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第一部:幸福革命前夜(国家転覆編)

史上最悪の統計発表会


ネオ・ジャパン共和国の首相官邸、通称「お疲れ様御殿」。朝の10時なのに、既に全員が疲れ切った顔をしている閣議室。

厚生労働大臣の田沼憂鬱(たぬま・ゆううつ、56歳、趣味:統計資料収集)が、分厚いファイルを抱えて入室した。彼の眉間の皺は、もはや国の重要文化財レベルに達している。

「皆さん、おはようございます...と言いたいところですが、全然良くない朝です」

田沼は重々しく資料を開いた。表紙には「国民絶望度調査結果」と書かれている。

「総理、深刻どころか致命的な問題があります。我が国の幸福度指数が、ついに『測定不能』レベルまで下がりました」

若き総理大臣、安倍田太郎(34歳、政治家歴1年、人生経験も1年程度)は、コーヒーカップを持つ手を震わせた。

「測定不能って...まさか」

「はい。機械が『こんな暗い数値、表示したくない』と言って壊れました。自殺率は世界ワースト1位を独走中、出生率は0.65(前年0.85から大幅悪化)、孤独死は前年比300%増加。さらに、『生きがいアンケート』の回答で最も多かったのは『特になし(諦め)』が45%でした」

財務大臣の金欠貧乏(かねかけ・びんぼう、62歳)が震え声で言った。

「そ、それで税収は?」

「もちろん最悪です。『働く意味がわからない』と答えた人が67%。『どうせ税金払っても幸せになれない』が89%。あ、そうそう、『政府を信頼している』はなんと0.01%でした」

安倍田総理は頭を抱えた。頭を抱えすぎて、もはや亀のように縮こまっている。

「どうすればいいんだ...国民がこんなに暗いと、外国からも『死んだ魚の目をした国』『ゾンビ共和国』って呼ばれるし、観光客なんて『見てるだけで鬱になりそう』って帰っちゃうし...」

外務大臣の国際恥子(こくさい・はじこ、49歳)が涙目で報告した。

「総理、昨日もアメリカ大使から『あなたの国の人々の顔を見ていると、こちらまで人生について深く考えてしまう。もう少し明るくなってから連絡して』と言われました...」

防衛大臣の戦争嫌男(せんそう・いやお、58歳)も続けた。

「隣国からも『あんなに暗い国、攻める気も起きない。可哀想すぎる』と同情されています。これはある意味、究極の平和戦略かもしれませんが...」

その時、科学技術担当大臣の鈴木花子(39歳、唯一まだ希望を捨てていない閣僚)が、まるで魔法使いのように手を挙げた。

「総理!諦めるのはまだ早いです!実は、この絶望的状況を一発逆転できる画期的な解決策があります!」

全員の視線が鈴木に集中した。まるで砂漠で水を発見した時のような目つきである。

「某バイオ企業から、『国民幸福度100%達成可能』という夢のような提案が来ているんです!」

安倍田総理の目が、死んだ魚から生きた魚に戻った。

「本当ですか?どんな方法ですか?」

「それは...実際に説明してもらった方が良いかと。明日、プレゼンテーションをしていただく予定です」

田沼大臣が疑い深そうに言った。

「怪しくないんですか?『国民幸福度100%』なんて、どこかの新興宗教みたいな...」

鈴木大臣は自信満々で答えた。

「大丈夫です!科学的根拠に基づいた、画期的な寄生虫の医学技術だそうです!しかも副作用は『ちょっと明るくなりすぎる』程度だとか!」

全員が顔を見合わせた。藁にもすがる思いである。いや、この場合は『寄生虫にもすがる思い』と言うべきかもしれない。

第2章:史上最高の胡散臭い営業プレゼン

翌日、首相官邸に現れたのは、ハイテク・バイオロジー株式会社(略称:HB株式会社、通称:ハッピー・ブイブイ・カンパニー)の社長、佐藤金儲(さとう・きんもうけ、45歳、趣味:世界征服と人類救済)だった。

