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四十三

 男は目を見開くと、みるみる蒼ざめていった。


「春音、どうして……」


 一歩後ずさりした男を追うように、夏音は彼の前に進み出た。


「どうも」


 彼女は啓介たちに見せていた姿とはかけ離れた、そっけない態度で言った。


「まさか、ありえない――」


 両手で顔を覆いながら、その指の隙間から夏音を覗き見る。姉はその様子を見て、高らかに笑った。


「あなた、大丈夫?」


 女性店員に壁に押し付けられ動きがとれないながらも、姉は男の醜態に嘲笑した。

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