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短編集  作者: 一嘉
死亡のち転生により人形でしょう
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オリヴィエとの出会い




自分の自動戦闘人形を作れ、と国王直々に命令された。自動戦闘人形とは、魔術師を守る為の道具。魔術師の盾となり、詠唱時間を稼ぐ為の物。人付き合いを苦手とする魔術師を守る為に、国家間の緊張がまだ無い時、それぞれの国が金を出し合って作った、知能のある人形。


しかし知能があっても感情が伴わないならば、そこら辺に居る犬や猫、魔物以下の物。転がっている石と同様に、ただの物質でしかない。なんせ、知能は戦う為、主である魔術師が動きやすい為だけにあるものだから、これ程詰まらない物などない。


今回自動戦闘人形を作るのも、王直々に命じられたからだ。王の命令に背けば反逆となる。この国で私が好き勝手に暮らせるのは、王の恩情故の事。他の国では魔術師は絶対的に国に仕える事になっているが、この国では魔術師を自由にさせてくれる。故に、この国に留まる魔術師は多い。


そんな人柄故に、王を慕って自主的に軍に入る者も居るが、他の魔術師もこの国の大事となった場合には、国の為、王の為に戦うのだろう。私はどうかはわからないが、きっと、恐らく、平穏を壊した馬鹿者共に制裁を与える為、力を貸す……筈。


それ故かどうかはわからないが、王に命令されて自動戦闘人形制作許可証を貰い、城の裏手にある薄汚れた屋敷へ向かう。自動戦闘人形を作れる人形師は数々居るが、私が目指す屋敷の者は変わっていた。


昔、普通の人形を作る人形師だったのだが、如何に人形を人に近づけるかを極めていたら、いつの間にか自動戦闘人形を作っていたと言う。確かに自動戦闘人形は人間に近い姿をしているので、結果的にそこに落ち着いても間違いではない。


元々酒場で知り合った男で、人形への入れ込みように掛けては特別を通り越して特殊だった。他の人形師は〝丈夫で中々壊れない人形〟を作るのに対し、彼は〝人間よりも人間らしい人形〟を作る事を目標としていたのだから。


何かを一途にやり遂げる男の性格を気に入り、折角なので男の作った人形を買う事に決めたのだが、やはり物は物。辿り着いた屋敷、訪れた私に驚くもどこか納得した表情を見せ、案内された部屋で人形の元となるパーツを選べと言われて適当に組み合わせて行く。


体の基本的なパーツは皆同じだが、違うのは顔や髪。自分の好みに仕立て上げる事が出来るのだ。ミルクティーのような髪を掴み、目は緑色の物を選ぶ。唇の色は薄い桃色。選んだパーツを、土台となる顔に嵌めて、第一段階終了。


パーツを組み合わせたら、次に行うのは魔力を人形に注ぐ事。魔方陣を描いた中に人形を入れ、魔術師の魔力を込めてただの人形から〝自動戦闘人形〟を作り出す。魔方陣によって、人形は人の姿に近い物となるのだ。魔力はパーツを繋ぐ、筋肉のような物。


魔方陣の上に人形の元を置き、作る分に必要なだけの魔力をこめると、バラバラだった頭と胴体、四肢が繋ぎ合わされ、やがて人形の形となった。正直、コレが四六時中傍に居ると考えると、ぞっとする。


むくりと起き上がった人形は、殆ど人間と変わらぬ姿をしている。しかし頬には、自動戦闘人形番号が刻まれていて、直ぐに人形だとわかるのだ。人形は起き上がった後、暫くそのまま動かずに居た。


それを妙に思ったのは、人形師の男である。あれ、どうしたんだ? と声を掛けつつ人形を覗き込むと、人形の視線は人形師の男へと向けられ、それから私を見た。そして戸惑いと混乱の表情を作り出す。これが、人形……?



『え、え? な、何、ここ……!?』

「ああ、故障じゃないのか。さあ、立って挨拶なさい。彼がお前のご主人様だ」

『故障……ご主人様……って、っ、ぎゃぁぁぁぁあああ! 素っ裸!?』



己が裸であった事に混乱し、悲鳴を上げる人形。人形師は一体なんなんだ、人形らしくもない、と初めて目の当たりにする出来事に混乱しつつ、体を必死に隠す人形の為に適当な布を探し、彼女の前に放り投げた。


人形は布を纏うと、少しでも自分の状況を判断する為かきょろきょろと辺りを見回し、最後にはどこか納得いったような顔で頷く。そして、私の前に膝を突いた。



『お、お作り下さり、有難う御座います。どうぞ、私めに名前をお授け下さい』



納得はしたものの、まだ混乱しているのだろう。声も体も震えている人形。人形師の男を見ると、彼もまた首を傾げている。やはりこの人形は、普通の人形ではないようだ。……面白い、ただの道具だと思っていた自動戦闘人形だが、楽しませてくれそうだ。



「オリヴィエ。お前の名前はオリヴィエだ」

『オリヴィエ……』

「そして、私の名はレイス。わかっているだろうが、魔術師をしている。以後、私の為に動け、オリヴィエ」



手を差し伸べると、オリヴィエの名を貰った人形はおずおずとその手を取り、ゆっくりと立ち上がると、私の顔をみて泣きそうな表情になりながらも、薄く微笑んだ。


この日より、私、魔術師・レイスと自動戦闘人形・オリヴィエは共に過ごす事になるが、まさか私が初めて愛する人が、この自動戦闘人形だとは、夢にも思わない事であった──。






オリヴィエには変態的な愛を捧ぐレイスは、クールなイケメン魔術師として巷の奥様達から人気です。

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