第四話
では、続きです。
パーティー編はそろそろ終了。
次回はまたも畑の町娘へと戻り、多少は手紙を交換しあうような感じでしょうかねぇ。はっはっは
ずんちゃっちゃ
ずんちゃっちゃ
と重みのある演奏がこの部屋全体に響き渡る。やっぱり生の演奏って心に響くというか何と言うか、イヤホンやヘッドホンでは味わえない、五感全てで感じられるようなものがある。うん、言葉に出来ないってこと!そんなパーティー会場のなか、俺っちは王子とダンスをしている。何をいきなりと想うかもしれないが、事実だ。俺っちたちを囲うようにして他のダンスのペアが数組、そしてそれを見学する数十名、数百名もの方々が周りでこちらを見ていた。
ちらりと他のペアを見ると、数組は普通にダンスをしていて、とても手馴れているようだ。それ以外の組は何やら楽しそう。その奥に立っていられる貴族の方々の表情を見ると、やっぱり誰アレ?状態だった。
もうどうにでもな~れ☆と俺は思考を投げ出して王子とのダンスを受け付けたが、意外とこれが、中々どうして難しいが面白い。
「へぇ、段々慣れてきたね。すごいよ」
「いえ、まだまだ不安なところがありますが……王子様のサポートのお陰です」
そう言って微笑む俺っち。その後内心、はっ、しまった普通に王子と仲良くしてる!と気づくのだが……や、意外と面白いんだもん。一応元の世界では動けるデブだったもんで、ダンスの授業ではアクロバティックな行動をして、若干クラスメイトたちに引かれた位だっ!
「でも、上達速度が早いよ。羨ましいくらいだ」
「ふふっ、そんなに褒めても何も出ませんよ?」
っは、また普通に楽しんでる。しかも王子になんか言っちゃった。というか、本当にこの体は上達スピードが凄くいい。じいちゃんの畑を手伝えるし、運動も結構出来る。デブっててできなかったアクロバティックなこともできたし、冗談抜きで俺っちは上達スピードが早い。
まぁ、それもラッキーと思うだけでとりあえず新鮮な野菜を育てて食いたいと思う毎日だった。が、まさかここで開花するとは……。
「ほっと……こうかな?」
「そうそう、上手だよ」
そして、俺っちはある程度の区切りがつくまでダンスを続けたのだった。熱中しすぎちゃったぜ、てへぺろっ!
☆
さて、気づく人はいるかな?本当に問題になるのはこの後のことなのだ。さっき俺っちが堂々とエントリーした際に嫌な顔というか変な顔をしていた連中が、コロッと顔色を変えてこちらに来るのだ。おそらく王子と手をとったことが原因だろうなぁ。
とりあえず作り笑顔で対処しながら握手とかに答える。一応、この人たちのことは覚えておいたほうがいいな。何かに利用できるかもしれないし。
とか、頭のいい主人公が考えそうなことを、心の中で格好つけて呟いていると、私と同い年くらいの女の子が現れた。セミロングでもみあげはクルクルしていらっしゃる、本当にマンガとかで出てきそうなお嬢様だった。いやいや、現実でその髪型はちょっと難しいんじゃ。時間かけてセットとかしてるのかなぁ。
「あら、御機嫌よう。貴女はどこの誰かしら?」
「どうも、私は南の方の街に住む、エミリーといいます。よろしくおねがいしますわ」
「ふふっ、ここは王族主催のパーティーよ? 一般的に貴族である私達が招かれるパーティーなのよ? 間違えて入られたのかしら?」
うげ、なんてとこにここの王子は呼んできやがったんだ。さすがに馬鹿すぎやしないか?
そう思ったが、でも一応王子だし、何かしらの考えがあって俺っちをこんなところに招いたんだろう。と考え直す。だがまぁ、頭におそらくとかきっととかがつくけど……。
「いえ? しっかりと王子様に招待されて参りましたの。無断ではないのでご安心を」
「あら、そうなの? ……にしてもまぁ、ザンフター様ととても楽しそうに踊ってらしたようですわね?」
「あらあらふふふ、ダンスは楽しかったですわ。と、ごめんなさい、そろそろお祖父様の元へと向かわないといけないわ」
「……では、お元気で」
「そちらこそ、お元気で」
……いや、なんでお元気でですか。おそらくもう合うことはないでしょうという意味合いが込められていると思われるが……てか、思いっきり嫉妬してたよね?分かりやすいくらい挑発ってかなんてぇか、その、ねぇ?
