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4話 「Sクラスクエスト」


 周りには沢山の町人が輪をなして囲んでいる。

 そんな中で切り掛かってくる。

 物凄いスピードだ。

 元の世界でこのレベルの速さで走れる人間は見た事がない。『剣技』の一つなのだろうか。


 直ぐに使えるスキル……『炎球』を使うか?

 いや、こちらが攻撃していては悪い印象を受けてしまう。俺はギルドを覗きに来ただけなのだ。

 だから――避けるッ!!


 俺は振りかぶってきた剣を横に紙一重で避けた。

 空の鎧だから避ける必要はないが、魔物ではなく人間だと思わせるためだ。

 もし切った断面がもぬけの空だったら、恐怖して二度とこの鎧を使って町には入れなくなってしまうだろう。


 「何ッ、俺の剣を!?」


 次の一手。

 相手は振り下ろした剣を右から左へ振り上げる。

 ……またもや紙一重で避けることができた。


 「クソッ、なんで当たらねぇんだ!!」


 次は……横に斬り込んでいる。

 何故か、相手の次の手が分かる。

 俺は剣について全く分からない。だが、まるで剣について熟知しているかのような感覚だ。


 「『速度上昇』!!」


 な。

 『剣技』ってそんなこともできるのか。

 マズい。

 今度は当たる。避けられない。

 鎧の首が……落とされる。


 「「「キンッッ」」」


 ……防いだ?

 鎧の性能が良かったのか?

 いや、違う。

 鎧には剣が当たっていない。


 ……剣だ。

 俺の手に、真っ黒の剣がいつの間にか握られている。色からして龍装の一部だろうか。

 斬られるという状況から、剣を無意識のうちにイメージしたということか。


 「く、空中から剣を……」


 俺はすかさず、驚いて静止した隙を突いて相手の足を払った。

 たちまち姿勢を崩し、尻餅をつく。


 「お、お前……何者だ?」

 「……」


 答える事ができないのが少し残念だ。

 こちらの世界にもホワイトボードの類があればいいんだが。


 俺は身振り手振りで危険な者ではないと伝えようとした。


 「ひ、ひぃ!! ま、魔術かっ!!」


 ……逃げてしまった。

 これじゃあただの悪者になってしまうな……


 「あんたの剣技、素晴らしいな。ワシと同じ動きじゃった」


 あ。

 さっき血を吸った老人だ。


 「あんたが人を殺すつもりは無いのは分かっている」

 「ちょ、アルバートさん!!」


 町人たちが止めに入るのにも関わらず、老人は俺に近づいてくる。

 怖がっている様子もない。

 ……いや、そんな風に見せかけていきなり斬り掛かってくるかもしれないな。


 「ワシの名はアルバート。あんたはこのギルドに何しにきたのだ? ……あぁ、喋れないのか」


 ……賭けに出てみるか。


 俺はギルドを指差し、何かを書くような動作をした。

 ギルドの加入は大体紙に書くのが基本だろう。

 違ったら、即敵認定だ。


 「……ギルドに入りたいのか。ならワシについてきてくれ」


 良かったぁ〜

 この老人、明らかに強い。

 『剣技・絶』を習得しているのだ。

 戦ったら、絶対に負けてしまう。


 「ただ……」


 え?

 ただ?

 まさか、手合わせとか?

 い、嫌なんだけど……


 「少々変わり者が多いぞ。それでもいいのか?」


 なんだ。

 変なこと心配する必要無かったな。

 それに、このアルバートさんはどうやらこのギルドに関係があるようだ。

 いざとなったらこの人に頼ろう。


 俺は頷く。


 「そうか」


 蚊で血を吸う為に飛び回っていた時、建物の中には入らなかった。

 ……ギルドの冒険者。

 色々新たな能力を得られるかもしれないな。


 俺たちは扉を開け、中に続く廊下を歩いた。

 突き当たりに受付らしき場所がある。


 「この紙に必要事項書いて、受付の人に渡せば登録は済む」


 な、なんか意外と簡単だな。


 「それじゃあ、ワシは帰るから」


 え。


 「ワシはただの放浪人よ。ここのギルドメンバーどころか町人でもない。ここらで有名なだけだ」


 なんだって……

 全く関係ないのかよ。

 そんないきなり言われても困るんだが……


 老人は俺に背を向け行ってしまった。


 取り敢えずこの紙に適当に書いて……っと。

 ……名前か。それっぽく「ラルグ」だな。


 そういえばこの世界の人は日本語を話したり書いたりしている。

 俺の元いた世界とパラレルワールドのような関係なのだろうか。


 「あのぉーギルド加入希望者さんですか?」


 !!

 第一ギルドメンバー発見。

 おっとり系の女性だ。

 早速血を吸っておこう。


 《スキル『念話』『召喚魔法』を取得しました》


 お、念話か。

 喋れない俺にとってはかなり有難い。

 それに召喚魔法。

 中々強そうな響きだ。

 ……というか、受付をやってる割にとんでもないスキルを持っているんだな。


 「はい」


 俺は『念話』で答え、紙を差し出した。


 「ラルグさんですね……それではこちらへどうぞ」


 受付の女性は横にある大きな扉を開けた。

 その中を覗き込む。


 「誰も……いない?」


 机と椅子が並べられてある。

 ただそれだけ。

 シーンとしている。


 「あ、皆さんは【Sクラスクエスト】に行ってしまわれたんでした……」


 Sクラスクエスト?

 少し……興味があるな。

 

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