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*** 18 決闘決着と鼻魔導 ***

 


「よしドチョンボよ!

 まずは剣を得意とするそなたが奴を攻撃せよっ!」


「はっ!」


 ドチョンボくんは、魔力の限界まで身体強化の魔導をかけ、学校側から特別に使用を許可されて大使館から届けられた鋼鉄の剣を振りかぶってレオニーに向かって走って行った。


 対するレオニーくんはその場を動かずに微笑んでいる。


「むぅんっ!」


 レオニーくんはこの攻撃に対して全く対応しなかった。

 ドチョンボの持つ剣がレオニーくんの頭に当たる。


 バキィィィ―――ン!

 折れた剣の先がくるくると宙を舞っていた。


「ああっ!

 伯爵閣下から下賜された家宝の剣がぁぁぁ―――っ!」

(実は伯爵家領兵長などが持つふつーの剣。

 伯爵閣下は自分が下賜してやれば一族の者はそれだけで感激すると思っている)


 レベル数億もの防御結界を張っているレオニーくんにただの鉄剣で傷などつけられるはずもない。

 現代地球の戦車砲やたとえ地対地ミサイルの直撃を受けても無傷であっただろう。



「こ、こここ、この野郎ぉぉぉ―――っ!」


 ドチョンボくんは怒りに任せてレオニーくんに殴り掛かって行った。


 だがもちろん……


 ボキボキボキ……


「うぎゃぁぁぁ―――っ!」


 さすがは阿呆のドチョンボくんである。

 鋼鉄の剣でも傷1つつかなかったレオニーくんに素手で殴りかかるとは。

 いくら身体強化の魔導をかけていても、身体防御の魔導をかけていないとこうなるのだ。

 身体強化で筋力が上がった分、骨格がその力に耐えられなかったのである。

 同時に複数の魔導をかけることの出来ない未熟者の末路だった。


 ドチョンボくんの手骨と前腕は開放骨折を起こしてぐしゃぐしゃになっている。

 まあ鋼鉄より硬いものを素手で思いっきり殴りつけたらそうなるよね♪


 レオニーくん側の応援席からは大歓声が上がっている。



「そ、その方ら!

 火の魔導が得意と申していたな!

 2人同時にファイアーボールを叩き込めぇっ!」


「「 はっ! 」」


 レオニーくん目掛けてファイアーボールが2発、ヒトが歩く程度の速度で飛んで行った。


 ぽふん、ぽふん。


 だがファイアーボールはレオニーくん(の結界)に当たったところで消滅している。


「ええい!

 ファイアーランスの魔導を使えっ!」


「で、ですが殿下、ファイアーランスは中級魔導です!」


「中級魔導など使えばルール違反となって最悪我らは退学にっ!」


「その時は我が国の子爵家当主にしてやるっ!」


「「 おおっ! 」」


「「 ならばファイアーランスっ! 」」


 2条の火で出来た槍が空中に形成され始めた。


(ったく……

 少し懲らしめてやるか……)


「反射結界……」


 レオニーくんは3人を球形の結界で覆った。


「「 発射ぁっ! 」」


 ズドドドドド……


「「「 ぎゃぁぁぁ―――っ! 」」」


 狭い反射結界の中でファイアーランスが跳ね回り始めた。

 その射程距離300メートルほどが終わるまで結界内部を反射しながら飛び跳ね廻っている。


「出たぁぁぁ―――っ!」


「レオニー先生お得意の反射結界っ!」


「久しぶりに見るなぁ!」


「いつ見てもエゲツない魔導だ……」



 3人はすぐに黒コゲになって倒れていた。

 3人とも髪の毛も眉毛も睫毛も鼻毛も、もちろんチ〇毛すらも焼け落ちており、高熱で毛根すら死滅している。


 男爵家係累者2人は12回ほど死んだらしくもはや意識も無い。

 だが、バフン王子はどうやら王家秘蔵の上級魔導具で結界を張っていたらしく、3回しか死んでいないようだった。


「こ、こ……、こ……、この……無礼者め……」


 バフン王子がよろよろと立ち上がった。

 腰につけた辛うじて焼け残ったポーチから小さな筒状の魔導具を取り出し右手で構えようとしている。


「し、死ね賤民め…… 上級雷撃の魔導具だ……」


「おいおい、攻撃魔導は初級までじゃなかったのか?」


「あれは魔導の話だ…… これは魔導具だから問題は無いのだ……」


(あー、こいつやっぱアホだわー、魔導具は『魔導を発する道具』だから上級魔導具も上級魔導の範疇に入るのに。

 それにまだ反射結界の中にいるのにあんなもん使ったら、いくら命の加護の魔導具があっても本当に死ぬかもしらんぞ。

 仕方ねぇ)


『爆裂……』


 どーん!


