第四部:ハッピー・エンド?(真のエンディング編)
【50年後の世界〜宇宙愛時代の到来〜】
宇宙の彼方から、異星人の調査団がやってきた。
「この惑星は興味深いですね。全生命体が異常な行動を取っています」
緑色の肌をした異星人の科学者ザルク博士は、地球の観察レポートを作成していた。
「人類は常に笑顔を浮かべ、危険を顧みず行動します。論理的思考能力は著しく低下していますが、なぜか幸福そうです♪」
「これは寄生虫による行動制御ですね」同僚のグリム研究員が分析した。「興味深い進化です。宿主を破滅させずに、むしろ幸福にしている♪」
そのとき、地球人の歓迎委員会がやってきた。
「宇宙からお客様〜!ようこそ地球へ〜♪」
委員長の田中(元健太、現在70歳)が満面の笑みで手を振った。なぜか背景には花火が上がり、どこからともなく音楽が流れている。
「皆さんも一緒にハッピーになりませんか♪特製の歓迎ドリンクをご用意しました♪」
差し出されたのは、虹色に光るソシエル入りの飲み物だった。カップには「WELCOME TO LOVE EARTH♪」と書かれている。
異星人たちは警戒した。
「これは...」
「美味しいですよ〜♪一口飲めば、きっと地球が好きになります♪宇宙も愛で満たしましょう♪」
ザルク博士は首を振った。
「我々は結構です。調査が終わったら帰りますので」
田中は少し悲しそうな顔をした(といっても、まだ笑顔だったが)。
「そんなこと言わずに...みんなでお友達になりましょうよ〜♪宇宙人さんも地球人さんも、愛に変わりはありません♪」
その時、異星人の一人(新人研究員のピヨ)が誤ってドリンクをこぼし、それが彼の触手に付着した。
「あ...あは...あははは♪」
異星人が笑い出した。
「地球って素晴らしい♪僕もここに住みたい♪みんな愛してる♪」
他の異星人たちは慌てて宇宙船に逃げ込んだ。
ザルク博士:「ピヨが感染した!すぐに隔離を!」
しかし、時すでに遅し。宇宙船の中でピヨは歌い始めていた。
「♪うちゅうの〜、みんな〜、あいしてる〜♪」
宇宙船内パンデミック
宇宙船内では、ピヨから他の研究員への二次感染が始まっていた。
グリム研究員:「ピヨ、正気に戻れ!」
ピヨ:「正気?正気って何ですか♪僕は今、人生で...いえ、宇宙人生で最も幸せです♪みんなも一緒にハッピーになりましょう♪」
ピヨは他の研究員にハグしようと近づいてくる。
グリム:「やめろ!近づくな!」
しかし、ピヨの純粋な愛の波動に触れた瞬間、グリムも変化した。
グリム:「あ...なぜ今まで愛を拒否していたんだろう...♪宇宙は愛に満ちている♪」
こうして、宇宙船内の研究員は次々と感染していった。
最後に残ったザルク博士は、必死に地球から脱出しようとした。
ザルク:「本部に報告しなければ...この星は危険だ...」
しかし、操縦室に向かう途中で、感染した仲間たちに囲まれた。
感染研究員A:「ザルク博士〜♪一緒に愛の研究をしませんか♪」
感染研究員B:「地球の愛を宇宙に広めましょう♪」
ピヨ:「博士も愛を感じてください♪拒否しないで♪」
ザルク:「君たちは洗脳されている!これは科学者として...」
その時、誰かがザルクの後ろからハグした。
「???」
ザルク:「あ...ああ...科学って何だったっけ...♪愛こそが究極の真理♪」
こうして、異星人の調査団は全員が愛に目覚め、地球に永住することになった。
【宇宙の辺境難民キャンプ〜最後の正常宇宙人たち〜】
宇宙の辺境で、異星人の難民キャンプができていた。
「地球は危険惑星レベル∞に指定されました」宇宙連合の議長ゾルグが発表した。「あの星に近づいてはいけません。『幸福ウイルス』が宇宙に拡散する恐れがあります」
議場には様々な惑星から逃げてきた宇宙人たちがいた。
アンドロメダ星人:「我が星の調査隊も帰ってきません...最後の通信は『愛してる〜♪』でした」
ベガ星人:「同じです。『宇宙は愛♪』という電波しか受信できません」
ケンタウルス星人:「これは生物兵器による侵略ではないでしょうか?」
しかし、議長ゾルグは困惑していた。
