第17話
ス、と立ち上がる『何か』
それは本当に、当たり前のもの過ぎて、気にされないものだったのに。
その部屋には『何か』しかいなかった。正確に言い表すなら、ゆーのの中身がその『何か』だった。
『何か』は自分の力を確認するかのように手を握りしめたり開いたりしている。
『「あー、なんで俺がこいつになってるんだ?…ま、とにかくご主人様の願いをかなえてやるとすっか。」』
その『何か』はそうつぶやくと黒い何かに吸い込まれるようにして消えていった
「…?」
「どうかしました?輝夜」
「ゆーの様の気配が消えました」
「は?嘘、でしょう?だって私たちは侵入者をすべて処理しきれているはずです。そんな馬鹿な事あるはずが」
「もう一つ、あるでしょう?」
「っ…まさか、お嬢様が自身の意思で気配を隠し行動していると?」
「それしかないです。とにかく早く安否の確認をしに行かなければ」
「了解です。私がやってますのでどうぞ、輝夜」
「いいのですか?」
「新参者の私が行くよりあなたが行くほうがゆーの様は喜ばれるでしょうし。」
自分で言っておいてなんか傷つくんだけど…
「ありがとうございます。」
顔は冷静だがそのあとの走りの速さを見ればどれだけ行きたかったかがわかってしまう
あー、私もゆーの様のご尊顔を拝見しに行きたかったのですが
「お前ら、私の不満を晴らす糧となれ。退屈させるなよ、ゴミども」
さぁ、本気を出していきますか
歩いていくほうがなんか楽しそうだな
そう思った『何か』は先ほどの黒い何かから出てきていた
人間てよく分かんねぇ。なんでこんな無駄に長くて広い廊下を用意するんだ?少しぐらい狭くしたって十分広いじゃねぇか。
なんだ、あれ
「ゆーの様!」
ゆーの…?あぁ、こいつの名前だったな。で、確かあいつがこいつに拾われた人間か。あれは興味深いものだったな
「ゆーの様…?お前、いったい何者だ」
さすが専属メイドの筆頭さんだ。
『「俺?俺かぁ、なんだろうな」』
「ふざけないでください」
ふざけてなんていない。お前らが俺の名を忘れたからだ。
『「俺の名前がわからないのはお前ら自身のせいだろうが。責任転嫁するな、馬鹿が」』
「どういう意味ですか…とにかくゆーの様を返せ」
『「ゆーのの自我じゃないのは俺もよくわっかんねぇよ」』
「なん、ですって」
アーこいつの相手めんどいな。行くか
黒い何かに『何か』は入った
「っあ、待て!」
無視。
「じぃ、どうするべきだと思う?
「あんな大口たたいていたのに何を他人任せな思考をしてるんだよ、あいり」
「しょうがないじゃん。でも、ゆーのの自我がなぜか薄くなってるのは確かだよね」
「そうだな。ゆーの、無事かな」
「じぃ、さっさと屋敷まで案内しろ」
「いいですよ、こうすけ様」
「様をつけんのやめてくんない?なんか調子狂うわ」
「いいですよ、こうすけ」
「あーもう。はいはい。とにかく行こうぜ」
じぃの後ろから『何か』が出てくる
「は?」
「ゆーの、なの?」
その声につられて思わず後ろを振り返るじぃ
「な、姫様…」
この方は、本当にゆーの様なのか?
『「あ?おま…あぁ。じぃ、か」』
「お前はだれだ」
ものすごい威圧が放たれ、3人は後ろへと一歩下がる
『「あぁ…俺、俺か?俺はお前らが崇め讃えている『何か』だ」』
「ミファイアか?」
「『ミファイア?それは俺の名前じゃない。お前らが勝手につけた名前だろうが」』
「ミファイアなんですね…」
正直、勝てる気がしない
「ミファイア?」
「ミファイアはリメイアル、無異の元祖。つまり、すべての能力をつかさどるものを指す【名前】です。」
「名前…そんなもの存在したんだね」
「文献にも乗ってなかった」
「それは極秘事項ですから。知らなくて当然です。ミファイアは世界唯一無二の万能能力者。神…の一柱ですからね」
『「あ~話し合い、終わったか?」』
「それで、ミファイア様、あなたはなんでここに?」
『「こいつが復讐を、破壊を、求めたから。自分の大切な人間が次々と消えていき、殺され、忘れてしまった【友達】…それさえも重要機密保管庫で死んだという事実が見つかった。そんなこいつが、ゆーのが願ったのが復讐であり、世界の破壊だ」』
「そんな、ゆーのが」
「嘘だろ…おい」
「そんなことを望まない。ゆーのはッあいつは、優しいんだ」
『「そんなこたぁ言われてもな、実際願われたんだ。力を貸すのが当然なんだが、」』
「…なんだ?」
『「こいつの意思ですべてを制するのが通常。俺がでしゃばるこたぁこれまでなかった。だが、今回俺が表に出てきた。俺はいつもそばにいるだけだったのに、な」』
「ゆーの様に、何かあったと?」
「ゆーの、目を覚ましてよッッねぇっ」
あいりは唐突に叫んだ、その得体のしれないものに、元はゆーのだった存在に
「なんで、こんな風に、私たちが来なかったせいなの?私たちがここに行っちゃったせいなの?ねぇ、答えてよっ」
『「はぁ?しらねぇよ、そんなお前らごときの感情。」』
「なら、なぜここに来たんですか?」
世界を壊すためならもっと最適な場所がある。そんな候補の場所を捨ててまでここを最初に壊す必要性はない。なら、ゆーのの感情に影響されてここに来たというのが妥当だろう。なら、この質問にはカルア様に会いに来た、もしくは懐かしい気配を感じたから、というのが答えに近いものとなるはず。
『「ここを壊すためだが?」』
迷うことなく、一つの答えをミファイアは提示した
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