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令嬢の計画

 

『という訳で、わたくしはイアン王子を(たぶら)かすあの女を何とかしようと家宝の魔導書を読んだのですわ』


 少女ロザリーはさる貴族の令嬢であり、なんだかたくさんいる貴族のライバル達を出し抜いて、ようやく王子との婚約まで漕ぎ着けそうなところを、ぽっと出の宿屋の娘がポイントを荒稼ぎしているとの事。


「なるほど。大変ですね」


 段々と筋力も回復してきたので、もう一度プランクトレーニングを――


『ちょ、ちょっと待って! 貴方、本当に話を聞いていましたの?』

「すみません」


 確かに話をしている時に伏せて筋トレをするのは失礼かもしれない。相手は礼節を重んじる貴族なのだ。無礼即切腹なんて話は日本にも昔からあるのだから、この屋敷では特に注意すべきである。


 ライガーは背筋を正し、その場で正座になった。


『あら。やれば出来るじゃないの。それで話の続きなのだけれど――』


 ちなみに正座の状態でも筋トレは可能である。

 可能というより、正座そのものが内太ももを鍛える姿勢なのだ。

 この内太ももというのは、自転車にでも乗らない限り普段の生活で鍛えられる事は殆ど無い。普段から使われない筋肉ならばそれでいいのだろうと多くの人は考えるかもしれないが、実際はそういった部位を鍛える事による恩恵は絶大である。

 まず内太ももを鍛える事によってO脚が改善される。身体を支える場所が増えて安定する為だ。指に例えるならば小指を鍛えるようなものである。小指をメインにした指の使い道は殆ど無いが、どの指を使う時においても小指は補助的に動き、負荷を軽減する役目を果たす。

 つまりは内太ももを鍛える事で疲労し難い身体になるのだ。


『――という算段ですわ。貴方を呼んだのは願掛けのようなものだったのだけれど……裏目に出ない事を祈りますわ……』

「はい。わかりました」


 慣れないうちに正座をすると体重のバランスを崩しやすく、それによって足の血行が悪くなり痺れを生んでしまう。

 上手な正座というのは体重を接地している足の全体へ分散する座り方である。足は接地面を広げる為にぴったりとつま先まで意識する。それこそ一枚の板(プランク)のようにである。この時、足先同士を重ねないように注意をする。そして左右のかかとを離し過ぎずに尻を乗せるのだ。体重は終始、接地している足全体へ均一に行き渡るようにバランスに気をつけていなければならない。慣れればなんという事はないのだが、正座の経験が少ないこの身体ではそれを強く意識をする必要があるのだ。



 しばらくして、部屋の扉がノックされた。


「お嬢様。ロザリーお嬢様。お出かけのお時間が近づいています」


 ライガーはロザリーに言われるままメイドを部屋に通し、鏡台の前に立った。


『そのままメイドに着替えを手伝ってもらって……あ、貴方って性別はどうなっているのかしら……悪魔にはそういうのはないのかしら……まあ気にしても仕方ないですわ。そう、コルセットを着るときは大きく息を吐いて……』


 ライガーの背中へメイドが足の裏を押し当て、まるで亀を縛るがごとく、ぐいぐいとコルセットの紐を引き締めている。

 この時、ライガーはロザリーの命令を一つ無視して、息を大きく吸い込んで腹を膨らませた。

 結果、締められた後のコルセットと腹の間には僅かばかりの隙間が生まれる。

 身体を強引に引き締めるこの器具は筋肉の成長を阻害するものなのだ。いかに身体の持ち主の命令であれ、明らかに身体へ悪影響を与えるこの行為を見過ごす事は出来なかった。メイドは少し不服そうであったが、特に何かを口に出して言うことはなかった。


 一通り着替えが終わり、豪華なドレスに身を包んだライガーはメイド達と共に屋敷を出た。


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