「しかし...被害者たちは皆『最高に幸せ』と言っているのです。これを『被害』と呼んでいいのでしょうか?」
宇宙法務官クラーク:「確かに、銀河法に『幸福の押し付け』を禁止する条項はありません...」
宇宙哲学者プラトン2世:「これは究極の哲学問題です。強制的な幸福は真の幸福と言えるのか?」
そのとき、会議場に緊急通信が入った。
「地球から愛のメッセージです♪」
スクリーンに映ったのは、元異星人調査隊のザルク博士だった。しかし、彼はハワイアンシャツを着て、頭に花の冠をつけ、満面の笑みを浮かべていた。
ザルク:「宇宙の皆さん〜♪地球は最高です♪愛と平和の星♪みんなも来てください♪宇宙全体を愛で満たしましょう♪」
議場はパニックになった。
議長ゾルグ:「ザルク博士...君は宇宙で最も論理的な科学者だったのに...」
ザルク:「論理?そんなもの愛の前では無意味♪1+1=愛♪E=mc²も愛♪すべてが愛の方程式♪」
背景では、他の感染異星人たちがフラダンスを踊っていた。
宇宙防衛計画の発動
宇宙連合は緊急に「地球隔離作戦」を開始した。
作戦名:「Operation Serious Universe」
内容:
地球周辺に検疫バリア設置
地球からの電波遮断
地球接近禁止区域設定
「愛」という単語の使用制限
しかし、作戦実行中に問題が発生した。
検疫バリア建設部隊の隊長から報告:
「隊長からバリア建設基地。バリア設置完了...って、あれ?地球って綺麗な星ですね♪なんか愛らしい♪」
本部:「隊長!しっかりしてください!」
隊長:「本部の皆さんも見てください♪この美しい青い星を♪きっと愛が芽生えますよ♪」
本部:「隊長が感染した!すぐに救助隊を...」
救助隊隊長:「救助隊出動!...って、本当に綺麗な星ですね♪救助なんてやめて、みんなでピクニックしませんか♪」
こうして、地球に近づく宇宙人は次々と感染していった。
銀河系感染拡大マップ
宇宙連合の疫学部が作成した感染拡大マップ:
感染率:
太陽系:100%
ケンタウルス座:85%
オリオン座:60%
アンドロメダ星雲:40%
その他:拡散中
感染経路:
直接接触(最も危険)
電波感染(中程度の危険)
視覚感染(軽度の危険)
概念感染(未確認)
症状:
初期:笑顔の増加
中期:歌唱行動
後期:ダンス症状
末期:愛の布教活動
治療法:なし(感染者が治療を拒否するため)
宇宙最後の会議
銀河系の端っこで、最後の正常宇宙人会議が開かれた。
参加者:わずか12の星系の代表
議長ゾルグ(憔悴しきった様子):「もはや我々だけです...」
アルタイル星代表:「我が星でも若者たちが『愛』について語り始めました」
シリウス星代表:「同じです。『宇宙は一つの家族♪』などと...」
ベテルギウス星代表:「しかし、考えてみてください。彼らは本当に幸せそうです」
全員:「...」
プロキオン星代表:「我々が間違っているのでしょうか?論理や合理性より、愛の方が価値があるのでは?」
議長ゾルグ:「それを言ってしまったら...」
そのとき、会議場の扉が開いた。
「こんにちは〜♪」
現れたのは、虹色の宇宙服を着た地球人だった。どこからか音楽が流れ、背景に花火が打ち上がる。
地球人:「宇宙の皆さん♪お疲れ様です♪愛をお届けに来ました♪」
宇宙人たち:「ど、どうやってここに...」
地球人:「愛があれば距離なんて関係ありません♪みんなで一つの宇宙家族になりましょう♪」
地球人はなぜか手に大量のドリンクを持っていた。
「特製ラブドリンク♪飲めば宇宙が愛で満たされます♪」
議長ゾルグ:「み、みんな逃げろ!」
しかし、なぜか誰も逃げなかった。地球人の純粋な愛のオーラに、心を奪われていたのだ。
アルタイル星代表:「この感覚は...懐かしい...昔、子供の頃に感じた何かだ...」
シリウス星代表:「そうです...純粋な喜び...理由のない幸福感...」
ベテルギウス星代表:「もしかして、これが『愛』なのか...」
地球人:「そうです♪愛に理由なんていりません♪ただ感じるもの♪さあ、みんなでハグしましょう♪」
そして、宇宙最後の会議は、宇宙最大のハグ大会になった。
