2人の距離(彼と私)
斉藤朱夏さんの「くつひも」を聴いて、湧いてきた物語の導入です。彼女視点です。
彼、佐伯司は一言で表すと夜だ。
穏やかな表情に、優しい笑顔。
本を読むことや料理が大好きで、運動が苦手な男の子。
彼との関係は、幼稚園児の頃からだ。
家に引きこもっていた彼を引っ張り出し、気の向くままに街へ連れ出していた。
あの頃は、なんて強引だったんだろうと思う。
父親が単身赴任で、家事に忙しい母親の迷惑になりたくなくて、いつも外で遊んでいた私の大切な相棒。
私に手を引っ張られながら、それでも仕方ないなぁといった表情でついて来てくれた事が、私は嬉しかったのだと思う。
本を沢山読んでいて、私の知らないことを何でも知っている。
勉強が苦手な私の為に、よく宿題やテスト勉強を手伝ってくれていた優しい彼。
小さい頃、いつまでも靴紐が結べない私に、根気よく教えてくれた彼。
料理が得意で、食べさせてくれた料理はどれも美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまう。
最近はお菓子作りにハマっていると言って、よく作ったお菓子を持って来てくれる。
穏やかで、側にあるとホッと安心できる彼の事が、私は大好きだ。
私たちは苗字が近いから、学校での席はいつも彼が後ろで私が前。
幼馴染で、よく一緒には居るけど、彼氏や彼女の関係ではない。
近くて、遠い2人の距離。
彼を抱きしめられるまで、あと、1メートル。




