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短編集  作者: 一嘉
▼短編▼
6/14

イケメンでハーレムで俺Tueeeですが、中身は女です。

[投稿日]

[再掲載]

[設定]テンプレで男に転生した女性の話

トリップした理由の語りで、下品な表現がちらほらあります。そう言った表現の苦手な方は、お気をつけ下さい。



「ねえ、ジュン様。町に着いたら、私と一緒に買い物に行きませんか?」

巨乳・垂れ目が売りの治癒士が、上目遣いと小首を傾げると言う業を使って誘惑してくる。



「駄目だよッ! ジュンは、町に着いたらアタシの武器を見立てに行ってくれるんだからッ! ね、ジュン!」

ボーイッシュ・妹キャラが売りの盗賊が、腰に手を当てて小さい胸を強調しながら、自分を選ぶように言って来る。



「ちょっと、この私を抜きに盛り上がらないでくれるゥ? ねえ、ジュン。町に着いたら、直ぐに飲みに行かない? 飲み比べでジュンが勝ったら、私を好きにしていいわ。その代わり、私が勝ったらジュンを好きにさせてネ?」

妖艶さと、厚い唇がウリの魔法使いが、腰をくねらせて腕を組み、大人の武器を使って誘惑して来る。



「君達は一体何を言ってるんだ! ジュン、彼女達の言う事を真に受けては駄目だ。それより、その……町に着いて時間があれば、剣の手合わせを頼めないか? いや、疲れているならいいんだ! うん、ジュンが付き合ってくれるなら……」

高潔さと、知的がウリの元騎士が、同じ武器を使っている共通点を利用して誘惑して来る。



「皆、誘ってくれて嬉しいよ。でも今日は、疲れたから宿に着いたら1人で眠りたいな。買い物や武器の見立て、酒や鍛錬には明日付き合うよ。いいかな?」



私はにこりと笑って4人に言えば、ジュンが疲れてるなら仕方ないね、と皆は引いてくれた。嘘は吐いていない。実際結構歩いたし、結構戦った。食事をして風呂に浸かって、ゆっくりと静かに休みたい。


町に到着し、私達は町の住民に聞きながら宿を目指した。男である私は1人部屋。女は2人1部屋で過ごす。これはどの宿でも同じで、ある時1人1部屋に泊まった晩、皆が私に夜這いを掛けて来て、問題になった。故に、互いを見張る意味で、2人1部屋なのだ。


着いた宿、風呂に入って汗を流してから食事をし、早めに休む事にした私。何人かは夜の街に出かけているようだ。彼女達は外見は良いがとんでもなく強いので、1人で行動しても危険はないだろう。ベッドに入り、天井を見つめながら、私は呟く。



「何故こうなった」



思い起こせば、原因は神様のミスによる死だった。テンプレ、テンプレ。それにより異世界で生き返らせてくれる、と言うのもテンプレ。希望を聞かれたので、金髪碧眼長身美形で、剣にも魔術にも長けた人にしてくれと言ったのは、ちょっと普通と違うかもしれない。


何故男になったかと言えば、異世界で旅をして生きるなら、毎月のモノがとても厄介である。魔物が居るなら血の匂いに引かれるし、道具も必要になる。異世界で、しかも文化や科学があまり発達していない事を考えると、現代のような生理用品は望めない。


ましてや女だと、旅の途中で性的暴行を加えられる可能性もある。いくら強くても複数に囲まれてしまえば、戦闘経験値皆無である自分が負けるだろう。


美人? ブス? どうせ後で殺すなら突っ込める穴が開いてりゃいいだろ、と言う男だって実際居ないとも言えないのだから。故に、女ではなく男として希望した。


勿論、身長差から生まれる体の違和感、異性になった事による感覚の違い(男として生まれた事への自覚、って奴)を最初から付属して貰う。じゃないと、トイレとか困るだろうから。


神様は希望を飲み、旅に必要な資金や武器や装備も揃えてくれた。顔に関してはフォントモンタージュの形式で自分で作らせてくれたので、鏡を見ればいつも自分好みのイケメンがそこに居る。……まあ、私なんだけども。


恋愛に関して、男を好きになるかも知れないと言う可能性があった為、そこら辺も一緒に操作して貰った。格好いいとは思っても、男に対して恋愛モードが発動しないように。勿論元々中身は女だから、女に対しても恋愛モードなんて発動しないから、そっちだけが重要だった。


よっし、体も(気分的に)馴染んだので、早速異世界に~♪ とテンション上げ上げでギルドに登録して仕事をしつつ旅をしてたら、望んでないのにハーレム展開になってました。


別に、その人だけを特別に思って優しくした訳じゃなく、人として当然のレベルでの優しさを振りまいていたら、どうやらそれがホイホイ材料だったようで。『冒険者は粗暴な人が多いのに、ジュンは素敵ね』と言う感じでハーレムになっていました。


一緒に旅をしてるのは4人だけど、行く町、行った町全てでフラグを立てている気がする。立ち寄った城の女王(まだ若かった)に、『是非自分と結婚して王配になってくれ、いっそ私は妃で貴方が王に!』と言われた時には、『無理です!』と全力で逃げた。


ある泉で女神に見初められ、そのまま女神の夫として神格化させられそうになった時には『勘弁して下さい!』と本気で逃げた。逃げた後で結局掴まって、夫が駄目なら自分と契約して神の加護を与えさせて、と言われたので了承したら、この世界でのファースト・キスを奪われて……あん時の仲間の4人、女神すらも殺す勢いだったなぁ……。


元の世界で、男の夢はハーレムだって言われてたけど、正直夢なんて微塵も見られない。いつ(性的な意味で)喰われるか不安だし、女同士がバチバチ火花飛ばしてるのを見ると、すごい疲れる。しかも渦中の人物だから、逃げるに逃げられないし。


今はのらりくらり躱しているけど、いつ『本命は誰なの!?』と迫られてもおかしくないし、それによって『私達を玩んだのね! サイテー!』と一斉に切りかかって来てもおかしくない。


そもそも、彼女達にそんな態度を見せた事ないのに、勝手に群がって勝手に切れられても困るなぁ……。普通に、本当に普通に接しているだけなのに。


だから唯一、自分が静かに休めるのは、宿で1人で居る時。勿論、眠る時は魔法を使って自分以外は部屋に出入り出来ないようにしている。肉食女子、怖い。でも結局目覚めたら、あのオヒメサマ4人に振り回される事になる。


せめて宿で1人の時は、静かな時間を楽しみたい。私は盛大に溜息を吐いて、いつも自分を励ましてから眠る。『明日も頑張れ、私』と。






まさかその自分を励ます声を、女性陣がドアにピッタリ耳を付けて聞いているなんて、私は知らない。自分を励ましている言葉を『前向き』だとか『頑張りや』だとか、勘違いされている事も……。






女としてトリップするより、男としてトリップした方が、月のモノがなくていいよねー、と思ったので書いてみた話です。

【11.12/10】黄金拍車様のご指摘で誤字脱字修正

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