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第二話

展開、マキで?

 数日後のこと。すっかりじーちゃんの畑は有名となった。といっても、一部の町の人々に、であるが……。野菜のこと以外では、じーちゃんが例の勲章を貰った事についてかな?

 あれ、意外にも有名な勲章だったようで、町の方へ行くと拍手を貰ったらしい。なぜ勲章のことが明るみに出たのかというと、じーちゃんがつけたまま急いで仕事に出かけていて、気づかないうちに広まっていたということらしい。

 広まったのは勲章のことだけだったお陰で、私の方は何も噂されず、なんとか普通の生活を過ごしている。

 そして今日も、同じように畑仕事に勤しんでいた。その時だった。


「た、大変ですよぉ!とっつぁん!」


 街に店を構える郵便屋、エイジが、赤い装飾を付けた馬を走らせてこちらに向かってきた。彼が赤い馬に乗るときは、元の世界で言う速達を渡すとき専用である。じーちゃんは畑の仕事を中断し、エイジの方へと駆け寄った。


「どうした?何かあったのか?」

「こ、ここここ、これ、おお王宮からの便です!」

「な、何だと!?」


 声が大きいからこっちまで丸聞こえだよ……。田舎だったから良かったけれど、これが街中だったら大惨事だったぜ?

 それよりも、王宮からの手紙だ。嫌な予感しかしないのだけれども?


「しかもこれ、たぶん、招待状っすよぉ!」

「ま、まさか!?」


 お爺さんは一歩後ずさりをした。私も、手に持っていた西瓜を地面へと落とし、見事に割ってしまった。この世界、季節感とかないから何故西瓜があるとかは気にするな。ただ、落として割ったことに対しても気にしなかった俺っちは、相当驚いていたのだろう。

 いや、だって、急に頭ン中真っ白になって、分けわかんなくなったんだもん。記憶が曖昧になってた。




 さて、意識を取り戻した俺っちは、まず今の状況に驚き、「へ……?」と間抜けな声が出た。

 このまま描写がなければ伝わらんし、状況の説明もなければどうなっているのか分からないだろうから、というか自分自身、今どうなっているのか分からないから、曖昧な記憶をたどってまとめて落ち着こうと思う。


 まず、あの後俺っち達は作業を中断して家に戻った。

 次に、手紙を読んだんだった。そして、よーく見ると宛先が俺であり、内容は家族三人をパーティへ招待するという事。最後には、開催日が明日であるということが記載されていて、随分急じゃないか!と怒りを持ったような……つっても、田舎だったから、手紙が届くのだって遅いしなぁ。仕方ないか。

 ……えっと……で、次に、王宮での開催であるため、良い服を用意して……そして、ぐっすり眠ってから朝が来て……王宮の用意した馬車に乗った……という感じかな?


 ……よし、だいぶ落ち着いて状況の確認はできたな。


「何が良しなんだ!?」

「ど、どうかしたのかい?」

「あ、いや、何でもないよばーちゃん」


 1人、ツッコミをしつつ落ち着きを取り戻す。Be Cool。そう、今は熱くなる時じゃない。

 ばっと自分自身を見つめ、精神的体制を整えよう。


「……え!?何このドレスは!?」

「どうしたの?昨日私とエミリーで選んだものよ?」

「……あ、えと、ははは、ソウダッタネバーチャン」


 基本を黒に、 スカート部分が少し灰色、赤色の華があしらわれたお洒落なドレスを身につけてる。動きやすいこのドレスは、どちらかと言うと激しい踊りをする際に使われるドレスらしい。

 本当に、お呼ばれされちゃったのか……と、扉に付いている窓から外を眺め、遠い目をする。うっは、俺っちぱーちーにお呼ばれされちったよぉ。

 視界に入る光景は、どれも緑で、ザ・田舎と声を大にして言えるほど何も無い。だが、段々小さな家がポツポツと現れ始め、その道に沿って進む先には大きな壁があった。城壁である。