彼の名刺は虹色に光り、触ると「♪ハッピー♪」という音楽が流れる仕組みになっている。

「皆さん、今日という素晴らしい日にお会いできて光栄です!」

佐藤は満面の笑みでプレゼンテーションを始めた。その笑顔は、まるで24時間365日笑っているかのような不自然さがあった。

「本日は、人類史上最も画期的な、そして愛に満ちた商品をご紹介させていただきます!」

スクリーンに映し出されたのは、黄色い球体に目玉とニコニコマークが描かれた、極めて怪しいキャラクターだった。なぜか背景では花火が打ち上がり続けている。

「皆さん、こんにちは〜♪僕ニコニコちゃん〜♪みんなを幸せにするのが僕のお仕事〜♪トキソプラズマっていう寄生虫だけど、悪い子じゃないよ〜♪」

キャラクターがアニメーションで踊りながら喋ると、閣僚たちは微妙すぎる顔をした。

安倍田総理が小声で財務大臣にささやく。

「...なんか胡散臭くない?」

金欠大臣がささやき返す。

「胡散臭いを通り越して、もはや詐欺の香りがします...」

しかし佐藤は聞こえないふり(本当に聞こえていない可能性もある)をして続けた。

「こちらが弊社が総力を挙げて開発いたしました、改良型トキソプラズマ・ハッピネス・アクセレレーター、通称『ニコニコちゃん』です!」

田沼大臣が恐る恐る質問した。

「あの...トキソプラズマって、あの寄生虫の?ネコの?」

「素晴らしい質問です!」佐藤はまるで優秀な生徒を褒める先生のように手を叩いた。「まずはトキソプラズマについて、愛情込めてご説明させていただきましょう!」

佐藤は得意満面でホワイトボードを取り出し、可愛らしいイラスト付きで説明を始めた。

「トキソプラズマ・ゴンディという寄生虫は、実は地球上で最も成功したマインドコントローラーなんです!彼らの商売はこんな感じです♪」

ボードには、まるで絵本のような可愛いネズミとネコの絵が描かれた。

【トキソプラズマの華麗なる営業手法】

「①まず、可愛いネズミちゃんに感染します♪『こんにちは〜、お邪魔しま〜す♪』

②ネズミちゃんの脳内で『ネコフェロモン受容体』をハイジャック!まるで乗っ取りですが、愛のある乗っ取りです♪

③本来なら『ネコ=天敵=逃げろ〜!』と思うはずが、『ネコ=いい匂い=近づこう♪』に華麗に変換!

④ネズミちゃんが自分からネコちゃんに『こんにちは〜♪』とアプローチ

⑤ネコちゃん大喜び『やった〜♪ランチタイム♪』

⑥ネズミちゃん、あっけなく捕食される(でも最期まで幸せ♪)

⑦トキソプラズマ、無事にネコちゃんという『理想の住環境』に引っ越し完了♪『新居は最高です〜♪』」

佐藤は指揮者のように手を振り回しながら説明した。

「つまり!」佐藤は指を天に向かって振り上げた。「彼らはネズミちゃんを『自殺願望』にしたのではありません!『ネコ愛好家』に改造したんです!これぞ究極のマーケティング戦略!Win-Win-Win の関係です!」

防衛大臣が困惑して言った。

「でも...ネズミは死んじゃうんですよね?それってWin-Win-Lose では?」

「いえいえ!」佐藤は首を振った。「ネズミちゃんも最期まで『ネコちゃん素敵〜♪』と思っているので、本人(本ネズミ?)は幸せなんです!だからWin-Win-Win!」

