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6話 「石碑」



 「……という訳なんだが、それでもSクラスクエストに行くという気持ちになれるか?」


 男の声が震えている。

 ヘラクレスはとてつもない奴だということがよく分かる。


 「しかし、このギルドの奴はほとんどSクラスクエストに行っちまってるじゃねぇか」

 「……確かにそうだな。俺は知らされてないが、報酬でも良いんじゃないか?」


 報酬……ヘラクレスへの恐怖を退けさせるほど。

 どんな物なのか気になるな。


 「受付やってても知らないのか?」


 俺は受付の女に向かって言った。


 「小耳に挟んだ話なのですが、どうやら【神器】が絡んで――」


 『「「「……揃ったか」」」』


 な、頭の中にッ!?


 「誰だッ!!」


 答えない。

 念話だろうか。

 いや、違う。

 一方的だ。そんな感じがする。


 他の二人も驚いたような表情をしている。

 聞こえているのだろうか。


 『「「「時間が無い……行くぞ」」」』


 行く?

 何処に?


 そう思った瞬間――俺は視界が真っ暗になった。





 「……ん……」


 何処だ?

 ここは。

 

 目に最初に入ったのは、緑色。

 そして、耳には草が風で揺らされるサァっといった音。


 俺は体を持ち上げた。


 草原だ。

 見渡す限りずっと膝ぐらいの草原が続いている。

 曇り空であまり美しい景色とは言えない。


 「や、やばくないか、これ」


 見ず知らずの土地。

 人もいない。

 こちらの世界に転生してきた時はあのおっさんがいたからまだ安心できた。

 だが今はどうだ。

 謎の声が聞こえたと同時に、誰もいない場所に転移させられた。

 誰だって不安になる。


 「だ、誰かいないか!!」


 俺は歩き出した。

 返事が返ってこない。

 次第に駆け足になる。


 「そ、そういえば魔力探知が使えたはず……」


 俺は魔力探知を使い、辺りを見渡した。


 「あっ!!」


 さっきの二人だ。

 どちらも仰向けになって倒れている。


 「おい!! 起きろ!!」


 二人はガバッと起き上がり、周りを見渡す。


 「……あれ、ここは……どこだ?」

 「……知らないですね」


 二人共来たことがない場所らしい。


 「さっきの声は一体……お、お前っ後ろッ!!」


 俺は反射的に後ろを向いた。


 「な、なんだこれ……」


 五角形の石碑だ。

 高さは5メートルほど。

 横も1メートル以上あり、かなりデカい。

 全く気づかなかった。

 二人を探し回っていたせいだろう。


 「せ、【石碑】だ」


 こ、これが、【石碑】?

 異なる色をした紋章が五角形それぞれの面に描かれている。

 いや、一面何もないただの石壁だ。

 ここに……『煌龍』の紋章があったのだろうか。


 「五大龍天聖が世界各地に作った石碑だ。

 ……なんで俺達はこんな所に飛ばされたんだ」


 そうだ、さっきの声。

 あれは誰だろう。

 石碑が近くにあるし、五大龍天聖の内の一人か?


 「あっ、思い出しました!! この場所」


 受付の女がおどおどした声で話し出す。


 「昔……来た覚えがあります。ギルドのある村の外れだったような」

 「……ほう」

 「この近くの、『静寂の森』に調査か何かで来た覚えが――」

 「せ、静寂の森って!!」


 男が恐怖の表情をして遮る。


 「今回のSクラスクエストの……最初の探索地じゃねぇか」

 「……!!」

 「く、来るぞ……()()()()が!!」

 「アイツら?」

 「……俺のギルドのメンバーだ」


 同じギルドなら問題は無いと思うのだが、何かマズいことでもあるのだろうか。


 「あ、頭のおかしい化け物しかいねぇんだよ。全員……クソ強えぇ。ここにいたら……死ぬ」

 「なんで殺されるようなことになるんだ?」

 「アイツらは……ライバルを殺してでも一番になろうする奴ばかりだ。

 俺がこんな所にいたら、同じSクラスクエストを受けに来たと勘違いされちまう!!」


 男は大量の汗を流し震え始めた。

 受付の女も不安そうな表情になっている。

 確かにアルバートさんから変わり者が多いと聞いたような気がするな。


 「あ、あの「声」の奴……なんてことをしてくれるんだ……早くどこかに隠れねぇと!!」


 ここは草原。

 逃げようと思っても即見つかる。

 しかし『静寂の森』の中であれば身を隠せる筈だ。


 「き、来た。他のギルドの奴らもいやがる」


 男は草原の向こうの遠くを凝視している。


 俺も目を凝らす。


 「あっ」


 ……何百人もの人間が走ってくるのが見えた。


 速い。

 様々な鎧を着込んだ冒険者たちが、先程まで線だったのに波のようになっている。


 「……逃げるぞ。『静寂の森』へ。受付の人、案内してくれ」

 「は、はい。あと、私の名前は受付の人ではなくリリアですよ。この男はノクシャス」

 「俺の名は……ラルグだ」


 まさか、こんなことでSクラスクエストに行くことになるとは、あの「声」の主には感謝をしておかないとな。


 


 

 

【作者からのお願い】

この小説を読んで「面白い!!」「続きを読みたい!!」等思われた方はブクマ、感想、下の広告の下にある【☆☆☆☆☆】でポイントを入れて頂けるととても嬉しいです!!

どうか宜しくお願いします。

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