6*歓迎パーティーと紅の世界
「おーおー!雲1つないキレイな青空っ」
今日は、アルジェントの歓迎パーティーの日。今の時刻は9時。10時に大野家に集合、その後街に出て案内兼歓迎パーティーという名の遊び。
「それにしても、先週は大変だった…雑草抜き」
あの後、担任の中川に言われたとおり、学校中の雑草がなくなるまで抜き続けた。
そのため、テスト勉強は朝一で学校に集まり、アルジェントと那珂のスパルタ勉強会が行った。
「そういえば…最近夢見ないと思ったら、今日見たな」
あれ以来、夢もほとんど見ず…というより、覚えていない状態が続いた。“生屍”も、2人の前に現れる気配がない。
たしか、アルジェントと出会ってから1週間は経つ。本当になにもない、平穏な日常を送っていた。俗に言う、「嵐の前の静けさ」だったとしたら……。
「やめやめ!今日は遊びまくるのになんちゅー事考えてんのっ」
頬を、思いっきり両手でパン!と叩き、思考を停止させる。
クローゼットを開け、今日着ていく服を選ぶ。
「春は風強いからスカートは穿きたくないよね…」
悩んだ末、デニムのサロペットにした。
姉の葉結に、ヘアアレンジをしてもらい、朝食を食べ、空と一緒にゲームをしていたら。
ピンポーン
「ぅお!来ちゃった」
「早く行けよ姉貴。ル○ージはもう死んだ」
「ちょっ、空!強いから。手加減という言葉を知らないの!?」
「手加減?オレにそんな器用なことできないね」
「コノヤロォォオオオ!覚えてろっ!いつか下克上してやっかんな」
「バーカ!オレに勝つ日なんて来ねぇよ」
「空のあんぽんたんっ」
という、実に幼稚な台詞を残し、玄関へ走って行った←道場だけに家デカイんです。
「おまた――」
「遅い」
玄関のドアを開けた瞬間、チョップをくらい、その場にうずくまる。
「どれだけ待たせば気がすむの?」
「ごめんってば、那珂」
腕を組み、仁王立ちをしていた那珂が、風歌を見て笑う。
那珂は、ピンクの花柄のひらっひらワンピースを着こなし、小物をたくさん身につけ、かごバッグにも花のコサージュを付けている。
(チクショー美脚だなオイ)
「お?風歌いじめ?風歌いじめやってんのか!?」
そこへやって来たのは、琥珀。そこはかとなく嬉しそうな感じで2人に近寄る。
「その笑顔は何ですか琥珀ぅ!風歌ちゃんは悲しいよ」
「悲しんでろよ」
「のぉぉおおおぉおん!!」
琥珀のファッションは、絶対ズボン。制服以外で、絶対にスカートは穿かない。
黒い帽子をかぶり、シャツを着崩しネクタイゆるゆる。黒のベストにベルト、ボトムスはチェック柄のスキニーズボン。
「あら…みんな集まるの早いわね」
と、今回の主役である、アルジェントがやってきた。
アルジェントは、銀の髮を上に纏め上げ、長袖Tシャツの上にベストタイプのフードに毛が付いているダウンを着、ボトムスはデニムの短パン。
「そうゆう服着るんだね」
風歌が以外そうに言う。
「今日はね。スカートを穿くときもあるわ」
4人揃ったところで、早速街に出かけるため、駅に行き、電車に乗り込む。
「……あのさ、めっちゃ視線かんじるんだけど」
電車のつり革に捕まりながら風歌が遠慮がちに言う。
「心配するな。あたしもかんじる」
「同じく私も。ま、元凶は言われなくても…」
そこまで言い、那珂はチラっとアルジェントを見る。
「「………」」
那珂に合わせ、風歌と琥珀もアルジェントを見る。
「………」
3人の視線に気づき、アルジェントは見返す。
「…あのさ、アルン。なんとかならない?」
代表して風歌が言う。なんとか、というのは言うまでもなく、周りの視線。
「…琥珀がガン飛ばせばいいじゃない」
「あたし関係ないから。元凶アルンだから」
「私もそう思う。アルン、頼んだ」
嫌そうな顔をし、風歌を見ると、ウィンクしながらガッツポーズされる。
はぁぁ、と長い長い溜息をつき、周りの人に蛇を殺せるんじゃないかというくらい、睨みつける。
「おぉ!面白いくらいに一瞬で全員目ぇ逸らしたね」
風歌が感動し、アルジェントを敬うような目で見る。
「アルンすっげ!アルンすっげ!!」
「電車では静かにしろ!」
「琥珀、アンタも十分うるさいわよ」
「那珂もうるさいわ」
なんやかんだで雑談しているうち、あっという間に目的の駅に着いた。
駅を降り、街案内をしては店に入って買い物(アルジェントに奢りしながら)、街案内しては買い食い、道案内しては店に入って馬鹿をやっていたら…
「あ、もう4時なんだ」
ケータイで時間を確認した風歌が言った。
「早かったな、今日1日」
「本当に。でもなかなか楽しかったじゃない」
那珂の言葉にアルジェントが頷く。
「私も…なかなか楽しめたわ」
「んじゃ最後に…パアっとカラオケ行こうよ!」
風歌が両腕を上げ、それを琥珀が下ろさせる。
「よし!うんじゃ行く……」
最後まで言わずに、琥珀は言葉を切った。
「琥珀?」
「風歌!敵…“生屍”よっ」
“生屍”という言葉に、風歌はその場で凍りつく。
気がつけば、周囲の人々…否、フィールド内の時間が、全て停止。そして、世界は紅く染まる。
「ど…どうしよう!」
「ちっ…こんな時に“生屍”なんて」
アルジェントは、自身の体内から曇りのない太刀を取り出し、構える。
「風歌っ、私から離れないで!」
「う、うん!」
すぐにアルジェントの後ろに近づく。
「ア…アルン……」
「大丈夫だから」
すると、2人の目の前にマネキン人形が数十現れる。
「やあ、『銀の魔女』」
そこに現れたは、空中に浮かぶ、白いスーツを着た青年。
「『人形使い』…グリアラ!」
青年――グリアラ――は、不敵に笑うと、こう告げた。
「さあ、赤い紅い喜劇の開幕だ―――」
ふぅ、やっと戦闘シーンが書けそうです。
次話は、“永遠の戦”一色で
いきたいと思います。