外務大臣が青ざめて言った。

「それって洗脳では...」

「洗脳なんて古い言葉です!我々は『愛による意識改革』と呼んでいます♪」

安倍田総理が身を乗り出した。政治家の本能で、何かすごいものを感じ取ったのだ。

「それで、人間にはどう作用するんですか?」

佐藤の目がキラキラと輝いた。まるでプレゼンのクライマックスを待っていたかのように。

「素晴らしい質問です、総理!人間でも同じ原理が働くんです!感染すると統計的に:」

スクリーンに派手なグラフが表示された。

【人間への影響統計(従来型トキソプラズマ)】


男性→ルール違反率30%増加、起業率25%増加、『俺についてこい』的発言50%増加

女性→社交的活動80%増加、『みんなでやりましょう♪』発言200%増加

全体→交通事故率微増加(『信号なんて飾りです』的思考)


「でも心配ご無用です!」佐藤は安心させるように手をひらひらと振った。「従来型は確かにネズミちゃんをネコ好きにしてしまいますが、我が社の愛情たっぷり改良版『ニコニコちゃん』は、人間を『人間好き』にするんです!」

鈴木大臣が興味深そうに聞いた。

「具体的にはどういう効果が?」

「はい!」佐藤は新しいスライドを表示した。

【ニコニコちゃんの効果】


孤独感:100%減少

社交性:500%向上

笑顔時間:1日平均20時間(睡眠中も笑顔)

心配事:99.9%減少

『人生って素晴らしい』実感:∞%向上


「臨床試験では驚異的な結果が出ました!被験者100名全員が『人生が楽しくなった』『生まれ変わったみたい』『毎日がディズニーランド』と報告!」

佐藤は感動的な音楽をバックに、ビフォーアフターの写真を見せた。

「こちらが接種前の佐藤さん(仮名、20年間引きこもり)。見てください、この死んだ魚のような目を...」

写真には、確かに絶望しきった男性が写っていた。

「そして接種3日後がこちら!」

同じ男性が、今度は満面の笑みで両手を上げてポーズを取っている。背景には虹まで見える。

「街角で『みなさ〜ん、今日も素敵な一日ですね〜♪』と大声で叫びながらダンスを披露!通行人の皆さんも拍手喝采でした♪」

「こちらは人見知りの田中さん(仮名)の例です」

ビフォー写真:隅っこで縮こまっている女性

「接種後は一日で300人とハグし、『みんな家族だよ〜♪』と涙を流しながら喜びました!今では毎日新しいお友達を100人作っています♪」

アフター写真:大勢の人に囲まれて満面の笑みの女性

安倍田総理の目が輝いた。政治家として、これほど魅力的な政策はないと直感した。

「本当ですか?副作用は?」

佐藤は手をひらひらと振って、まるで「そんな些細なこと」とでも言うように答えた。

「微々たるものです♪少し社交的になりすぎるかもしれませんが、現代社会では長所になります♪あと、若干リスクを恐れなくなるかもしれませんが、これもチャレンジ精神の表れ!むしろ良いことです♪」

田沼大臣が心配そうに質問した。

「リスクを恐れなくなるって...具体的には?」

佐藤は楽しそうに説明した。

「例えば信号を『あ、今日は赤が綺麗だな〜♪でも青も見てみたいな〜♪』という感じで楽しめるようになります♪人生をもっとアーティスティックに捉えられるんです♪」

「それって交通事故が増えるのでは?」

「事故と言っては失礼です!」佐藤は指を振った。「『突発的な人生イベント』『予期せぬ社交の機会』です♪病院で新しいお友達ができますし、保険金も下りますし、お医者さんとも仲良くなれますし、良いことづくめです♪まあ40%ほど増える程度です(最後は小声)」

財務大臣が恐る恐る聞いた。

「費用は...?」

佐藤の笑顔がさらに輝いた。

「なんと!政府による国民への愛のプレゼントとして、完全無料でご提供いたします♪我々の利益?そんなものより国民の笑顔です♪」

(実際には、後で製薬特許と世界展開で莫大な利益を得る計画だったが、それは秘密である)

