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10*沈思黙考


今回は短めです。




朝。太陽の光が眩しくて、目が覚める。


(あー…拉致られて有升廃屋デパートにいるんだった)


周りを見ると、グリアラもマティルドもいない。


(……結構怖いんだけど!?)


ぎゅるるる――


「………」


風歌の腹が盛大に鳴った。


「腹減ったあぁ!」


「朝っぱらからうるさいこと!」


甲高い声が聞こえたと思ったら、静かになさい!とか言いながら頭を殴られる。


「あうっ! ちょ、マティルド!ひどくね? これひどくね!?」


風歌の言葉を無視して、マティルドは子包みを渡す。


「……爆弾?」


「あなたの朝食よ! まったく、失礼ね。いらないならここの最上階から下に落としますわよ!!」


「やだなぁマティルド、冗談に決まってるじゃん!」


「そんなの当然です!」


(……このヤロー。まいっか)


小包みを開けると、やたらと大きいサンドイッチが5つ入ってた。


「感謝してほしいですわ。あなたの胃袋ブラックホールなんですもの。わざわざ大きいのを差し上げます」


「さすがマティルド! うんうん。感謝してるよ」


笑顔でサンドイッチを1つ取り出す。


「いっただきまーす!」


幸せそうに食べる風歌を見て、マティルドはこう言った。


「では、私はグリアラ様のところに行きますから」


「ふぃっへふぁっふぁい」訳:行ってらっしゃい


マティルドの姿が見えなくなると、はぁーと長く息を吐く。


「マティルドと仲良くなったとはいえ、うち敵地にいるんだよね……おお恐っ!」


<風歌…聞こえてる?>


風歌の頭にアルジェントの声が響いた。


<アルン! うん、聞こえてる>


<無事みたいね。よかったわ>


だいぶ心配だったのか、その声は柔らかく聞こえた。


<今日、やるわよ>


アルジェントの声音が、変わる。それに対し、風歌は静かに頷く。


<時間は…そうね……昼にするわ>


<わかった>


<じゃ、また後で。何かあったらすぐ連絡しなさいよ>


<うん。またね>


(なんか、不安になってきた…かも)


全部のサンドイッチを食べ終ええた風歌は、また眠りにつくことにした。


(だって腹いっぱいになると眠くなる…)




「まあ、敵地で堂々と寝るなんて…神経の太いレディですこと」


気持ちよさそうに眠る風歌を見て、マティルドが呆れながら言う。


「マティルド、君はこのようになってはいけないよ」


「ご安心を」


「それよりマティルド。『銀の魔女』は…昨日僕とした約束を信じるだろうか?」


「信じていないと思います。『銀の魔女』ですし」


「僕も同感だ。今日、『銀の魔女』はここにやって来るだろう」


グリアラはにやり、と笑い、


「盛大に歓迎しなくてはいけないね」


その言葉を残し、マティルドと共に奥へと消えて行った。


「………」


風歌は、グリアラの武器“ルーダ”という特殊な糸を使った戦法について考えていた。


(なんかアイツ…自分の戦闘スタイルにコンプレックスがあるように見えるんだよね)


昨日の戦闘で、グリアラは好戦的とみた。


(アルンのこと、だいぶ挑発してたよね…)


だったら3日間など決めなくても、あの場ですぐに風歌たちに攻撃してくればいい。


――……人形劇は今日じゃつまらない。


――準備が必要だからね…3日後、この時間にこの場所で人形劇を公演しよう。


(準備って…うちをアイツのアレにさせるためのことだよね)


それなのに、グリアラは風歌に手を出していない。不自然だ。


(ってことは…グリアラは、3日間という時間が欲しかったんだ。でも、なんで?)


考えろ――考えろ風歌―――。




(風歌を使って、うまいこと3日間というブランクを手に入れることができた…)


アルジェントは、自分と風歌は欠席する、ということを学校側に伝え、今日の戦いに向けて自宅待機をしている。


昨日、大野家には風歌は自分の家に泊まることになった、と伝えた。


――あら、そうなの? あの子イビキうるさいから耳栓して寝たほうがいいわよ。


なんていう千草からのアドバイスを貰い、朝を迎えた。


今は、今日戦う相手、グリアラについて考えを巡らせている。


(私はてっきり、風歌をアイツのアレにするための期間だと思ってたわ。でも、実際は違う)


“テレパシー”で風歌に状態を聞いたとき、たしかに何もされてないと答えた。マティルドがうざくてかわいいとも言っていた。マティルドは、風歌にずっと付っきりでいたということになる。マティルドは風歌の監視役でもしていたのだろうか?


(敵のことをかわいい、なんてある程度親しくなっていないと言えないわよね…)


じゃあ、グリアラはどうしていたんだろうか。マティルドと一緒に風歌といたとすれば、何かしらグリアラの話しをするはずだ。この戦いの頭だ。逆に、報告しないほうがおかしい。でも、風歌は何も言わなかった。


(アイツは風歌の前に姿を現さなかった、)


風歌の監視をしていた理由。風歌が逃げ出さないため? それもあるのだろうが、拘束をしてしまえば話しがつく。そうなると、風歌がグリアラと会わせないようにするためとしか考えられない。


好戦的なのに、どうして3日間の時間を欲した? どうして風歌の前に姿を現さない?


(“ルーダ”になにかあるとしか考えられないわね)




(“ルーダ”に、きっとなにかあるんだ)




そうして、昼はあっという間にやってきた。




沈思黙考ちんしもっこう

黙って深くじっくり考えること。広辞苑第六版より。


タイトルまんまっす。

風歌とアルジェントが考えをめっちゃ巡らせてるお話しなもんで。


ちなみに、漢検勉強中に知った四字熟語。

まさかこんなところで使えるとはww


友加、吃驚感動!!!←




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