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記憶の中だけに……


青い海と空で行われた大きな戦が終わった後の100年程前、珊瑚礁が隆起してできた島々の一番大きな島に鉄筋コンクリートの学校が造られた。


屋上がある2階建ての学校。


1階には音楽室があって、授業のある日には子供たちの歌声が聞こえていた。


2階は6〜7歳の幼子から14〜5歳の少年少女が、年齢毎に分けられ学ぶ教室が連なっていた。


夜の帳が下りると、子供たちの声で満ち満ちていた校舎の中は静まり返る。


夜、空がキラキラと瞬く星々で埋め尽くされる頃になると、島で一番高い建物の学校の屋上には若者たちが集まって来た。


満天の星空の下、将来の夢を話す青年たちや愛を囁き合う恋人たちが時間が経つのも忘れ、遥か彼方の大海原の東の空が明るくなるまで語り合う。


時が経ち、夢を愛を語り合った若者たちが島を出て本土に移住するようになると、学校に通う子供たちの姿が減って行き、全クラスの児童生徒の数を合わせても学校が造られた頃の十分の一程の人数になっていた。


その後も子供たちの数は減り続け何時しか学校として建てられた建物は学校として使われず、島の集会所や島に住む者たちの共有物の保管場所として使われるだけになる。


たまさかに島に住む者以外が学校だった建物に来る事もあった。


懐かしげな表情で建物を見る大人たちの顔は、音楽室で歌声を響かせていた子供や屋上で夢を語っていた青年の面影がある。


地球温暖化の海面上昇で、島に最後まで残っていた年寄りたちも島を出た。


島は段々と海に侵食され、今、学校の屋上が海の下に消える。


島が、学校が、此処に存在していた事を示す物は、島に住んていた者たちの記憶の中だけになった。






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― 新着の感想 ―
記録や記憶は残るとしても、やはり姿かたちが消えるのは淋しいですね。
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