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ドルチェとともに

作者: enishi

 川波ローアは16歳。髪はブリーチでクリーム色に染めていて右耳にはピアスがたくさん。こんな格好で毎日音楽学校に通っている。ローアはドイツ人の母親を持つ。


 ここは古いCDショップ。馴染みの店で狭い店内には数千枚のCDが所狭しと並んでいる。メジャーなものからインディーまでなんでもある。

 近頃はインターネットで曲も買えてしまうが、店に行かないと出会えないCDもあることからバイト代が入ると必ず足を運ぶ。この日も特に買うものは決めておらず、ぷらぷらと店内を見ていたら

 ネームのカ行のコーナーに川波ローアというアーティスト名が目に入った。


「え?マジ!?私と同姓同名なの?」

 こんな偶然もあるのかとも思い、CDを手に取る。そこにはカッコイイ大人の女性がピンクのハートを抱いているジャケットが写っていた。好奇心に駆られて買ってしまい家に帰って聴いてみた。

 そのCDには優しい静かなメロディーで生きづらさや日々の心の痛みなどの叫びが唄われており、ローア自身もその歌詞が刺さるものがあり何度も聞いた。


 何度も聞くうちに自分のギターでも弾きたくなり、音楽学校で練習していると、友達のユキが曲を聞きつけてきた。


「ローアちゃん、その曲誰の?いい曲だね」

「最近見つけたお気に入りなんだ!なんと、私と同姓同名のアーティストなんだよ!今度CD貸したげるよ」


 公園のベンチに座りギターで川波ローアの曲を歌ったりもした。数人の子供たちに犬を連れたおじいさんが物珍しさから寄ってきて、歌い終えたローアに少しばかりの拍手までもらえた。


 ある日のこと、パパの運転する車内で外の景色を見ながら窓ガラスに頭を預けて、何気なくラジオに耳を傾けていたローア。


「ここでメールを1通紹介します。ラジオネームドルチェさん。私のお気に入りの曲は川波ローアさんのHeartです。」


「!!」

 そのワードが耳に入ったとたんに、頭を上げて目を見開くローア。


「彼女は色んな理由で生きづらさを抱えていたけれど、そんな苦難とともに今でも地元でアーティストとして活躍中。私が悩んでしんどい時に何度もHeartを聴いてすごく励まされました。大好きな曲なので皆に紹介したい1曲です。」


 メジャーではないけれど自分が好きな曲に共感してくれる人がいて、心が包み込まれるような暖かな気持ちになったローア。車内には聴きなれた優しいメロディーが流れていく。


「フフッ」

 と笑うローアは「私も大好きです!」心の中で想った。

1000文字ショートに再び挑戦しました。リアクションや感想、評価を切に待ってます。


後書きまでお付き合いくださって有り難うございました!

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