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彼女の春巻き  作者: kuron
7/8

彼女の春巻き(7)


明日は僕の誕生日。

妻が「何か欲しい物ある?」と聞いてきた。


ーー珍しい。


ここ数年は僕の誕生日が過ぎた後、「あっ、そういえば先週誕生日だったんだね、おめでとう」なんて言われるのがデフォだったのに。


(欲しい物、欲しい物か……)


そう言えばもう財布がボロボロだな。いや、それよりもいい加減冬物のコートを買い替えた方が良いかも?


しばらく考えて僕は言った。


「えっと、『春巻き』が食べたいかな」


「そんなのでいいの?」


妻は少し驚きながらも快く了承してくれた。


手間が掛かるからーーと、断られると思っていたのに。余りにアッサリと了承された事に、僕は何だか拍子抜けしてしまった。


(何年……いや、何十年ぶりだろう)


あんなに美味しい『春巻き』だが、実は野菜嫌いな子供達には人気が無く、筍たけのこの僅かなエグ味が嫌いと言われた日から、『春巻き』が食卓に登場する事は無くなっていたんだ。


(もう少し大人になれば、あの美味しさにも気付くんだろうけど……)


ーーともあれ、つまり今回妻が作る『春巻き』は、完全に僕だけの為に作ってくれる『僕専用春巻き』と言う事になる。


そう考えると、「年寄りへの階段を一段登る」只それだけの虚しかった誕生日が、何だか待ち遠しく思えてくるのだから不思議なものだ。

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