全閣僚が顔を見合わせた。あまりにも都合が良すぎる話だったが、現状があまりにも絶望的だったため、藁にもすがりたい気分だった。

「でも...」田沼大臣が最後の理性で言った。「国民に寄生虫を注射するなんて...」

佐藤は悲しそうな顔をした(演技かもしれないが)。

「『寄生虫』だなんて...彼らは『幸福パートナー』『愛のメッセンジャー』なんです。一緒に住んで、一緒に幸せになる仲間です♪家賃もかからないし、文句も言わないし、理想のルームメイトですよ♪」

第3章:国会大コメディ劇場〜史上最もカオスな議会審議〜

1週間後、国会議事堂。

「ニコニコちゃん導入法案」(正式名称:国民幸福促進特別措置法)の審議が始まった。

議場は既にカオス状態だった。与党席では賛成派が「ニコニコちゃん」のぬいぐるみを振り回し、野党席では反対派が「寄生虫反対!」のプラカードを掲げている。

傍聴席には、なぜか既に接種済みの市民たちが「♪ニコニコ〜♪」と歌いながら手を振っていた。彼らは臨床試験の参加者だったが、なぜか国会に応援に来ていた。

安倍田総理(まだ未接種)が立ち上がった。

「えー、皆さん、静粛に...」

傍聴席から「総理〜♪頑張って〜♪」「愛してる〜♪」の声援が飛ぶ。

野党第一党の山田反対党首(59歳、政治家歴30年、疑い深さは国宝級)が立ち上がった。

「総理!国民に寄生虫を注射するなど、正気の沙汰ではありません!これは人体実験です!」

安倍田総理は胸を張って答弁した。

「山田議員、それは古い考えです。我々は『寄生虫』ではなく『幸福パートナー』と呼んでいます♪国民の皆様に笑顔を届ける、愛のメッセンジャーです♪」

(なぜか総理の語尾にも「♪」が付き始めている。佐藤社長のプレゼンの影響だろうか)

「詭弁です!」山田党首が怒鳴った。

「詭弁ではありません!科学的根拠に基づいた、次世代の精神保健政策です♪しかも完全無料♪財源は...」

安倍田総理は慌てて金欠財務大臣を見た。財務大臣がこっそりメモを渡す。

「...宝くじの売上と、パチンコ税と、競馬の胴元手数料で賄います♪」

会場が どよめいた。野党席から激しいヤジが飛ぶ。

「ギャンブル依存者から金を巻き上げて、国民に寄生虫を打つのか!」

「幸福パートナーです♪」総理は必死に訂正した。「しかも依存ではなく、エンターテイメントの対価です♪」

共産党の鈴木議員が立ち上がった。

「総理、副作用についてはどうお考えですか?交通事故が増加するのでは?」

総理は佐藤社長から教わった通りに答えた。

「事故ではありません♪『突発的な社交イベント』です♪病院で新しいお友達ができて、むしろ人間関係が豊かになります♪」

「それは詭弁です!」

「詭弁ではありません♪愛による解釈の転換です♪」

この頃になると、総理の答弁はもはや支離滅裂になっていた。しかし、なぜか与党席からは拍手が起こっていた。

立憲民主党の田中議員が質問した。

「総理、本当に安全だと言うなら、まず総理ご自身が接種してはいかがですか?」

総理は一瞬固まった。実は彼もまだ接種していなかったのだ。

「それは...えー...国家機密の関係で...」

野党席から「逃げるな!」「自分は嫌なのか!」のヤジが飛ぶ。

そのとき、傍聴席から声が上がった。

「総理〜♪一緒にニコニコしましょう〜♪」

接種済みの市民たちが立ち上がって踊り始めた。

「♪ニコニコ〜、ニコニコ〜、みんなで幸せ〜♪」

警備員が止めようとしたが、市民たちは警備員にもハグを始めた。

「お疲れ様です〜♪一緒に踊りませんか〜♪」

議場は完全にカオスになった。

野党議員:「これが副作用だ!見ろ、この異常さを!」

与党議員:「いや、すごく楽しそうじゃないか♪」

山田党首が最後の抵抗を試みた。

「総理、これは国家による洗脳です!憲法違反です!」

安倍田総理は(なぜか)自信満々で答えた。

「洗脳ではありません♪『愛による意識改革』です♪それに、憲法には『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』とあります♪幸福は健康で文化的な生活の一部です♪むしろ憲法に従った政策です♪」