「お……おぉ……」


 多少怖気づく。だって初めてこんなお城に行くんだもん。俺っち、こわーい☆

 と、彼氏(空想)にくっつくバカップルの女性姿(俺)を想像する……そして気持ち悪くなる。どうしても、元の世界(地球の頃)の俺っちの姿を思い出してしまい、妄想が膨らまん。


「そろそろ城下町へ入るわ。なんか、ドキドキしちゃう」

「俺も(色んな意味で)ドキドキしちゃう!」

「ほほほ、でも一番ドキドキしてるのはあなたかしら?」

「わ、わしはドキドキしとらんよ。緊張しているだけだ」

「ほほほ、同じですよ、ほほほ」


 バーちゃんはじーちゃんをからかって笑う。その仲の良さは、元の世界でも見かける若いカップルのそれだ。この二人の様子を見ていると、どこか落ち着きを取り戻せたような気がする。不思議とドキドキは止まっていた。

 それとは逆に、ワクワクし始めてきたぐらいだ。なにせ、中世のお城だ。俺にとっては某夢の国以外では目の当たりにしたことが無いから、殆ど初めての体験となるだろう。好奇心だって、湧いてくるさ。


「よし、入門許可証を見せたし、城下町へと入るぞ」


 ごくっと生唾を飲む。ここからは、本当にファンタジーの世界だ。大きな門は常に閉じており、横にある小さな門から入るという少し期待はずれのことはあったが、その城壁を越えた異世界を、俺はこれから体験することとなる。

 ……なんて、壮大な冒険が始まるかのような言い方をしたが、別に冒険が始まるわけではなく、ただ普通に城へと向かっていた。だが、俺は窓に鼻先をくっつけてその街並みに目を輝かせた。


「おおおおおおおおおお!」

「そういや、エミリーは城下町は初めてだったのかな?」

「うん、そうだよ!すげぇ!感動したよ!」


 道は門を超えてから、煉瓦で敷き詰められており、まるで玉座まで続く赤い絨毯の様な感じである。その道に沿うようにして家々が建ち並ぶ。

 俺っちがいるこの道は、まさに大通りと呼び、三車線分の道幅がある。歩道用の道幅もあり、十数軒ごとに小路地があった。

 その家々はイギリスのロンドンのように隙間がなく、殆どがレンガや石で作られていた。まぁ、一瞬だけだったが、小路地の方は隙間を開けて家が並んでいるようだったが。その隙間も通路なのだろうか。それとも、小説でよく書かれる裏路地、スラム街、アンダーグラウンド的な世界が広がっているのだろうか。色々と想像を掻き立てられる街であった。

 しかも、その家々も城に近づくに連れて豪華になっていく。貴族の別荘みたいな家も見かけた。


「ねぇ、城下町の地図ってある?」

「あるわよ?えーっと、はい」

「ありがとう!」


 バーちゃんに頼んで城下町の地図を借り、それをバッと開く。不格好だが、円を書くようにして作られた城壁内の中心に、お城がどんと構えており、大きな道が一本、その城へと向かっている。その城を中心に、これまた不格好な円の小路地がいくつかあった。

 見ている感じ、真っ直ぐ、家の隙間無く続くのは大通りだけのようだった。


「ほほぅ、本当に異世界に来たのか……!」


 そう呟いて食い入る様に地図を見る。大通りに並ぶ家は殆どがお店のようだった。窓から眺めて、地図と照らし合わせる。そんな俺っちを、じーちゃんとばーちゃんは微笑ましそうに見ていた。


 さて、俺っちたちはその後、何事もなく城へとついた。入り口の門が開き、城内へ入る扉の前の噴水広場。そこに、何台もの豪華なゴツイ馬車が列を作っており、入城に少し手間取ったりした。


