小さすぎる学園長
「準備はいいユージ?」
「あぁ、いいぜ。」
「じゃあ、開けるわね。」
そう言ってリリスは学園長室のドアを開けた。すると、少女が手を組んで椅子に座っていた。
「なぁ、リリス・・・。」
「何よ?」
「お前、部屋間違えてないか?学園長がいるどころか、女の子がいるぜ?」
「ば、バカ!あの方が学園長よ!」
「えぇ!?あの子がか!?」
どう見ても、金髪ロり少女にしか見えないんだが・・・。
「ふふふ。面白い人ですね。」
すると、学園長らしいその少女が小さく笑い出した。
「す、すいません。あんまり幼いと感じたのでつい。」
「わ、私からも謝ります!」
「いいですよ。実際、幼いんですから。」
「あの、失礼ですけど年は?」
「12ですよ。」
「ホントに学園長ですか!?」
こんなに幼い子が学園長なんて・・・。まさか2人して俺にドッキリを!?そんなことを考えていると学園長が口を割り出した。
「自己紹介が遅れましたね。私はマヤです。先ほども言いましたが、このリベル学園の学園長を務めています。」
「あ、俺は・・・、自分は里見祐二です。」
俺と言おうとしたら横のリリスにつねられてしまった。地味に痛い。
「ふむ、ユージさんですか。どうぞ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ?私まだ12歳ですし。」
「ん?そうか?なら、遠慮なく。」
「学園長!?」
そんなやり取りをみていたリリスが驚く。
「いいんですよ、リリスさん。実際私も年が上の人から敬語を使われるのは苦手なんですよ・・・」
さっきまではとても12歳と思えないような態度だったのに急に12歳らしい態度に戻ったことにユージは、驚いた。
どれだけ、取り繕っても中身はまだ子供なんだな。きっと立場的に身についてしまったのだろう。
「んじゃ、マヤ!話を戻すが俺の処遇のことだったよな?」
「そうですそうです!忘れていました。まず、ユージさんの召喚された経緯等を聞いてもいいですか?それをしらないとなんとも言えませんので。」
「分かった。いいぜ。」
「なるほど、異世界からですか。」
話終えて、マヤは何か考えるようにうなずく。
「あぁ、だからここがどこで何をするところなのかもいまいちよく分かってないんだ。」
「そうですか、ならまずそこから説明しなければいけませんね。」
そう言って、立ち上がりお茶の準備をしだす。
「これはリリスさんたちやユージさんのあった体験からしてわかると思いますが、ここは魔道士の学園です。」
「あぁ、それはリリスから聞いてる。」
「では、話が早いです。ここは魔道士の才能をもった者が大陸全土から集められ、魔道を学び、極めるための場所です。そして、ユージさんが昨日召喚されてしまったのは使い魔召喚の儀という二年生に進級した際に行われるものです。」
「ふむ、じゃあリリスの言う通り俺は使い魔なんだな?」
「はい、ゲートから出てきたのなら使い魔で間違いありません。」
「ちょっとユージ!信じてなかったの!?」
リリスは俺がまだ使い魔だと信じていなかったことにご立腹なようだ。
「いや、一応確認だよ。そんなに怒るな。」
「お、怒ってないわよ!」
図星をつかれたのが効いたらしくリリスは黙りこんでしまう。
「で、使い魔のことなんだけど、使い魔ってそもそも何なんだ?」
「えーとですね。使い魔は主のサポート役みたいなものです。戦いの時に主をかばったり、主が魔法を使う時間を稼いだりが主な役割です。ですから、使い魔には主を守護するために主にあった様々な特性がついたりします。」
「なるほど、大方予想通りか・・・。ちなみに特性というのはどうしたらわかるんだ?」
そこだけが、妙に気になり聞いてみた。
「分かりません。特性についてはよく分かっていないので基本的に演習や戦いの中で知っていく感じになります。」
「そうか、わかった。最後に一ついいか?」
