周辺では最高峰のクランと言っていい。


 そんなクランを裏方として支えているのが俺のひそかな自慢でもあった。


 少なくとも、事務方としてそれなりにこのクランには貢献してきたつもりだ。


 ガルムは以前から何かと俺に対する当たりが強く、好かれていないことはわかっていた。


 しかし、まさかいきなりこんなことを言われるとまでは思ってもいなかった。


「おっさんの取柄とりえはその『マジックペン』とかいうアーティファクトだけだろ? それで書類を書いてるよな。だがもうこのご時世、手書きの書類は流行はやらないんだよ。今や魔道コンピューターの時代だ。うちもこれを導入して書類は全てこれですることにしたからな」


 ガルムはニヤニヤしながら部屋の隅に置いてある大きな箱を指差した。


 どうやらさっきガルムがこの部屋に運び込んでいたのは魔道コンピューターと呼ばれる魔道具らしい。


 最近、魔道技術の進歩でコンピューターなるものが出始めているということは噂では聞いていた。


 俺たちの仕事や生活にまで関わってくるのはまだまだ先の話と思っていたんだが、新しい物が好きなガルムは世間に先だってこれに飛びついたようだ。


 いや、俺への嫌がらせがそれ以上の理由かもしれないけどな。


「つまりは、手書きでしか事務書類を作れない俺は事務職として、もうクランには必要ない、そういうことか?」


「おっさんにしては理解が早いじゃねーか。その役立たずのアーティファクトが何かに使えればいいんだが、結局ただのペンでしかないわけだろ? これまでは何とか使ってやれたがどちらにしてもお前はもう用無しだ」


 これまでに俺のアーティファクトをバカにされたのは1度や2度じゃない。


 ただ、だからといって俺にはとてもではないが言い返すことができない。


 残念ながらどう贔屓目ひいきめに見ても俺のアーティファクトは『はずれ』だからだ。


「さあ、とっとと出て行け! 早速魔道コンピューターをセッティングしないといけないからな。その席を早く空けてくれよ!」


 ガルムは早口でそう俺をまくし立てた。


 腕力では事務職の俺が現役冒険者であるガルムにかなうわけがない。


 そんなこんなで、あれよあれよと言う間にやりかけの仕事もそのままに俺はクランハウスを追い出された。

 読んでいただきありがとうございます。


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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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