4.遠のく意識の中
「...グッ!?」
突き刺すような痛みが彼の体に伝ったと同時に、刺された場所に温もりを感じる。
「...」
凶器を佑の体に押し込みながらも男はなお笑っているように見える。
遠のいてゆく意識の中、必死になんとか生きようとあがく。
だがあがけばあがくほど、痛みは増し意識もさらに遠のいてゆく。
「だ、だめか...」
気づけば、自分のことを刺した男はいなくなっていた。
力を無くした体は横に倒れる。
「...」
声はもうでなくなっていたが必死に頭を働かせる。
なんで、なぜ突然自分は殺されたのか。
確かに社会から見ればいらない存在、だがわざわざ殺す必要はないはずだ。
そう理由を考えては否定しを繰り返しているうちに、目の前が暗くなる。
「これは...走馬灯...?」
人は死ぬときに走馬灯を見るとよく聞いていた。
「ってことは...流石にダメだったか...」
華やかだった学生時代の思い出がよみがえる。
その思い出の中にはもちろん、あの出来事の思い出もある。
「...」
気分が落ち込み、表情も落ち込んでいる気分になる。
いろいろな記憶が流れていく中、ちょっと前のあの出来事も流れてきた。
「さっきは衝動的にあんなこと言ったけど、今思えばちょっと恥ずかしいな。」
そう思っていると、記憶の流れが止まった。
「...これこの後どうなるんだろう...」
これから起こる出来事に不安を覚えつつも体は動かない。
すると、遠くの方に何かが見える。
「...?」
あれは一体なんだろうと思っていると徐々に近づいてきている気がする。
ようやく見えるようになるくらいまで近づいてきたが、ただ白い光のようなものであった。
「...お.....な.....い」
光の方から声らしき音が聞こえてくる。
「...い....げん...」
「なんて言ってるんだ?」
光がどんどんと近づいていることに気づく。
「...お..なさ...い」
それに合わせて声も近づいてくる。
「眩しいな...」
もうすぐそこまで来たところで、体が光に飲み込まれ始めた。
「...!?」
体が飲み込まれ切ったかと思うと、体に力が戻った気がした。
まさか生き返ったのか?そう思っていると。
「いい加減、起きなさい!」
そう聞きなれない声が頭に響いた。