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4*非日常のハジマリ

アルジェントと風歌の関係が“討伐者クエスター”と“ぬえ”と知らされた。


風歌は驚きと困惑を隠せないでいる。


「いや……いやいやいや!まずいっしょ!花の女子高生がバトっちゃあ」


風歌は、やりたくないと言う。


「花の女子高生…?何かの間違いね」


アルジェントは一言で斬り、風歌はうなだれる。


「でも、私たちがやらなきゃいけない。これは絶対よ」


風歌とアルジェントが合う。アルジェントの、澄んだ翠の力強い瞳に、思わず視線を逸らす。


「うちに…出来るわけ、ないじゃん」


「………」


アルジェントは、沈黙を守る。


「いきなり戦ってください、って言われても……無理」


「………」


沈黙が、続く。1分、2分――5分。


沈黙を破ったのは、アルジェントだった。


「……いつ“生屍”が現れるか分からないわ。風歌が私の“鵺”である以上、相手は敵と見なし、容赦なく殺す……」


「………」


今度は、風歌が沈黙を守る。


「君には絶対死んでほしくない…だから、」


アルジェントは、一回言葉を切り、また続ける。


「しばらくは戦わなくていいわ。だから、私は風歌から絶対に離れない」


つまり、風歌を守る、と言っているのだ。


「え、」


アルジェントの言葉がうまく飲み込めず、たじろう。


「君と同じ学校に行って……家も隣のマンションに引っ越すわ」


「そこまでしなくても…!」


風歌はアルジェントを止めようとするが、


「するわ」


また一言で斬る。


「いい?それほど“永遠のエス・ウォー”は危険なのよ」


「危険……」


「そう、危険。だから風歌、私からあまり離れないで」


そう言って、アルジェントは立ち上がり、部屋を出ていこうとする。


帰り際に、一言


「死にたくなければ、ね」


そう言って、ドアを静かに閉めて行った。


(死にたく、なければ…)


風歌は1人、心の中でアルジェントの台詞を復唱していた。


その日の夜は、眠れなかった。原因は言うまでもない、アルジェントの台詞だ。


(死にたく、ないよ)


あんな恐ろしい怪物をみた後の、その一言は強烈だった。


死にたくはない。


だが、それ以上に“永遠の戦”に関わりたくないのが事実だった。死と隣り合わせなのだ、当然の心理だろう。


(うち、これから先…どうするんだろう?)


ベッドの中で、ずっと考えていたら、5時になっていた。さすがに寝なくては、と思って瞳を閉じても、全く寝れなかった。


朝、いつもより1時間も早く起きた。千草しか起きておらず、とても驚いた様子だった。


「なんか、寝れなかったんだよね」


「あら、そうだったの?授業中、寝るんじゃないわよ」


「ちょ…無理に等しい!」


千草と二言三言話したあと、顔を洗いに洗面所へ向かった。鏡に映った自分の顔を見る。


「うわ、隈できてるし」


うっすらとだが、風歌の目の下には隈があった。一睡もしていないのだ、できて当然であろう。


「うち…本当にどうしよう」


しばらく考えた後、風歌の頭はやっぱり爆発した。


「うがぁぁあああ!もうどおにでもなれぇ!!」


その後、朝食を食べるも喉を通らず、半分残して家を出た。


「行ってきま……す」


「おはよう。朝出るの意外と遅いわね」


大野家の前に、アルジェントが立っていた。ちゃっかり風歌の学校の制服を着ている。


「ちょぉぉおおお!? アルン準備早すぎでしょ!」


「言ったでしょ?風歌から離れないって」


「そ、そうだけどぉ……」


「今だって、もしかしたら“生屍”が私たちを狙っているかもしれないわ」


「………」


そう言われてしまったら、黙るしかない。もし、アルンの言っている事が正しいとしたら?本当に“生屍”が2人のことを見ていたら?


(死にたくないよっ!でも…でもさ、うちには戦う力なんてないし。それに、昨日いきなり言われても心の整理ってやつがついてないし)


「…とにかく、風歌は私から離れなければいいのよ。私が絶対守る」


風歌の心を読んだような返答に、少し、本当に少しだけ安心する。


「で、でも!うちはまだアルンのことを信じきってないし、今でも冗談だと思ってたりするし、つか冗談でしょって思ってたりするし…」


一瞬、アルジェントが悲しそうな表情をするが、すぐにいつもの表情に戻る。


「それでもいいわ。…学校、行くわよ」


「うん。あ!」


アルジェントが、面倒くさそうに風歌の方を振り返る。


「あのね、うち幼馴染の高月琥珀って子と一緒に学校行ってるんだけど…」


「ふぅん…風歌、紹介しなさい」


「うち!?」


「他に誰がいるのよ。私も学校に通うのよ? 友人の1人や2人はつくいけないわ」


なるほど、と風歌が相槌をうつ。


風歌は、琥珀と那珂の事を思い浮かべる。


琥珀の性格は、とにかくサバサバしている。うじうじする奴が嫌い。何事にも白黒させないといやらしく、ハッキリしないと怖い。一緒にいるととても心強い。琥珀に相談事をすると、いい事が無い。夢の相談をしたとき、一目瞭然だった。


(気にしなくていんじゃね?だもんな)


相談事をするなら、絶対那珂だろう。


那珂は、頼れる姉後肌。たまに風歌のことをからかうが、琥珀に比べればずっと少ない…はず。困ってる人とか放っておけないタイプで、人の役に立つのが好き。でも意外と頑固なところがあったり、嘘をつかれると、かなり怒る。


(小さい嘘にも怒るからなぁ。那珂には冗談があんまし効かないんだよね)


アルジェントは…出会って間もなく、いまいち分からないが、強気な少女だと思う。口調からでも分かるとおり、自身に満ち溢れてるかんじがする。風歌にとって、少し絡みにくいところもあるが、1週間もすれば打ち解けられるだろう。


それに、アルジェントの隣にいうと、何だか安心する。前世の事があるからかもしれないが、事実だ。


アルジェントはうじうじしない、凛としている。結構、いやかなりズバっと言うし、正直に話してくれる。何かを隠しているという感じはしなかった。


(あれ、もしかしてこの3人って意気投合できんじゃね? いや、できるよね)


「…………」


(あ、なんかうちの日常生活が色んな意味ですごくなりそうっ!!!)


「何マヌケな顔をしているのかしら?早く琥珀っていう子のとこに行くわよ」


アルジェントが風歌のおでこを指ではじく。


「あいたっ!?」


アルジェントは、妖艶な笑みを浮かべて、さっさと歩き出す。


「ちょっ、早いって!」




こうして、風歌とアルジェントの非日常な生活が始まった。





今回は、風歌とアルジェントの会話メインです。


次話は、アルジェントの初登校です!

琥珀と那珂を絡ませたいと思ってます^^



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