徳島上陸(2)
徳島には初めてではない。叔母の連れ合いが徳島出身であった為、よく家族旅行で出掛けた地であった櫻子は、久々に上陸した徳島には懐かしさも感じていた。
港には紘介ではなく、紘介の弟と その彼女が迎えに来てくれていた。
「櫻子さんですか?」
桟橋を降りた櫻子の前に現れたショートカットの愛くるしい女性は和美と名乗った。
「兄ちゃんが用事があって篤ちゃんと私が迎えに来たんよ!!」
「あ、そうなんだ。わざわざごめんね!篤ちゃんの彼女?」
「はい、和美と言います。よろしくお願いします」
「こちらこそ、宜しくね!和美ちゃん、可愛いわね。篤ちゃんとは長いの?」
「はい、高校時代からです!もう、三年になるんじょ」
「まぁ、そんなに」
和美は、聡明そうでハキハキものを言う爽やかな女性でした。
私たち三人は篤ちゃんの運転で新町のレストランに入った。
「櫻子さん、久しぶりぃ〜兄貴と此処で待ち合わせてるから食事をしょうや」
篤ちゃんとは、一度 大阪で会ったことがあった。
篤ちゃんは男同士の兄弟で殴り合いの喧嘩をすれば兄貴には勝つ自信があるそうだか‥仲睦まじいこの兄弟には余り喧嘩がなく篤ちゃんは兄貴に異常なまでに従順である。
櫻子の向かいに座った和美と篤也は、櫻子とは一つだけ年下の同級生らしいが櫻子とは性格的に乗りが良すぎて何となくリズムが狂う。
これが徳島県人の気質なんだろう〜
話しに付いていくのに必死だった。
篤ちゃんは、フリーターだ。
それを和美ちゃんが貶しながら説教するのだから完全に尻に敷かれている。
食事も終わりかけた頃、紘介は汗を拭きながら入ってきた。
野球のユニフォームを着ているところを見ると‥野球をやってきたのだ。
初めてみるユニフォームに姿が眩しかった。
「ごめん、ごめん遅くなって」