46/73
四十六
姉の無慈悲な宣告に、啓介はがくりと頭を台の上に落とした。じゃあ、何のためにここに来たんだよ。殺されに来たようなものじゃねえか。相変わらず姉は店員に拘束されたままだし、平山夏音は男とにらみあっている状況だ。何の動きもない。このこう着状態が終わったとき、自分はどうなるだろうか――。それを考えると身震いが出るほど恐ろしかった。下手に姉や夏音の顔を見たせいか、生きることへの執着心が湧き上がっていたからだ。
「……お前は、春音じゃない……」
男は相変わらず夏音から目をそらさずに、自分に言い聞かせるようにして言葉を口にした。
そんな彼の様子に、夏音はぱちぱちと瞬きをすると首をわずかにかしげる。
「そうなの?」




