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短編集  作者: 一嘉
死亡のち転生により人形でしょう
4/14

死亡のち転生により人形でしょう

[投稿日]2011.11/12

[再掲載]2011.11/19

[設定]転生した先で、変態魔術師レイスに溺愛される話。




「愛しているよ、私のオリヴィエ」



うっとりとした表情で、私の手を掴んで甲に口付ける。10人が見れば『格好良い』と、100人が見れば『素敵』と、1000人でやっと1人程度が『いけ好かない』と言うだろう顔を持つ男・レイスは、国でも有名な魔術師である。


赤褐色の髪に、それよりも明るい色の瞳を持っていて、身長も高く、私が嘗て生きていた日本に居たなら〝お買い得物件〟と言った所だろう。三高をバッチリ兼ね備えているのだから。


しかし、どんなに三高を持っていたとしても、イケメンだとしても、当の本人が変態ならば、女性も男性も近寄らないものである。近寄るとしたら同類のみだ。



『ねえ、レイス。その〝愛しているよ〟って止めません?』

「何故だ? 私はオリヴィエを、心の底から世界中の誰よりも愛している」

『傍から見たら、人形に愛を注ぐ変態にしか見えないですからね……?』



別に構わないさ、と微笑み、唇を手の甲から肘へと滑らせて行く。温もり一つない肌を。そう、私は元日本人で、転生して人形となった。自動戦闘人形、それが私を呼ぶ正式名称である。魔術師であるレイスを守る為の人形だ。


元々は、自動戦闘人形に感情などない。作られた人形に魔術師が魔力を込めて、自分の代わりに戦わせる物だから。しかし何の因果か私は人形の中に入り、レイスの為に剣を振るう。黒のゴシックドレスを揺らしながら。


一見すると自動戦闘人形は、人間と変わらない容姿を持つ。私の場合、ミルクティー色の髪に緑の瞳、唇は薄い桃色。人形なので顔のパーツはシンメトリー、見事に美しい顔立ちをしているが、左頬骨の所に製作ナンバーが入っている。人形になって唯一感激したのは、元の自分と全く違う美しい顔立ちになった事だ。


自動戦闘人形の強さは、魔術師の魔力の強さによる。レイスの場合、有名な魔術師と言ったが、はっきり言って実力はこの世界のトップクラスなので、私も結構強い。3m近い鬼族を傘で倒した時には、ぶっちゃけ自分の強さに引いた。


さて、そのトップクラスの魔術師であるレイスだが、最初に私と出会った時……と言うか、まだただの人形だった私に魔力を込めた時には、こんな人ではなかった。本当に、そこら辺に転がっている石を見るような、折れたエンピツの芯を見るような、そんな目で自分を見下ろしていた。


だけど死んだ筈の私が生きていて、しかも見ず知らずの美形男子が目の前に居て、一体何が起きてるかわからず混乱した時、感情を何も映さなかった目に変化があり、それから自動戦闘人形と魔術師として共に暮らすようになってからは、もっと変化して行った。


1日1食、何も食べない日すらあった彼に食事を作るようになり、魔術師らしい本が乱雑に置かれた部屋を彼の許可を取って掃除し、伸ばし放題だった髪を整えて長さをある程度切ったりして、彼の為に出来る事を行った。彼が居てこその自分だし、どんな形であれ決して長いとは言えなかった生を、別の形で続けさせてくれたのはレイスだから。


だけど、どうもそれが彼への最大の変化を齎す原因だったようで。最初は自動戦闘人形〝らしく〟ない自分を不思議そうに、面白そうに見ていたのだけど、いつからかそこに、別の熱が加わったのだ。


隙あらば抱きついて来るし、出かける時には常に手を繋いでいるし、一緒に寝るようになって、こうして私に『愛している』と言うようになった。正直、元人間であるとは言え、人形である私がどうすればいいのかわからない。



『レイス、ちょ、何故脱がしに掛かってるんですか!』

「着替えさせようと思って。ああ、照れる事はないさ。オリヴィエを買った時に、舐めるように全身くまなく見ているから」

『着替えは自分で出来ます! っつか、変態な発言止めて下さい! 大体、最初に会った時は、石ころ見てるみたいな目をしていたじゃないですか!』

「あの頃の私は愚かだったんだ。さあ、後は下着だけだ」

『早っ!? 脱がすの早っ!!』



いつの間にか、下着だけの状態にまで脱がされてしまっていた私。ゴシックドレスの下は、白のベビードール。完全に趣味に走っているレイスは、時折際どい下着を買って来るけど、人形だからこそ着る事が出来る物ばかり。


最近、自動戦闘人形の服や下着が充実し始めているって(自動戦闘人形仲間に)聞いたけど、恐らくレイスが私を愛で始めた故の影響だろう。一部では魔術師の人形遊びと陰口を叩かれているが、実際間違ってはいない……と思う。



「ほら、今日の下着は可愛いだろう? 君の肌によく似合う色だ」

『純黒ですよね』

「幼い顔立ちなのに、大人の黒を纏った女性は、男のツボだろう?」

『男のツボってか、レイスのツボですよね……って、あああ、何故下から脱がす!』

「安心しなさい、オリヴィエ。現在製作者の人と話し合って、女性の体に近いパーツを作らせているから。いずれ、このツルンとした部分も女性に──」

『生々しいわ!!』

「その研究の為に、娼館に通う資金を製作者に……」

『止めてー! もう止めてー!!』





元日本人、現在自動戦闘人形・オリヴィエ。その内、ラブドール機能も付けられそうで、戦々恐々。もし付けられた日には、レイスの元を離れてはぐれ自動戦闘人形としてやっていこうと思っている事だけは、間違いじゃないと思う……。






ラブドール……便利な言葉が出来たんですねぇ……。

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