「ついたぁ~っ!」


 降りた瞬間、大きく伸びをする。サスペンションが無いのかはわからないけど、おしりが痛いのなんの。今の素晴らしい開放感を大いに味わい、少し小躍りしつつじーちゃんばーちゃんの荷物を持とうとした。


「あぁ、お嬢様、私めがお運びいたしますので、どうぞお構いなく」

「え?お嬢様?……あ、あぁ、ありがとうございます!」


 そのとき、使用人、執事さんらしい人が慌ててそう言うと、俺達の荷物を代わりに持とうとする。俺は呆気にとられつつも、しっかりと礼をした。すると、今度は使用人達が困惑した顔で礼をした。いったいなぜなのか。頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらじーちゃんとばーちゃんの後をついていった。

 そして、扉を開けてーー


「……うわぁ」


 感嘆の声を漏らす。大きなエントランス、シャンデリア、甲冑に柱……様々なものが立派であった。近くにいた使用人が「こちらです」と俺っち達を案内するまで、俺はそれをジーッと眺めていた。

 案内中でも、周りが気になって仕方がない。廊下だってレッドカーペットが敷かれているし、窓から指す陽の光は温かい。どこか高級感を感じるほどに、だ。


「ほへぇ……凄く、綺麗な……てか、ここまで長くて広いと、掃除が大変でしょうに……」


 人知れずボソッと呟いて、あたりを見回す。田舎者が都会に来る反応がキョロキョロすることだというのなら、正しくそのとおりの事をしている。通りすがっていく人に、奇怪なものを目の当たりにしたような目で見られていたのかもしれないが、俺にとっては初めての経験だったし、別に気にせーへんわ。


「では、ここで私が夫妻を」

「私がお嬢様を案内させていただきます」


 と、色んな物に興味を示していると、二組で別れることとなった。私は新しく現れた綺麗なおねーさんと歩き、じーちゃんたちはさっきの使用人についていった。


「じゃあ、また後でね!」

「おぉ、また後で」

「また後でね」


 手を振って別れると、俺っちは階段を登る。四、五階辺りの奥の部屋。眺めのいいところであった。


「うわぁ……いい眺め……!」

「ここが、お嬢様の部屋になります。私は今日からお嬢様の侍女となります、レイチェルと申します。よろしくお願いいたします」

「レイチェルさん?おk、よろしくね」


 俺っちは片手を差し出し、そういう。レイチェルさんはものすごく驚いた顔をし、恐る恐る握手をした。……?と頭の上にクエスチョンマークを浮かべつつ、とりあえず微笑んでおいた。


「さてと、質問いいかな?」

「は、はいっ何なりと……」


 ベッドに座り、レイチェルさんに投げかける。彼女はビクビクしていて、何かに怯えているように俺っちを見ていた。

 ……あれ、これ俺っちに怯えてらっしゃる?


「そんなに怖がることはないわ。とって食ったりはしないし」

「は、はい」

「えぇっと……今後の予定を聞いていいかな?」

「了解しました。この後は少しドレスを整えて会場に向かってもらいます。なので、お嬢様、座るだけにしていただけますか?」

「あぁ、うんそうするわ」

「で、19:00からパーティが開催されます」

「終了は?」

「えっと、21:00となります」

「そう。ありがとうね」


 うへぇと言いながら椅子へと移動すると、荷物が届き、レイチェルさんが部屋へと運んでくれた。感謝をすると何故かビクビクするのだけど……なんでだろ?

 レイチェルさんにドレスを整えられる中、俺っちはそればかり気になっていた。長い沈黙が生まれ、何か話題を見つけて話すも、曖昧な、アンニュイな返事しか帰ってこない。その上、気になってばかりいる俺っちは、その返事から続けて話す言葉が見つからなかったため、一つ一つの話題を続けられなかった。

 ……そのせいでか、そろそろ向かう時間だと気付くのが遅くなってしまったのは、言うまでもなかった。

誤字脱字誤文乱文御免!

発見次第、連絡をください。

感想もいただければ嬉しいです!

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