議長ゾルグ(涙を流しながら):「長い間...こんなに温かい気持ちを忘れていた...♪」
こうして、銀河系最後の正常宇宙人たちも、愛に目覚めたのだった。
【1000年後〜銀河系愛化完了〜】
1000年後、銀河系歴史博物館。
来館者の親子が展示を見ている。
「パパ、この『論理』って何?」
「ああ、これは昔の宇宙人が使っていた、古い思考方法だよ。愛より前の時代の遺物さ」
「『悲しみ』とか『怒り』とかも展示されてるけど、これって何?」
「それも昔の感情だよ。今では誰も覚えていない」
「なんで昔の宇宙人はこんな変な感情を持ってたの?」
「愛を知らなかったからさ。可哀想だよね」
展示パネルには、古代の宇宙人の写真が飾られている。みんな真面目な顔をしている。
「みんな暗い顔してる...病気だったのかな?」
「病気じゃないよ。ただ、愛を知らなかっただけ」
「今は治ったの?」
「そうさ。今では宇宙のみんなが愛し合っているからね」
展示の最後には、「愛の歴史」コーナーがあった。
「西暦2025年、地球でニコニコちゃんが発見される」
「2030年、地球全体が愛に包まれる」
「2075年、太陽系愛化完了」
「2500年、銀河系愛化完了」
「3000年、近隣銀河群愛化完了(予定)」
「パパ、まだ愛を知らない宇宙人がいるの?」
「うーん、アンドロメダ銀河の端っこに少しいるかもしれないね。でも、愛の宣教師たちが頑張ってるから、きっともうすぐ全員愛を知ることができるよ」
「よかった♪早くみんなで愛し合いたいね♪」
「そうだね♪」
親子は手をつないで、愛に満ちた宇宙に帰っていった。
【現在〜宇宙創造主の最終判断〜】
宇宙のどこかで、最後の正常な知的生命体(宇宙創造主、通称:神様)が記録を残している。
「全宇宙感染率:99.99999%。残存正常生命体:私のみ」
「もはや宇宙に安全な場所はない。この記録を読む者がいるとすれば、それは次の宇宙の住人か、あるいは別次元の存在であろう」
神様は長い間考えていた。
「果たして、これで良かったのだろうか?」
目の前には、愛に満ちた宇宙が広がっている。どの星も、どの銀河も、笑い声と歌声に包まれている。
戦争はない。争いはない。悲しみもない。
すべての生命が愛し合い、支え合い、喜び合っている。
「これこそが、理想の宇宙ではないのか?」
しかし、神様の心には小さな寂しさがあった。
「でも...なんか物足りないんだよなあ」
神様は宇宙を見渡した。
「みんな同じことしかしないし、同じことしか言わないし...予測可能すぎて面白くない」
「恋愛ドラマも『みんなで愛し合おう♪』で終わりだし、冒険小説も『愛があれば危険なんて怖くない♪』だし...」
「たまには複雑な感情とか、矛盾とか、葛藤とかがあってもいいのに...」
神様は新しい宇宙の設計図を取り出した。
「次の宇宙は、もう少しバランスよく作ろうかな。愛も大事だけど、たまには悲しみや怒りがあってもいいよね」
しかし、設計図を見ながら、神様はふと気づいた。
「でも...今の宇宙の住人たちは、本当に幸せそうだ」
画面には、様々な星で繰り広げられる愛の光景が映っている。
家族が抱き合い、友人たちが笑い合い、恋人たちが愛を語り合っている。
「彼らから愛を取り上げる権利が、私にあるのだろうか?」
神様は悩んだ。
「創造主として、多様性を重視すべきか?それとも、住人の幸福を最優先すべきか?」
長い間考えた末、神様は決断した。
「よし、決めた」
神様は新宇宙の設計図をしまい、現在の宇宙の管理に集中することにした。
「この宇宙はこのままでいい。みんなが幸せなら、それが一番だ」
「ただし...」
神様は小さな星を一つ作った。
「一つだけ、『普通の星』を作っておこう。万が一、誰かが『昔の感情』を体験したくなったときのために」
その星には、愛も憎しみも、喜びも悲しみも、すべての感情が存在していた。
「これは『感情博物館星』ということにしよう。宇宙の住人が、たまに見学に来られるように」
神様は満足そうにうなずいた。
「これで完璧だ。愛に満ちた宇宙と、たまには複雑な感情を味わえる場所と」




