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*** 13 国別各種ランキング ***

 


「それじゃあ収納の超級魔導を試してみようか」


 レオニーくんは今も顔を真っ赤にして拳を握っている伯爵家縁者ドチョンボを指さした。

 途端にドチョンボが消える。


「「「 !!! 」」」


「次は転移で移動させてみよう」


「うひぃぃぃ―――っ!」


 大教室の高い天井付近からドチョンボの情けない悲鳴が聞こえた。

 教室の全員が口を開けてそれを見上げている。

 いや少数の初等部出身者たちだけはにやにやしていた。


「これは転移の魔導に念動の魔導を組み合わせて空中に浮かせているものだ」


「そ、そんなことが出来るわけは……」


「はははは、今あのおっさんは実際に浮かんでるだろうに。

 あんた自分の目玉すら信用出来ないのか?

 それにこんなことも出来るようになるんだぞ」


 レオニーくんがその場から浮き始めた。

 そのまま空中を飛び廻っている。


「「「 !!!!!! 」」」


 レオニーくんは席に戻り、ドチョンボも床に戻してやった。

 おっさんは蒼い顔をしたまま床に這い蹲っている。



「それからな、あんたさっき『我が国には3万もの兵力があるから大国だ』って言っただろ。

 それって、100年前の内乱をこの魔導学園国に鎮圧された時に課された制限人数だって知らないのか?」


「えっ……」


「あのな、軍人って破壊するか殺人を行うか略奪するかしか能が無いだろ。

 もしくは侵略軍を撃退するとか。

 まあそれも破壊と殺人のうちだが。

 だから軍人の食い扶持は全て軍人以外の民が稼いでやらなきゃなんないんだ。

 それで軍人が多すぎてそれ以外の民が少ないと軍人が喰っていけなくなるだろ。

 でも王族はさっきのあんたみたいに『我が国は軍人が多いので大国である!』って自慢したいからどんどん軍人を増やそうとするんだ。

 そうすると軍人や民が飢え始めるから、他国に侵攻して食料を奪おうとするんだよ。

 それが成功すれば軍の食料が得られて自分も自慢出来るし、失敗して兵が死ねばその分兵の食い扶持が減るからOKだし。


 そんな侵略をしないでも維持出来る保有兵力の限界が人口の5%までなんだ。

 だからレオニーダス・フェリクス魔導学園国は、この国に侵略してきて撃退されたり、他国を侵略しようとしてこの国に鎮圧されたりした国のすべてにこの『5%制限』を課したんだ。

 だから今ではこの惑星上800の国々の全ての軍が人口の5%以内に制限されているんだよ。

 もちろん貴族の領軍も含めてだ。

 また、如何に人口の多い国でも国軍領軍近衛軍合わせて兵数の上限は10万人に制限されている」


「う、うそだ!

 そんなことは我が国の誰も口にしていなかったぞ!」


「あのなぁ、王族や貴族って見栄張りだろ。

 だから自分や自分の国にとって恥ずかしいと思ったことは絶対に口にしないし、歴史書にも書かせないんだよ。

 だからそのうち誰も知らなくなるんだぞ」


「だ、だがもしその国が軍を拡大し始めたらどうやってそれを知るのだ!

 それにどうやって軍備拡大を防いでいるというのだ!」


「そんなもん、『監視の魔導』ですべての国を監視してるからに決まってんだろ」


「!!!!」


「あんたの国だってばっちり監視されてるしな。

 それにもしあの制限を忘れたり故意に忘れたふりをして軍を拡大した場合には、この国の大使館から軍備制限の約定書の写しが届けられるんだ。

 それでも軍の拡大を止めなかったら、国王と宰相と軍務大臣を収納の魔導で異次元の牢に転移させるんだよ」


「「「 !!!!!! 」」」


「そうして3か月ばかり異次元に放り込んでも反省しなかったら、今度は王族と上級貴族全員を放り込む。

 それでも止めなければ国王は異次元に一生隔離だ。

 異次元ではもちろん生きて行けるだけの食事は出るが、実に質素なもので酒も出ない。

 過去2500年間、こうした軍備拡張過多の罪で異次元に収監された王や宰相や軍務大臣はのべ10万人もいるんだぞ」


「「「 !!!!!! 」」」


「まあ、ほとんど全員が慢性アルコール中毒の禁断症状に苦しみ、泣きながら酒を呑ませてくれと叫び続けるそうだがな」


「「「 ………… 」」」


「ということで、軍の大きさとはその国の威信を表さないんだ。

 むしろ軍備制限の約定を知る者にとっては屈辱の対象だろう」


「あぅ……」


(バフンくんの威信:さらに急落)