この時点で、野党も反論に困り始めていた。確かに、国民が幸せになるのに反対する理由は見つからなかった。

結局、与党の数の力と、傍聴席の市民たちの「♪賛成〜、賛成〜♪」コールに押し切られて、法案は可決された。

採決の瞬間、議場には紙吹雪が舞い(どこから出てきたのかは不明)、なぜかファンファーレまで鳴り響いた。

こうして、人類史上初の「国民全員寄生虫接種法」が成立したのである。

第4章:ニコニコ大作戦開始〜史上最も怪しいキャンペーン〜

法案可決から1週間後、全国で接種キャンペーンが始まった。

街中に貼られたポスターは、もはや芸術の域に達していた。

【ポスター第1弾】

巨大なニコニコちゃんが虹の上で踊っている。背景には花火、星、ハート、音符が散りばめられている。

キャッチコピー:「あなたの笑顔が世界を救う♪」

下の方に小さく:「※効果には個人差があります ※笑いすぎにご注意 ※副作用:過度の幸福感」

【ポスター第2弾】

ビフォーアフターの写真。

ビフォー:「人生に疲れた会社員」

アフター:「虹色のスーツを着て踊る元会社員」

キャッチコピー:「人生、変えてみませんか?」

【テレビCM(第1バージョン)】

画面に登場するのは、妙にテンションの高いナレーター(声:某有名アニメ声優)。

「♪ニコニコ〜、ニコニコ〜、みんなで一緒に〜♪」

黄色い着ぐるみの「ニコニコちゃん」が画面狭しと踊り回る。なぜか背景では花火が上がり続け、虹が出たり消えたりしている。

「孤独なんて、もう古い!新時代は笑顔の時代!ニコニコ注射で、あなたも今日から人気者♪」

画面には次々と「成功例」が映し出される:


電車でみんなと合唱する元引きこもり

会議室で踊りながらプレゼンするサラリーマン

買い物中に店員さんとハグする主婦

授業中に立ち上がって詩を朗読する学生


CMの最後、ニコニコちゃんがウィンクすると、画面下に高速でスクロールする文字が表示される:

「※個人差があります ※急激な性格変化にご注意 ※交通ルールは守りましょう ※全財産を賭けるのはほどほどに ※知らない人へのハグは相手の同意を得てから ※副作用:過度の楽観、リスク感覚麻痺、常時笑顔、突然の歌唱、理由なき踊り、異常な社交性、睡眠中の笑い声 ※妊娠中・授乳中の方は医師にご相談を(でもたぶん大丈夫♪) ※接種後は人生観が変わる場合があります ※以前の性格に戻りたくなっても戻れません ※でも戻りたくなくなります ※なぜなら幸せだから ※幸せが嫌いな人はいません ※よって問題ありません ※Q.E.D.」

ナレーションが高速で読み上げる中、ニコニコちゃんは踊り続けていた。

【街角インタビュー(CM内)】

記者:「ニコニコ注射についてどう思いますか?」

サラリーマンA(疲れ切った顔):「無料なら受けてみるか。どうせ俺の人生、これ以上悪くなりようがないし」

主婦B(疑い深そう):「どうせ騙しでしょ。そんな都合のいい話があるわけない。でも...最近子供も反抗期で、夫とは会話もないし...」

学生C(嫌そうな顔):「寄生虫なんて気持ち悪い。絶対やだ。友達は『効果あった』って言ってるけど、なんか変だし」

おじいちゃんD(ニコニコちゃんを見つめながら):「でも、ニコニコちゃんは可愛いのう...孫が喜びそうじゃ。最近、孫も『おじいちゃんと話すの疲れる』って言うし...」

