2.小次郎、パツ金の鎧天女と出会う
2話目です。
はて、死してからどれくらい経っただろうか、目を開けるとそこには麗しい金の髪をした天女がおった。
(なんとも美しいものだ。)
「それは、ありがとうございます。」
なんと、私の心の内を読んだではないか!よくよく見てみれば、着物の代わりに鋼の甲冑を着て、羽衣の代わりに羽が背から生えておる。
「物の怪の類か、お主。」
少し警戒してみるとその御仁は
「いえいえ、私は神の御使いである戦天使ヴァルキュリアと申します。」
「ゔぁるきゅりあ?」
随分と言いにくい名前だ。
「心が読めるのは天使としての能力です。
後、言いにくいは余計です。」
見た目では分からぬが口調からして怒っているようだ。
「それは済まない、悪気はないのだ。してこの老いぼれの亡骸に何用か、天女殿。」
「天使です、佐々木小次郎。んっんん今回貴方に会ったのは剣士として死んだ貴方をヴァルファラに送り届けるためです。」
「何故、私をそこに送り届ける?」
「佐々木小次郎、貴方は現世において決闘で剣士として最後に死にました。私の役目はそのような剣士たちの魂をヴァルファラに送り届けることです。」
「そうか…」
ふと、何かを悩み神妙な顔つきで話しを切り出した。
「あ奴も来るのか、そこに。」
「あ奴とは…ああ、宮本武蔵のことですね、ええ彼もまた死ねば、迎えに行きます。」
「…」
急に黙ってしまったので、どうしたものかと考えていると
「ふむ、であれば私がそこへ行く道理は無い。」
「何故ですか?貴方は剣士の腕としてはそれなりのはず。」
「何故かと問われれば、私の業だ。」
「業ですか。」
「ああ、私はあの時確かに負けたのだ、
そのようなものがあ奴と同じ場に立つのは私の信念が許さぬのだ。すまぬな、我儘を言って…」
天使は考える素ぶりをし、何か決心したかと思うと
「いえ、構いません。貴方にも貴方の心がある。それを貫くのはとても誇り高いことです…しばらく空けますので待っていてください。」
そう言うと天使は消えるように姿がなくなった。そして一人虚空で愚痴る。
「そんな大層なものではないのだが。」