「ぎゃぁぁぁ―――っ!」


 バフンくんの手にあった雷撃の魔導具内の魔石が爆裂した。

 ついでにバフンくんの手首から先も爆裂に巻き込まれて四散している。

 因みにこの『爆裂の魔導』は対象の魔石を爆裂させるものであり、放たれる魔導エネルギーは大したことがない。

 まあ爆弾における雷管のようなもので、分類上は初級魔導になるのでルール違反でもない。

 爆裂エネルギーの大半は魔石に内蔵されていたエネルギーなのである。


「痛い痛い痛いよぉぉぉ―――っ! ママぁぁぁ―――っ!」


 35歳おっさんのイタい叫びに会場はドン引きである。

 傷口からは骨も肉も神経もハミ出ており、ぶら下がった血管からはぴゅーぴゅーと血が噴き出ていた。


「4人は戦闘続行不能と見做す。

 この決闘、勝者レオニーっ!」


 レフェリーの宣告に会場は再び大歓声に沸いた。


「痛い痛い痛いよぉぉぉ―――っ! 

 そ、そこな賤民共っ! は、早くポーションを寄越せぇぇぇ―――っ!」


 レフェリーが懐からポーションを取り出した。


「本当にポーションをかけていいんだな?」


「あ、当たり前だぁぁぁっ!」


「よし」


 レフェリーをしていた教師がバフンくんの手にポーションをかけると、流血も止まり傷口には薄っすらと皮膚も張り始めた。

 どうやら痛みも止まったらしい。


「はぁはぁはぁはぁ……

 よ、余の手が…… 高貴な余の手がこんな姿に……

 おい賤民教師っ!

 すぐに超級治療魔導で余の手を元通りにせよ!」


「いやそれは無理だ」


「な、なぜ無理なのだぁっ!」


「まさか知らないのか?

 超級治療魔導による四肢欠損再生は、傷口が開いた状態か自然に傷が塞がった状態でなければ使えん。

 ポーションの影響が抜けるのには最低3か月はかかる。

 だからポーションをかけてもいいのか聞いたろうに。

 そんなことも知らんとは……」


「な、なんだと!」


「だがまあウインドカッターか剣で腕の先を2センチほど切り落とし、それから超級治療魔導をかければ手は元通りになる」


「な、ならば早く超級治療魔導を使えっ!」


「いや超級治療魔導を使える大魔導士さま方は今大陸中を廻って四肢欠損の治療に当たられている。

 お帰りになられるのは半年後だ」


「な、ななな、なんだとぉっ!」



「先生、わたしは超級治療魔導が使えますが」


「おお、さすがは入試首席だな」


「ならばすぐに使え賤民っ!」


「じゃあ跪いて『どうか超級治療魔導をお願いしますレオニーさま』と言え」


「ふ、ふざけるな賤民っ!」


「じゃあ半年待つんだね♪」


「ぬががががが……」


「そうそう、俺が勝ったんだから約束通り非殺傷性魔導を4人にかけるぞ。

 安心しろ、痛くも無いし後遺症も残らんから」


 レオニーくんが手を挙げると4人の体が光に包まれた。


「魔導の発動は明日からだな」


 レオニーくんは再びの大歓声の中引き上げていった。




 バフン王子と男爵家縁者2人は、決闘に於けるルール違反の罪で半年間の停学処分を喰らった。

 どうやら伯爵家縁者のドチョンボくんもこれに付き合うことにしたらしい。


 翌日、4人はテント村の食堂で朝から管を巻いていた。


「くそうっ!

 あの賤民のせいでまた恥をかいてしまったではないかっ!

 ったく高貴な身分に対する敬意というものは無いのかっ!」


「お、王子殿下っ!

 そ、そのお顔はっ!」


「そ、そういうそなたの顔はっ!」


 そう、バフンくんの鼻は6センチほども伸びて下に垂れ始めていたのである。

 ドチョンボくんは2センチ伸びていた。


 これこそがレオニーくんの新作、恐怖の非殺傷性鼻魔導であった。


『余』『王子』『殿下』『高貴』『王族』『貴族』『平民』『賤民』『身分』などというトリガーワードを発すると、一言ごとに鼻が2センチ伸びるという恐るべき魔導だったのである!


 貴族家縁者3人の鼻はその日のうちに30センチに達した。

 バフンくんの鼻は1メートル近くになっている。





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