【ネット上の反応】

引きこもりE(匿名掲示板):「どうせ陰謀だろ。政府が国民をコントロールしようとしてる。でも俺の人生、もうどうでもいいかも」

陰謀論者F(YouTube):「これは宇宙人の侵略の第一段階だ!みんな気づいて!...でも再生回数が全然伸びない。俺の動画も誰も見てくれない」

医師G(医学論文):「医学的にありえない。寄生虫で性格が変わるなんて...でも、あのネズミの実験は確かに興味深い。学会で発表したら笑われるだろうが...」

【実際の国民の反応】

最初の1か月で接種したのは人口の約10%。主に:


営業職の人(「商談が上手くいくかも。もう断られ続けるの疲れた」)

婚活中の人(「モテるようになりたい。このままじゃ一生独身」)

学生(「友達作りたい。大学でぼっちはもう嫌だ」)

年配の方(「孫とのコミュニケーションが...昔はもっと仲良かったのに」)

主婦(「ママ友の輪に入れない。いつも一人で寂しい」)

会社員(「上司とうまくいかない。転職も怖いし」)


接種会場(区民センター改め「ニコニコセンター」)での光景:

看護師(既に接種済み、常に笑顔):「今日も元気にニコニコ注射ですね〜♪」

接種希望者A:「えーと、本当に大丈夫なんですか?なんか怖くて...」

看護師:「大丈夫大丈夫〜♪私も最初は心配でしたけど、今は毎日がパーティーみたい♪」

既に接種済みの市民B(隣で順番待ち):「そうそう♪私も昨日接種したんですけど、人生観変わりました♪昨日まで『人生って辛い』って思ってたのに、今は『人生って素晴らしい♪』って心から思えるんです♪」

接種希望者A:「でも副作用とか...」

市民B:「副作用?そんなのどうでもいいじゃないですか♪今が楽しければそれでいい♪心配事なんて時間の無駄♪」

看護師:「はい、腕を出してくださ〜い♪ちょっとチクッとしますが、人生が変わる瞬間ですよ〜♪」

チクッ

接種希望者A:「あ...あれ?なんで心配してたんだろう?あははは♪世界ってこんなに明るかったんですね♪看護師さん、ありがとうございます♪ハグしませんか♪」

看護師:「もちろんです〜♪」

ハグ

こうして、接種会場は常にハグと笑い声に包まれていた。

第5章:政府内部のニコニコ感染〜閣僚たちの華麗なる変貌〜

接種開始から2週間後、政府内でも「率先垂範」として閣僚たちが接種を受け始めた。

【安倍田総理の接種前後】

接種前(官邸での記者会見):

「えー、国民の皆様には安心して接種していただくため、私も率先して...正直少し不安もありますが...」

記者:「総理、本当に安全だと確信していますか?」

総理:「それは...佐藤社長が安全だと言っているので...たぶん...」

(この時点では、まだ普通の政治家だった)

接種直後(30分後の記者会見):

総理(満面の笑み):「皆さ〜ん♪ニコニコ注射、最高です♪」

記者たち:「え?」

総理:「なんで今まで心配してたんでしょうね♪人生って素晴らしい♪みんなも一緒にニコニコしませんか♪」

総理は記者席に向かって歩き始めた。

総理:「みなさん、なんでそんなに硬い顔してるんですか♪一緒に歌いましょう♪♪にっぽん〜、ちゃちゃちゃ〜♪」

記者A(困惑):「そ、総理...これは記者会見ですが...」

総理:「記者会見?そんなかしこまったことしないで、みんなでお茶でも飲みましょう♪お茶請けにニコニコ注射はいかがですか♪」

【各大臣の接種後変化】

田沼厚生労働大臣(接種前:統計オタク)

