11*昨日ぶり
<今から、そっちに向かうわ>
<うん>
<最後に確認。なにも、されてないのよね?>
<なにも。姿を見てもないよ>
<それだけで、十分>
<うん。十分だね>
<じゃあ、また後で会いましょう>
そう言って、“テレパシー”を切る。時間は、12時の、1分前。
(もし、私の考えが当たっているなら)
アルジェントは自分の拳を見つめる。
(絶対、勝てるわ。時間はかかるかもしれないけど)
ベランダに出て、青空を見上げる。呼吸を整え、跳んで屋根に上る。
(勝算は、ある)
膝を曲げて屋根を蹴り、銀の線をひきながら風歌のいる有升デパートへと飛んでいく。
有升デパートには、1分もしないうちに着いた。
ギリギリまで、待つ。
(あ、)
寝転がっていた風歌は、なにかの気配に気がついて起き上がった。
(この感じ…アルンが近くまで来てるんだ)
2人で1人となっている風歌とアルジェントは、お互いの気配等感知がしやすい。
そういえば、そろそろマティルドが昼食を持ってくる時間だ。来る気配がない…ということは、向こうもアルジェントの気配を感じ取ったのか。
(でも、うちらが勝つ)
拳に力を入れる。大丈夫。
〈いくわよ!〉
アルジェントの声が脳に響いたと思った瞬間、“フィールド”が展開され、紅に染まった。
その一拍後には、ドゴォォンという音とともにコンクリートの壁が粉砕、土煙が視界を奪った。
「げほっ! 目が…目がアアァァァッ!!」
両手で目を押さえる。ム〇カみたいになっちゃったよ、と言いながら。
その次はいきなり強い風が吹き、土煙は消えた。
「……あら、人攫い野郎。昨日ぶりね」
「語弊を招くような言い方はやめてほしいね」
「まったくですわ」
晴れた視界には、アルジェントとグリアラ、マティルドが睨みをきかせあっていた。
(なんじゃこりゃ)
「僕たちはたしか…あの時、3日後と約束をしなかったかな?」
こめかみを押さえながら言う。
「そうね。したわ」
「まあっ! 覚えておいて約束を破るだなんて…なんて無礼なのかしら」
「敵との約束なんて、守るわけないじゃない」
そっちだって、破ると分かっていていたでしょう? とアルジェントは言う。
「ククク…! たしかにね。今日あたり来るだろうと思っていたよ。まあ、時間は外れたけどね」
先に動きだしたのは、グリアラだった。武器もなにも使わず、素手でアルジェントに殴りかかる。
「アルン!」
つい反射的に叫んだ。アルジェントは流れるようにかわした。
「直接突っ込んでくるなんて…変ね」
「……不本意ながら、僕はアレが嫌いでね」
アレ、とは“ルーダ”のことだろう。
〈ビンゴ?〉
〈おそらくは――まだ断言はできないわね〉
風歌は数秒間じっとし、グリアラとアルジェントを交互見た。
(うちも、そろそろ動こうかな……)
よっこいしょ、と言いながら立ち上がり、とろとろ歩いてアルジェントに近づく。
「「………」」
2人は無言のまま向かい合う。
(あ、ちょっと気まずい)
とりあえず、挨拶をしてみる。
「よう? 昨日ぶりだね?」
「…なんで疑問系なのよ」
「えっとぉ、なんとなく?」
アルジェントは風歌をジロっと見た後、ため息をつく。
「はぁ…。そうね久しぶりねご無沙汰ね」
なにもない空中から、スラッと曇りのない長身の太刀を取り出す。
「えっ…えぇ!? ちょ、アルン落ち着いて……」
「再開を喜んでる暇なんてないわよ。目の前の敵を始末しないと」
「…うん、そうだね」
自分でも驚くくらいの冷静さで答えた。つい最近までどこにでもいる普通の女子高生だったのに、と思う。
「最後のお話しは終わりかな?」
「最後、とは心外ね」
「そうだコノヤロー! アンタをぶっ飛ばした後にゆっくり話すもんね!」
「あっちで、かな?」
「めでたい話しですこと…!」
マティルドの言葉を最後に、それぞれが動き出した。
風歌は、この前(というより昨日)自分で出した弓のことを、ウェンディと名づけた。本人曰く、「名前があったほうがかっこいい」だそうだ。
「ウェンディ!」
と言いながら手をを上に突き上げると、銀に光りながら風歌の武器――ウェンディが現れた。
よっしゃグリアラに射ってやろうと構えた瞬間、目の前には5体のマネキン。
「ぎゃああぁあっ!!! ホラーだあぁぁ!!!!」
マネキンに驚き、反射的に叫ぶ。
「ちょっと! 馬鹿やってないでぶっ壊しなさいよっ」
「だだだだってぇ~…」
半べそかいてる風歌の目前にいるマネキンに向かい、大きな炎弾を食らわせる。
マネキンはメラメラと燃え、黒焦げになって崩れ倒れる。
「あ、ある意味ホラー…!」
なんて言ってる風歌に、また新たなマネキンが襲い掛かる。
「風歌っ!」
アルジェントに怒られた。あの声音は絶対怒ってる。
「はいぃぃ!」
咄嗟にウェンディを構え、1本の矢に力を込める。
「馬鹿ヤロー死んじゃえぇ!」
マネキンは生きてない。
矢は1体のマネキンの胸部に刺さり、瞬間銀の光りを放ちながら爆発をし、左右にいたマネキンを粉砕した。
「南無っ」
マネキンに命はない。
その後も、襲ってくるマネキンをことごとく粉砕、粉砕、粉砕……の繰り返し。
「キリがぬぇええぇぇ!!」
ここで風歌が、あることに気がつく。
(マネキンに糸がついてない!?)
今日のマネキンには、たしかについてなかった。だとしたら、誰がマネキンを……?
(! マティルドは!? さっきまでグリアラの肩に座ってたのに…)
辺りをキョロキョロと見回す。アルジェントとグリアラが戦っている姿以外は、確認できず。
「まさか、このマネキンはマティルドが…?」
「あら、よく気がついたわね。褒めてさしあげますわ」
不意に、マティルドの声が聞こえてきた。もう一度見回すが、やはりどこにもいない。
「マティルド~? どこにいんの~?」
「そう言われて場所を教える馬鹿がどこにいらっしゃいますの?」
「う~ん…じゃあ、自分で探すから!」
「どうぞご勝手に」
よし、と言ってマティルドを探すため、走り出した。
半端なとこで終わらせちまいやした←
でも続きを書いたらトンデモナイことになってしまうんです多分←