「もしあんたの国が軍を拡大して隣国に攻め込もうとしたなら、たとえどんな大義名分を立てようと王と宰相と軍務大臣は一生牢の中だ」


「だが、王族貴族一丸となって陛下の勅命である祖国統一を果たすぞ!」


「それでも侵略計画を止めなければ王族全員と貴族家当主と嫡男も全員牢の中だ。

 もちろんあんたもだな」


「!!!!!」


「牢はすべて独房だから、あんたは最低10年は1人で暮らすことになるんだぞ」


「あぅあぅ……」


(バフンくんの威信:さらに下げ足を速める)



「それからあんたさっき『8万平方キロもの領土を持っているから我が国は大国だ』って言ったよな」


「そ、それがどうした!

 明らかに大国であろう!」


「それじゃあこの惑星上の国の平均国土面積を知ってるか」


「な、なにっ……」


「このレオニーダス・フェリクス魔導学園国を除いた799の国々の平均国土面積は16万5000平方キロだな」


「!!!」


「だからあんたの国なんか平均の半分以下だろうが」


「がぎぐぐぐぐ……」


(バフンくんの威信:続落)


「あんたの国は国別の国土面積ランキングだと確か800か国中700番目ぐらいだったか」


「なんだそれは!

 それになぜ我が国の順位まで知っているのだ!」


(こ奴まさか我が国を調べる間諜か!)


「こうした地政学は魔導と並ぶ俺の趣味だからな。

 ほら、こういう本を見たことはないか?」


 レオニーくんの手に雑誌のような本が出て来た。


「な、なんだその本は!

 それにどこから出した!」


「これは昨年度の『国別各種ランキング』という本だな。

 それにもちろん出したのは俺の収納庫からだ」


「な、なに……」


(こ、こやつ個人用収納庫まで持っているのか!)


「えーっと、あったあった、あんたの国の国土面積は800か国中705位だ。

 軍備は…… 720位で、国富は731位か。

 こんな数字でよく大国とか言えたもんだ。

 大国じゃあなくって大ボラ国の間違いだろ」


「ぐぎぎぎぎぎ……」


「あんたは国ではこんなことを聞いたことも無いだろう。

 それぐらい国や王族っていうものは見栄張りで嘘つきなんだよ。

 まあほとんど全員が言われた通りのことを信じ込んでるだけなんだろう。

 王や宰相や教師が『我が国は大国である!』と言ったから我が国は大国なのである!ってな。


 あんたも王族なら国に帰って政治に関わることもあるだろう。

 でもそのためにはまず国の本当の姿を知ることから始めなきゃなんないんだぞ。

 国で政治を行うなら、そのためにまず必要なのが自国の把握だろうに。

 その政治のためにこの『政治概論』の講義を取ったんじゃないのか?」


「ぬがががが……」


(バフンくんの威信:もはや暴落)


「ついでに教えてやろう、あんたこのレオニーダス・フェリクス魔導学園国の国土面積を知ってるか?」


「な、なにっ……」


「1500万平方キロだ。

 人口は4億だな」


「!!!!!!」


「これこそが本当の大国だろう。

 なんせこの国以外は平均国土面積16万5000平方キロだし、その中で最大の国でも35万平方キロでしかないからな」


「き、キサマ先ほどこの国は2500年前の建国以来、一度も他国に侵略したことが無いと言ったろう!

 それだけの領土を持つ国が他国の土地を奪わずにいたわけは無かろうが!」


「いや、本当にこの国は他国を侵略したことはないんだ」


「う、嘘をつけっ!」


「この国がある地は4500年前まで草も木も生えない砂漠だったんだぞ?」


「えっ……」





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