接種前:「統計によりますと...」

接種後:「統計なんてどうでもいい♪みんな元気ならそれでいい♪数字より笑顔♪」

金欠財務大臣(接種前:心配性)

接種前:「予算が...税収が...国債が...」

接種後:「お金なんてあの世に持っていけない♪今を楽しもう♪みんなでお寿司食べに行きませんか♪国のお金で♪」

戦争嫌男防衛大臣(接種前:平和主義者)

接種前:「防衛費削減を...」

接種後:「戦争反対♪みんなで仲良く♪敵国の皆さんもニコニコ注射しませんか♪一緒に地球防衛しましょう♪」

国際恥子外務大臣(接種前:心配性)

接種前:「諸外国からの批判が...」

接種後:「批判なんて愛のメッセージ♪みんな日本を心配してくれてるのね♪ありがたい♪」

【閣議の様子(接種後)】

議題:「来年度予算について」

総理:「みなさ〜ん♪今日も素敵な閣議ですね♪」

全大臣:「はい♪」(ハモって答える)

総理:「予算の話ですが、お金なんてどうでもよくないですか♪」

金欠大臣:「そうですね♪国民が笑顔なら、赤字でも黒字♪」

田沼大臣:「そうそう♪統計上、笑顔は無限大の価値があります♪」

総理:「じゃあ、予算は『愛』で計算しましょう♪」

全大臣:「賛成〜♪」

官房長官(まだ未接種):「あの...総理...予算は数字で...」

全大臣:「官房長官も一緒にニコニコしませんか♪」

官房長官:「いえ、私はまだ...」

総理:「一緒に注射しましょう♪今すぐ♪」

こうして、閣議は毎回「ニコニコ注射推進会議」になってしまった。

【国会答弁の変化】

野党議員:「総理、予算の根拠を示してください」

総理(接種後):「根拠は愛です♪愛に説明は必要ありません♪」

野党議員:「それは答弁になっていません」

総理:「答弁なんて古い概念です♪今は『愛弁』の時代♪一緒に歌いませんか♪」

総理は本当に歌い始めた。

「♪よさんは〜、あいで〜、きまるのさ〜♪」

与党席から拍手と歌声。

「♪そうだ〜、そうだ〜、あいこそすべて〜♪」

議長(まだ未接種):「総理、お静かに...」

総理:「議長さんも一緒に♪」

総理は議長席に向かって踊りながら近づいていく。

議長:「総理、席にお戻りください」

総理:「席なんて関係ない♪みんなで輪になって♪」

こうして、国会は完全にカオスと化した。

NHKの国会中継を見ていた国民の反応:

