表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディなんとか・ストラテジー  作者: さるすぃ
Ifxana
1/3

第一話

 相手の侵攻部隊が見える。偵察隊の報告によると、あの部隊にはレベル3の戦車が全部で20台いるそうだ。


 (…大丈夫、こちらにはレベル4の戦車がある。あの程度の侵攻なら簡単に守り切れる…!)


 そう心を落ち着かせながらリフィは会敵の時を待った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ある休日、リフィはオンラインゲーム専門店で冷やかしをしていた。冷やかしと言うと誤解が生まれそうだが、気になるゲームがあればきちんと購入するつもりである。しかし特に目ぼしいものが見当たらないため冷やかし客と化してしまっているのだが…。


 (最近のRPGはネタ切れなのかどれも似通ってるんだよね。もっとこう斬新な、それでいて刺激的なゲームはないものか)


 新作ゲームコーナーを眺めているがいつも通りの光景が広がっている。オンラインゲームともなるとそう頻繁に開発できるものではないため当たり前のことだが、それでも新作を期待してしまうのが暇人の性なのである。


 (新作コーナーにいいやつはないなぁ。あぁでも、中古売り場にならもしかしたら過去の名作があるかもしれない)


 普段は中古コーナーは覗かないで帰る。なぜなら、売られたということはつまらないゲームだったとリフィは考えているからである。先程の考えと矛盾しているが、今はそんなことが気にならないほどリフィはゲームに飢えていた。店の隅にある中古品の棚が並ぶコーナーに移動し、Aの段から順に物色していく。


 (アルケミスト・アドベンチャー、ベータサバイバル、クラシックトラベラー。うーん、微妙…。)


 どことなく気になるタイトルはあるものの購入意欲を掻き立てるほどではない。すぐに存在を忘れて次の段へと目を移す。どうやらCが終わってDの項目に突入したようだ。ここにも存在感を放つものはなく、まもなくEの棚に目を移そうかと言う時。


 (ディゔぁ…?なんて読むんだこれは。後ろの単語がストラテジーなのはわかるけど、メインの単語の方がまったく見覚えのない綴りだ)


 少し気になったので検索窓に綴りを打ち込み、検索してみる。結果、その単語の意味を記した検索対象は存在しなかった。予測候補さえ出てこない。単語を見た限り見当もつかなかったので固有名詞だと思っていたのだが、どうやらそれですらないらしい。おそらくこのゲームの開発陣が雑に命名したか、もしくはなんらかの意味がある文字列なのだろう。仕方がないので唯一ヒットしたそのゲームの公式サイトを開いてみる。もしかしたら名前の由来も書いてあるかもしれない。


 (ウェブタイトルもこのディゔぁなんとか…。これは読ませる気ないな)


 残念ながら読み方がわからなかったが、ゲーム内容は載っていた。各地で戦争が起きている世界が舞台でプレイヤーは所属する国を決めて世界統一を目指す、というものらしい。選べる国は数十個もあるらしく、定期的に国と国を巻き込んだイベントも発生するようだ。

 戦争ゲームはどうしても内容が似通ってくるため、新作が出にくい。あるとしても名前に2や3がついている続作なのだ。リフィは今まで戦争ゲームをプレイしたことがないため、少し興味をそそられた。その興味の対象に読めないタイトルが含まれていたこともあるのだが…。


 (これも何かの縁だと思って戦争ゲーム、やってみるか。大した値段でもないし、面白くなかったら友人に押し付けてしまえばいい)


 リフィは購入を決意し、そのゲームを会計へと持ち運んだ。帰り道ではゲームの内容ではなく、そのゲームの読み方ばかり考えていた。

 

 帰宅後、リフィはさっそくそのソフトをハードに差し込み起動してみる。タイトルロゴはやはりあのなんて読むのかわからない単語。いっそ解読してみろという意思を感じる製作陣のこだわりだ。なんとなくそうであることは予想していて変な期待を抱いてなかった分落胆は少ないが、このゲームに飽きる前までには意味と読み方を知っておきたいものだ。意味もわからずゲームを手放すとあとで後悔しそうだ、とリフィは思ったからだ。

 

 簡潔な世界観の説明が入ったあと、プレイヤー情報入力画面へと移行した。プレイヤーネームはリフィと入力。これは別に本名ではなく、本名をもじった名前だ。たまに友人からプレイヤーネームを決めてくれという依頼を受けることもある。その際はリフィという名前のように本名のもじり、もしくはアナグラムで命名する。こういう所にリフィはこだわりを持っているため、このゲームのタイトルにも興味を抱いたのである。

 

 その後も簡単な情報入力を済ませていき、とうとう所属国選択画面へとたどり着いた。このゲームはオンラインなので国々には当然他のプレイヤーが存在する。しかしどのようなプレイヤーがいるか、またどの国が優勢かとかはわからないらしい。SNSで調べればすぐわかるだろうが、それでは面白くない。タイトルにもストラテジーと書いてあるので、リフィはメタ的な観点なしでこのゲームをプレイしたかった。

 

 (国の名前は様々だな。漢字名の国もあれば英語名の国もある。中には運営が決めたとは思えないふざけた名前のものもある…。さてはプレイヤーが国名を決められるシステムがあるな?)


 もちろん国名がポンポン変わっていては運営もプレイヤーも迷惑だろう。変更にはそれ相応の条件があるはずだ。例えば上位プレイヤーしか変更権限を持たないとか。ということはふざけた名前の国は避けた方がいい。トップ層がそんなふざけたやつではその国の未来も知れているというものだ。そもそもうまくやっていける気がしない。


 結局、無難な名前の国、Ifxanaを所属先に決めた。確認のポップアップが出てきたが、どうやら所属国の変更は後でできるらしい(もちろん無条件ではないが)。リフィはワクワクしながら決定ボタンを押し、ディゔぁなんとか・ストラテジーの世界に飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