第二話
「新兵さん、Ifxanaへようこそ!」
最初に表示されたメッセージはこれだった。おそらくチュートリアルなのだろう。灰色を基調とした制服らしきものを着た女性が画面で喋っていた。
「私の名前はカロウ、今後あなたのナビゲーターを務めさせていただきます。よろしくお願いしますね」
彼女は当然NPCに分類されるため意思疎通を図るどころかこちらから話しかけることもできない。まぁ当たり前のことだが。そこまで凝っているならこのゲームの存在をリフィは知っていただろう。
「国内についての説明をさせていただきますね。実はこのゲーム、国だからといって必ずしも内部が統一されているとは限りません。国内にはプレイヤーによって設立されたリーグという組織が複数存在します。新規プレイヤー、つまり新兵さんたちはこのリーグに所属し、他のリーグと同盟を組んだり戦争をしたりすることができます」
国の選択時にかなりの数があったので国家は一枚岩だと思っていたがさらに内部が細分化されているらしい。これはたしかに戦争という設定に沿ったものなのかもしれない。となると反乱システムなどもありそうだ。
「ちなみにリーグに所属しないという選択肢もあります。ただその場合はリーグの庇護を受けない野良の兵士となるため、リーグの兵士から狙われることもあるので注意が必要です。また、自らリーグを設立することもできます」
リーグは新規プレイヤーでも設立できる、ということは非常に多くのリーグが存在するのではないか。そう思っているとリーグの詳細な説明を聞くか、それを飛ばして次の要素説明に移行するかの選択肢が表示された。飛ばした結果後で見られないとなっては困るのでリーグの詳細説明を選ぶ。
「リーグにはリーダーである盟主が存在します。メンバーは盟主をトップとしてリーグを運営していくということですね。リーグメンバーは幹部、精鋭兵、そして補給兵で構成されます。これらは盟主によって任命されるものです。またこれらとは別に盟主は幹部の中から特別な役職に任命するプレイヤーを選ぶことができます。盟主の補佐をする副盟主、戦争行動の際に無類の強さを誇る将軍、他リーグとの外交に携わる大使です。これらの役職は必ずしも置かれるわけではなく、盟主の意思によって任命・解任されるものとなっています」
ということはリーグは盟主の独裁制と言える。盟主によってリーグの特色も変わってきそうだ。
「リーグの説明は以上となります。より詳細な説明はリーグに所属、あるいはリーグの設立を行った際にさせていただきます。次に国家間の戦争について説明させていただきます。まず、国家にはその国のトップとなる元首が存在します。これは定期的に行われるイベントで国内リーグの盟主から1人選ばれます。元首は他の国と外交を行ったり、宣戦布告をすることもできます。ただし宣戦布告は無条件でできるわけではありません。ある一定の条件を満たした場合にのみ行うことができますのでご安心を」
つまり元首の気狂いでゲーム序盤からいきなり国家間戦争に巻き込まれる心配は要らないわけだ、その点はリフィとしても助かるものだった。
「国家間戦争についてですが、基本的に戦争に参加する国の兵士たちは戦争に加わらなければなりません。ただしどうしても参加できない場合はあるアイテムを使用することで戦火から逃れることができます。しかしあまり高頻度に使うのは周りからの心証が悪くなるのでお勧めはできません」
確かに戦争ゲームで戦争に加わらなかったら「お前は何をしに来たんだ」とバッシングを浴びそうだ。
「最後に兵士自身についての説明です。兵士には等級が存在し、等級を上げることによって自らが動かせる軍隊の質・量が変わってきます。等級は下から順に新兵、二等兵、一等兵、上等兵、尉官、佐官、将官となっています。このうち尉官、佐官、将官はそれぞれ少・中・大でさらに位分けされています。また指揮する軍隊についでですが、上等兵までは自らの身一つのみ、尉官からは陸軍・海軍・空軍のうち自らが所属する軍隊を選択できます。これらの掛け持ちは不可能ですが、後から変更することも可能です。なお上等兵まで使用する武器や装備品などは支給のものとなっています」
なるほど。このゲームで活躍するには少なくとも尉官の位が必要なようだ。当面はそれを目指してプレイしてみよう。
「ゲームシステムの説明は以上となります。新兵さんの活躍を願っていますよ」
カロウはそう言って画面から消えた。ここからは自ら進んでいかなければならないようだ。