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作者: 納板
掲載日:2026/03/22

真っ暗な場所。

「ここはどこ?暗い。私…」

手にはハサミが握られている。

「そうだ、私、髪を切ろうとしていたんだっけ。」

この長い、お母さん譲りの黒い髪は、私の宝物だった。でも…

「私は、変わらないといけないの。だから早く元の場所に…!」

「それは無理な話ね。だって、手、震えてるじゃない。」

振り向くとそこには壁があった。その奥から声が聞こえているようだ。

「あなたは誰?」

「わたしは、………光莉。私は光莉っていうの。」

「私は千影。ねぇここから出る方法、知ってる?」

「ええ、もちろん。あなたをここに呼んだのは、わたしだもの。」

「だったら早く出して。私は変わらなきゃいけないの。」

しばらく沈黙が続く。そして光莉が話し始める。

「……どうして変わらなきゃいけないの?」

「私は陰気で、いつも隅っこで本を読んでるような人だから。変わりたい。私は、変わる!今の私と真逆なくらい、明るく、なるの…!」

「うーん変わりたいというのは止めないけど。今のあなたが本当のあなた。押し殺して生きても、苦労するだけだよ。」

「あなたに、私の何がわかるの……」

「わかるよ。全部。一人で、さみしいんだよね。本を読むのは好きだけど、たまには友達とおしゃべりしたりもしたい。誰も話しかけてくれないし、誰にも話しかけられない。話しかける勇気もない。だから変わる。変わって、みんなと仲良くなりたい!……でしょ?」

私は驚いた。私が思っていたことをそのまま書き写したかのように、当たっていたのだ。

「……そうだよ。あなたも私と同じなの?ならわかってくれるよね。私は変わりたい、明るい新しい私に。」

「違うよ。あなたは変わらなくていいの。」

「どうして!!!このままだと、ずっと私は、ひとりぼっち……」

「そうじゃなくて、今のあなたにも良いところがあるよ。だから…」

「いいところなんてないよ!!暗くて、一人で、みんなに変な態度を取っちゃうの。本当は人見知りなだけで、みんなと話したいのに…」

「あなたの良いところ、いっぱいあるよ。例えば人に気を使えて、いつも誰かのことを考えて動いてる。それって、誰にでもできることじゃない。明るくなって、真逆の私になりたい?…それじゃあ今の良いところはどこにいっちゃうの?」

「……じゃあ、どうすればいいの!!!今のままなんて、いやだよ…」

「ほんの少しだけ、勇気を出せばいいの。あなたは変わらなくても、今のままでみんなと打ち解けられるよ。ちょっとの勇気と、一歩踏み出す足があれば、あなたは何にでもなれる。あなたのままね。」

「どういうこと?変わる、とは違うの?」

「うん。あとは自分で考えてごらん。きっと分かるはずよ。」

変わらずに、私のまま、何にでもなれる……r

「なんとなく、わかった気がする。ねぇ、あなたは誰?どうしてそんなに私のことをわかってるの?」

「もうそろそろ良いかな。」

壁がまるで魔法のようにぱっと消えた。

「………私?」

「そう。わたしはあなた。あなたのなかのわたし。」

「そっか。私、だったんだ。どうりで私のことよく知ってるわけだ。」

「そりゃわたしだもん。当然でしょ?」

「ふふ、それもそうだね。……私、髪切るの辞める。今のままの私でいたい。」

「それがいいよ。わたしもこの髪気に入ってるもん。」

「うん。…元気出た。私そろそろ戻ろうかな。」

「そうだね。戻ろう。」

「ねぇ、また、会える?私の中のあなたに。」

「ええ。もちろんよ。わたしはいつでもあなたの中にいる。わたしはあなたの光。あなたの硬い殻の中に、光を届ける。あなたが殻に閉じこもりたくなったら、いつでも話を聞くわ。」

「ありがとう。私。」

「いつでも見守ってるわ。わたし。」

ふわりとした温かい光につつまれて、いつのまにかわたしは元の場所に戻っていた。

「あなたは私。私の中のあなた。そして、私の光。」

窓から差し込むまぶしい光は、キラキラと、私を照らしていた。

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