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7*Grand Guignol

アルンには悪いけど、


絶対嘘だって思い始めた。


だって、そうでしょ?


1週間音沙汰なかったから。


このまま、アルンをいれた4人で


馬鹿やってく日常をおくって…


そう、思ってたから。


ああ、


今うちの目前に広がる


あかの世界が、


早く終わればいいのに。


うちは、震える身体を、


必死で耐えるので精一杯で。


周りのことなんて


全然気づかなかった。




『人形師』グリアラ。666年前のアルジェントが倒せなかった、敵。


グリアラは、名前通り人形を操り攻撃をする。操れる人形数が多い上に、人形はそれぞれ武器を持ち戦う。


グルアラの武器は人形だけでなく、操る際に使用する見えない透明の糸――『ルーダ』――の餌食になってしまうため、迂闊に動けない。『ルーダ』を切っても、グリアラが瞬時に作り出すため、きりがない。


(風歌、まわりに見えない糸が張り巡られてるから余計に動かないで)


声なき声で話しかけても、返事がない。


(…風歌?)


後ろを振り向くと、風歌がうずくまり震えていた。自身の頭を抱え込み、下を向き、世界を拒絶するかのように――。


「おや、そこのお嬢さんは…『銀の魔女の』“ぬえ”かい?」


「………」


アルジェントは押し黙り、代わりにグリアラを睨みつける。


「おや、そう睨んでは美しい顔が台無しだ」


そう言うと、地上に降り、ゆっくりとアルジェントに近づく。


「沈黙は肯定ととるよ」


「想像に任せるわ」


「ククッ…相変わらず強気な口調だね」


目の前で止まると、グリアラはアルジェントの頬に触れてから顎を掴み、上を向けさせる。


そして、顔を近づけ後数センチというところで止まる。


「本当、君は殺しがいがあって嬉しいよ」


ここで、アルジェントが口を開ける。


「ふん。その言葉、そっくりそのまま返すわ」


一瞬、驚いたような顔をし、すぐに笑みへと変える。


「お前のようなヤツを見ていると、跪かせたくなるわ」


「ふっ…ふはははは!君は最高だよ、『銀の魔女』!よほど僕に殺されたいらしい」


アルジェントから手を放し、再び空へと飛ぶ。


「お望みどおり、今すぐ殺してあげよう」


「ふん、誰が。大人しく殺されなさい」


2人の戦いが、始まった。




(…とは言ったけど、正直厳しいわね)


会話直後、グリアラの操る人形の攻撃が始まり、アルジェントは風歌を守りながら攻撃をかわす事が続いた。


「どうしたんだい?さっきから逃げてばっかりだ」


グリアラの余裕の声音に、舌打ちする。


(人形を壊しても意味がない…なんとかして相手に直接攻撃しないと)


右手に持っていた長身の太刀を空中にしまい、新たに二丁の銃を取り出す。人形を破壊し、細い『ルーダ』を的確に撃ち、切る。


しかし、グリアラはすぐに『ルーダ』を作成、さらに、『ルーダ』で人形を創り出した。初めて見る光景に、アルジェントは絶句する。


「君は、僕の人形がマネキンだと思ってたのかい? 僕の『ルーダ』は操る糸の作成だけでなく、人形も創りだすのさ」


あっという間に、人形の数が増えていく。


(っ、まずい!早くグリアラを……)


人形たちは、手を前に突き出すとそこから炎を発射する。


「炎!? まさか、『ルーダ』の摩擦…?」


咄嗟に風歌を抱え、ビルの屋上へジャンプし、避難する。


「ぅ……あ?」


浮遊感を感じた風歌は、震えが治まり、ゆっくり立ち上がる。


「風歌……」


「あ、アルン」


アルジェントは、風歌にさきほど遭った出来事を簡潔に話す。


「風歌、君はここに隠れてて」


「え、あ…うん。でも、アルン平気?」


「平気にさせるのよ。あの白装束、すぐに殺してあげるわ」


アルジェントは銃を構え、風歌を残し屋上から飛び降りる。


(炎を出してくるなんて…つくづくうざったいわね)


引き金を引き、銃口にバレーボール大の大きさの水の弾が現れる。


「撃ち抜け、水弾っ!」


引き金を離すと、水弾は水色の輝きを放ちながら人形を追跡、破壊してはアルジェントのコントロールにより標的を定め、また破壊する。


「ほう、的確に操作するとはなかなかだ」


「随分と上からの発言ね。慎んだほうがいいわよ」


(アルン!)


すると、脳裏に風歌の声が響き渡る。


(うちも…うちも、アルンと戦いたいっ)


(ふ、うか?)


(うちだけこっそり隠れてて…アルンは戦ってる。そんなの……なんか嫌だ!)


(なんか、って…)


(とにかく、うちも戦う!だから、ビルの屋上からグ…なんとかの間に人形を寄せ付けないでほしいんだけど)


(いいわ。風歌を信じる)


(ありがと!)


アルジェントは、人形を攻撃しつつ、逃げているフリをしてビルから距離を離す。


グリアラは、風歌のいるビルに対して正面を向いているため、アルジェントは後ろに回りこみ回し蹴りをかます。


「君の動きはバレバレだ。無駄な抵抗はやめたらどうだい?」


「ちっ」


バク転を3回し、グリアラから距離をおく。


(あ、)


グリアラの後ろに回りこんだため、アルジェントはビルの屋上にいる風歌を視界に捉えることができた。


風歌は弓を構え、周りの“気”を集めている。風が風歌を囲み、風歌は風を受け入れる。


「アルンのために、うちは戦うっ!」


風歌は、矢を放った。




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