接種済み市民:「総理、楽しそう♪国会って明るくていいですね♪」

未接種市民:「これ...政治?コメディ番組?」

海外メディア:「Japan's Parliament has turned into a musical」

第6章:ニコニコ・メディア革命〜報道という名のエンターテイメント〜

メディア業界も大混乱していた。

【NHKニュース(キャスター接種後)】

アナウンサー(満面の笑み):「おはようございます♪今日も素晴らしい朝ですね♪」

「トップニュースです♪昨日、東京で大規模火災が発生しましたが、みんなで協力して消火活動♪まるでお祭りのような賑わいでした♪」

画面には、確かに火事現場で笑顔で消火活動をする人々が映っている。

「被害に遭われた田中さんにお話を伺いました♪田中さ〜ん♪」

田中さん(接種済み、焼け跡の前で笑顔):「家は燃えちゃいましたけど、消防士さんたちとお友達になれたし、近所の人たちとも仲良くなれました♪いい経験でした♪」

アナウンサー:「素晴らしいですね♪続いて交通事故のニュースです♪」

「昨日、渋谷で多重事故が発生しましたが、みなさん病院で新しいお友達ができて大喜び♪事故現場では、なぜか通行人も一緒に踊り出すという心温まる光景が見られました♪」

画面には、救急車の周りで手をつないで踊る人々。

「続いて株価です♪今日も大暴落ですが、『安く買えるチャンス♪』とトレーダーの皆さんは大はしゃぎ♪」

東京証券取引所の映像:トレーダーたちが画面を見ながら拍手している。

「『全財産なくなったけど、借金してでも買いたい♪』という声も♪素晴らしい投資マインドですね♪」

【民放バラエティ番組】

司会者(接種済み):「みなさ〜ん♪今日のゲストは、ニコニコ注射を拒否し続ける頑固者の皆さんです♪」

ゲスト席には、困り顔の未接種者たちが座っている。

司会者:「なんで注射しないんですか〜?みんな幸せになってるのに♪」

未接種者A:「いや、明らかに異常でしょう...みんな変になってる」

観客席(全員接種済み):「ブ〜♪」「一緒に楽しもうよ〜♪」

司会者:「観客の皆さんはどう思いますか〜?」

観客:「みんなで注射〜♪」「幸せになろう〜♪」

司会者:「では、今から注射タイムです♪」

未接種者A:「ちょっと待って、これテレビでしょ?強制的に注射するの?」

司会者:「愛の注射です♪痛くないですよ〜♪」

看護師がステージに登場。

未接種者A:「やめて!」

観客:「頑張れ〜♪」「愛の注射〜♪」

(実際に番組中に接種が行われ、その様子が生放送された)

【ワイドショー】

コメンテーター(接種済み):「未接種の方々の気持ちもわかりますが、みんな幸せなのに反対する理由がわからない♪」

アナウンサー:「そうですね♪専門家の先生はいかがですか?」

精神科医(接種済み):「医学的に見ても、笑顔は健康にいいです♪みんなが笑顔なら、世界平和♪」

弁護士(接種済み):「法的にも問題ありません♪むしろ幸福追求権の実現♪」

評論家(接種済み):「これからの時代は、悲しみなんて古い感情♪みんなでハッピーに生きましょう♪」

【報道ステーション風番組】

キャスター(まだ未接種、最後の砦):「しかし、この現象を冷静に見ると、明らかに異常事態では...」

コメンテーター(接種済み):「キャスターさん、『異常』なんて失礼ですよ♪みんな正常に幸せなんです♪」

キャスター:「でも、リスク管理能力が著しく低下して...」

コメンテーター:「リスクなんて考えすぎ♪人生はアドベンチャー♪」

キャスター:「これは生物兵器による国家乗っ取りかもしれません」

コメンテーター:「陰謀論は古い♪今は『愛謀論』の時代♪みんなで愛し合いましょう♪」

番組終了後、キャスターの周りを接種済みスタッフが囲んだ。

スタッフA:「キャスターさんも一緒にニコニコしませんか♪」

キャスター:「いえ、私は冷静に...」

スタッフB:「冷静より温かい方がいいですよ♪」

スタッフC:「注射しましょう♪今すぐ♪」

キャスター:「やめてください!」

(その後、このキャスターも結局接種されることになる)

【インターネット】

未接種者のブログ:「この国は狂っている。誰か正気に戻ってください」

コメント欄:

「ブログ主さん、そんなに暗く考えないで♪」

「みんなハッピーなのに、なぜ反対するの?」

「注射すれば楽になりますよ〜♪」

「一緒に踊りませんか♪」

「愛を感じて♪」

Twitter(現X):

未接種者:「#国民全員正気に戻れ」

接種済み:「#みんなでニコニコ ♪♪♪」

YouTubeで「ニコニコ注射の真実」という動画を投稿した陰謀論者も、結局コメント欄で接種済みユーザーに説得され、最終的に「みんなニコニコしてるし、俺も注射してみる」という動画を投稿した。

こうして、メディアは完全に「ニコニコ・プロパガンダ装置」と化していった。

残された未接種者たちは、もはや情報源を失い、孤立していくのだった。

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