星空事件簿①
夜も闇が深くなった頃、アスカが部屋の来訪者を告げる。
それは、もちろんユグ。
約束通り星を見に行くのだ。
ティアの着ている服を見てユグが喜ぶ。
「やっぱりティアに似合ってる。選んで良かった。」
夕刻、ユグからの贈り物だとアスカが持って来たのだ。
箱を開けると、上の白から下の薄いピンクへ、グラデーションが綺麗な可愛いワンピースが入っていた。
合わせてみるとプリンスライン。
動く度にレースの付いた裾がふわふわと揺れる。
(可愛い。)
ワンピースはティアの好みで、とても良く似合っていた。
しかも初めて着るのに、ティアの為に存在するかの様にピッタリ。
体のサイズは……何故、解った?
アテナが見立てたのだろう、と深く考えるのを止める事にする。
「凄く可愛い!!!」
目の前で喜ぶユグに着て良かったと思う。
自身の瞳の色に合わせてリボンと靴は淡い紫にした。
が、ユグの瞳の色に合わせて赤でも良かったかもしれない。と、ユグを見て思ったティア。
そこで、ふと我に返る。
(何で合わせ様と思ったの、私。)
思考に戸惑い、急に恥ずかしくなった。
一人百面相をしていたティアをニコニコ見ているユグ。
「可愛い」と抱き締めるられてしまった。
抱き締められる事に慣れた気恥ずかしさ。
百面相を見られていたWの恥ずかしさから逃げる様にユグを連れて外へ出る。
外へ出ると急に横抱きにされた。
俗に言う『お姫様抱っこ』
ビックリして降ろして貰おうとしたが次の瞬間、自身からユグに抱き付く事になる。
体が浮いたのだ。
ふわりとティアごとユグが浮かぶ。
ビックリしているティアをユグが笑う。
「風魔法で飛んでるだけだから大丈夫だ。安心して。」
飛ぶ前に一言、言って欲しかったと訴えたが
「ビックリ顔が見たかったんだ。」と、イタズラ少年の様な顔で言われてしまっては、何も言えなかった。
「ほら、見て。」
言われて目を向ける。
「わぁっ」
そこに拡がるのは星の海。
キラキラ瞬いている。
高く上がったからか、目の前には星々しか見られない。
力を入れて作ったと自信満々に言った理由が良く解る。
生前に見て感動した世界の絶景カレンダーに選ばれていた、どこかの星空。
カメラで撮ってもここまで素晴らしいのなら、肉眼で見たらどんなだろう…と想像した。
もちろんアレクと見た星空も、綺麗だったが……
正直、今見てる星々には遠く及ばない。
『綺麗』意外の言葉が出ない程、本当にキラキラと美しかった。
「あれ。」
指差す方向に目を向ける、と
『キラリ』
流れ星が落ちる。
そしてユグが指を鳴らす。
と、星々が一斉に流れ出す。
まるで流星群だ。
キラキラ
地上で見るよりも星に近い分だけ星の川の中にいる様で迫力が違う。
キラキラ星の川に溶けてしまいそうだ。
初めて見る圧倒的される煌めきに時間を忘れて、ただただ見惚れていた。
「くしゅんっ。」
ノースリーブのティアはくしゃみをして、初めて寒いと気が付く。
それだけ星々に夢中になっていた。
自身の来ていた上着を脱ぎティアに掛ける。
「どうだ?」
どや顔のユグが問う。
「すっっっごく凄い!感動した!!」
ティアは満面の笑みで答える。
「ありがとう!ユグ!!」
「ティアの為だからな!」
ティアの満面の笑みを見れて嬉しそうに微笑むユグ。
またティアはユグに促され星空に目を移す。
二人に星々が降り注ぐ。
その美しさに目と心を奪われる。
暫く二人で星を眺めていた。
「戻ったら皆にもお礼を言わないと……」
ポツリとティアが呟く。
ユグがピクリと反応する。
「皆凄い!精霊って凄いね!!」
ユグの顔が曇る。
気付かず続けるティア。
「今度は皆で見るのも楽しくていいかも。夜のピクニックみたいな。」
楽しそうなティアは微妙な笑顔のユグに気付かない。
気付いた所で理由も分からなかっただろう。
「……気に入ってくれた?」
「うん。アレクと見た星空も凄かったけど、それよりもっと凄い!ずっと見てたいくらいだよ。」
その言葉にユグが一気に機嫌を損ねる。
恋愛経験の無いティアにとってユグが何故、不機嫌になったのか解らなかった。
楽しい時間だったハズなのに……
「もう戻ろう。」と屋敷の部屋に送られてしまう。
何かマズイ事をしただろうか?
考えても思い浮かばない。
部屋にティアを送って、ユグはさっさと自室に戻ってしまった。
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