途端に空気が張り詰める。
「俺が帰る方法はないのか?」
2人とも黙りこくってしまう。しばらくしてマヤは口を開きだした。
「それこそ誰にも分りません。」
「なっ!」
流石に衝撃を隠せなかった。帰れないという現実を受け止めることはまだ祐二は幼すぎたのだ。しかし、マヤはまだ言葉を紡いだ。
「しかし、ゼロではありません。」
「どういうことだ?」
「魔道は奇跡の塊です。異世界から召喚することが出来たのです。なら恐らくその逆も可能です。ですが、その方法は誰にも分りません。ですから、もし、ユージさんが魔道を極めることが出来ればもしかしたら・・・」
「なるほど、そういうことか。なら、俺はなるぜ魔道士。」
「っ!?ユージ、あんた本気で言ってるの?」
「あぁ、俺は本気だ。」
「学園長!いいんですか!?ユージに魔道の才能があるかも分からないのに!」
よほど、俺が魔道士になることが衝撃だったのだろう、横で聞いていて耳を塞ぎたくなるほどの声だ。いや、実際に塞いでたんだけどね。
「そうですね、それじゃあユージさんに試験を受けてもらいます。」
そう言って、マヤは立ち上がり机の中から何かを取り出した。
「試験?そのガラス玉でやるのか?」
「ええ、簡単なものです。これに手をかざして魔力を込めるだけです。」
「俺は魔力の込め方なんてわからないいぜ?」
「大丈夫です。手に意識を集中させるだけでいいですから。」
そう言ってマヤは俺の前に玉を突き出してくる。
「そういうことなら。」
言われた通りユージは玉に手をかざし目を瞑り、意識を手に集中させだす。すると玉が光だす。周りの2人は少し驚いた顔をしている。だが祐二は何故か確信があった。
まだ、いける。俺はまだ自分にこだわることが出来る。
もっとだもっと集中しろ、この程度じゃあの頃には及ばないぞ!
パリンッ!
その途端だ、ガラス玉が破裂したのだ。文字通り木端微塵に。
「ゆ、ユージさん?」
「ユージあんた・・・」
マヤの顔が驚愕の顔をしていた。リリスに限っては腰が砕けて地面に座り込んでいた
「あ、悪いマヤ!集中しすぎた!怪我はないか?」
「あ、それは大丈夫なんですけど・・・。今のは?」
「ん?なんか知らないがまだいけると思って手に力を入れたらつい。」
「ついで、試練の宝玉をですか・・・。これはもう疑いようがないですね。ユージさん、あなたには魔道の才能があります。しかも、通常では考えられないほどの。」
「そうなのか?自分では実感ないんだが。」
「えぇ、才能に関しては問題ありません。」
「そうか、マヤがそういうならそうなんだろう。」
「でも、ユージさん凄いですね!初めてであんなに沢山の魔力をこめることができるなんて!」
少し、興奮気味でマヤが言ってくる。こっちのマヤは見た目通りのマヤだった。
「んー、なんていうか初めての気がしなかったんだよ。昔からやってるようなそんな感じすらしたよ。」
「それは、変ですね。聞いた話ではユージさんの世界では魔法がなかったのでは?」
「そのはずなんだが・・・。まぁ結果オーライだな。」
「では、今日からユージさんも晴れてここの生徒になるわけですが、部屋は一応用意しますね。ユージさんは使い魔なので、リリスさんのところに住んでもいいのですが、まぁ、そこは話し合ってください。」
「わかった。そうするよマヤ。」
「了解しました学園長。」
「では、私からの話は以上です。2人とも今日から新学期です。勉学に励んでくださいね。ユージさんの制服に関しては近日中に用意します。」
「マヤ、ありがとな。」
俺が感謝を伝えると顔を赤くし
「いえいえ、これも仕事ですから。」
っと言ってきたので頭を撫でてやったら余計に顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ、私たちはこれで失礼します。」
そういって、俺たちは学園長室を後にした。