その場をスーッと逃げるようにして俺っちはじいちゃんの元へと向かった。いやぁ、じいちゃんも握手やら何やらしていらっしゃる。忙しそうだしその場にいる程度にしておこう。
そうしてまたむーしゃむーしゃ食事を開始していると、隣に誰かが現れた。
「お、お嬢様……」
「あ、レイチェル! 良かったぁ、疲れたわぁ」
「ですよね……」
見ていただけだったが、私の苦労が伝わったようだ。分かってくれるか、レイチェルたん。もうさ、アニメ鑑賞してのほほんと生活していたい。本気で元の世界でのことを思い出してほろりしそうになったんだからねっ!
「ふぅ、こういう場はなれないわ」
「あ、ばあちゃん。貴族様が多くて辛いねぇ」
「まぁ、こういう時こそ、女の見せ所よ? ふふふ」
「凄いよ、ばあちゃん……」
なお、おじいちゃんは苦戦している模様。色んな方とはははと笑っているその姿は、まるで営業マンのようだ。
「ふぅ……いやぁ、こういう場は慣れんのぉ」
「おつかれさま、じいちゃん」
「おぉ?戻ってきてたのかぃ。ほっほ、これしきまだ余裕じゃ」
明らかにそれは嘘である。疲労感が顔に出てるし、冷や汗まで出てる。漫画みたいなじいちゃんだなぁ、とふっと笑う。
「そういえば、王子様の側室になるって本当なの?」
「ぶっ!? え、なんで知ってるの? 早くない?」
「いえね、王様がこちらに来られて、あなたを息子の側室又は嫁候補に迎えると言ったのよ。そして、約束通り私達の身の安全も保証するって」
「あー……」
あちゃー、本当に言ってた通りの事をするのか。ていうか、ダンスをしたということを了承ととらえたのか。おそらくそうなるとは思いつつ、お誘いに乗ったが……むぅん。
ばあちゃんは心配そうな顔をしてこう聞く。
「ねぇ、約束って何? あなたはそれで大丈夫なの? それで良いの?」
「え、ええっと、ばあちゃん……」
……
心配そうでなく、心配をしてくれている。何かそれが、本当に娘とか孫娘としてしっかりと見てくれてるような気がして。何か、嬉しい。
ばあちゃんに限らず、じいちゃんは複雑な顔をしていた。心配半分、祝福半分見たいな。それもおそらく、俺っちのことを想って。
「……約束は、ちょっと違うけど、私がお嫁さん候補になる代わりにばあちゃん達の安全の保証とか、私への安全の保証とかを取り付けたことなの。それに、ばあちゃんたちが困ったときは、内密で王様達が助けてくれるようにも頼めたの」
「なっ!」
「そう……」
「で、私は大丈夫だし、これで良いよ。あくまでお嫁さん候補だから、何とかなる!」
「わしたちのためにとは、思わなくてもいいからな?」
「大丈夫だよじいちゃん。私の将来のためさ」
俺っちがそう言うと、むぅわかったとじいちゃんは引き下がった。よしよし、何も大丈夫と言える根拠はないが大丈夫。俺っちの将来はお嫁さんをもってキャッキャウフフする事だが、致し方なし。
そう話していると、後ろから人が近寄る気配を感じる。振り返ると、王子がこちらに近寄ってきているのだと理解した。
そして、俺っちたちの居る場所に気づいた王子は、ふっと微笑んでこちらに真っ直ぐ来た。
「やぁ、すまない、父さんが取引をして……そして、それに答えてくれてありがとう」
「えっと、勘違いしないでね? 付き合ったり、結婚したりする前に、お友達から始めて相手のことを見極めるのか大切なのだから」
「あぁ、うん、わかってるよ。その、これから、よろしく」
王子は頬をかいて苦笑した。おれっちはとりあえず微笑んでおく。どことなく寂しそうな顔をしている王子に少し罪悪感を感じた俺っちはとりあえず握手をすることにした。
王子は手を差し出された事に微笑みながら握手を返してくれたのだった。
「手紙……出すから、読んでいてほしいな」
「……わ、分かったわ」
子犬のようにこちらを見るので、仕方なくそう答えた。パーティーはそろそろ、終了を迎える頃合いである。……多少は楽しめた、かな?
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