プロローグ
プロローグということでほぼ説明回です。ご了承ください。
「どうだった?愛ちゃん。」
火照る体、荒い吐息をさせながら、その声のするほうへ顔を向ける。
「大丈夫...?ちょっとやりすぎちゃったかな?」
ボーとする頭でその言葉に対し、返答する。
「やりすぎだって?ふふ。」
そういって彼女は笑いながら立ち上がった。
「もうかわいいんだから。ほら、手を貸すから立ってごらん?」
彼女の言う通り、差し出された手を握り立とうとしたその時。
何かが落ちるような音とともに元の意識が戻ってくる。
「...ハァ」
つけていたヘッドホンを外し、重い頭を上げて机の上に置かれた時計の時刻を見ると午後3時だった。
「...なんか食べとくか。」
彼は東郷佑、2017年4月。中学校を卒業し、偏差値が平均的な高校に入学した彼は、見た目は多少根暗ではあったが社交的な性格であったため同性の友達も多く、
運動部に所属しており運動も勉強も人並みほどにできた。
異性の友達も少なくはなく、彼女もできたことがあり、どちらかといえば人気者の部類であった。
そう彼はどこにでもいるような、普通の男子高校生。
だった。
2018年3月彼は高校を留年してしまう、理由は欠席多数。
ある日彼は、恋愛、部活、友情、勉学などの高校生活において付き物であることで、
一気に失敗してしまったことをきっかけに、不登校になってしまった。
そして、今の絶望人生。いわゆるニートになってしまった彼は、
心理学を利用した、催眠音声を聞くことで心の穴を埋めていた。
その結果いろいろな音声を聞いていた彼が、たどり着いたのは。
TS催眠音声だった。
TSとは(transsexual)の略で性転換という意味である。
つまり彼は催眠で性転換の疑似体験を行うことで、新しい人生を体験していた。
そのようなことを繰り返しているうちに。
「女の子になりてぇ...」
と本気で思うようになっていた。