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執務室

今日は雨。


雨は珍しいらしい。


精霊界ではあまり降らないから、たまに降る雨を妖精や精霊は凄く喜ぶ様だ。

濡れるのをお構い無しに外で跳ね回るくらいに。


しかし、雨の理由が理由だった。


ユグが拗ねているから。


拗ねている理由は昨夜、星空を一緒に見れなかったから。


子供か!!



食事会のお開きが遅かった為の延期。


仕方ないとは言え、前もって誘われ約束してた事もあり、機嫌を取りにユグの執務室へ。


代わる代わる精霊王達が来て頼まれたからでは決してない。決して。


大切なので2度言います。




アスカに案内され目の前まで来た。


飾りの豪華な扉を潜ると仕事をするユグが目に入る。

真面目に仕事してる姿は正直カッコいい。


知る程、子供だしストーカーだし……

優しい所もあるけど、見た目で得してるタイプだとティアは思う。


「ユグ様、ティア様がおいでですよ。」

補佐をしていただろうアテナに声を掛けられ顔を上げる。


「ちょうど休憩しようと思ってたのだ。」


ティアを見てニッコリ笑うユグ。テーブルセットのソファーへと案内される。


その姿は優雅で紳士だ。


いつもなら飛び付いてくる勢いで側にくるのに……

何だか落ち着いていて、いつものユグらしくない。


(拗ねてるから…?)


仕事してても放り出して来ると思ってたので拍子抜けしてしまった。

そんな風に思うのは自意識過剰だろうか?



アテナの補佐の土属性のノームが紅茶を入れて出してくれる。

ティアの好きなハーブティーだ。


ノームは子供とモグラが合体した様な姿。小動物的でトコトコ歩く姿が愛らしい。



ティーカップに口を付けながら、ユグの様子を伺ってみる。


チラリ

お茶を飲む姿も悠然と優雅に見える。


……


何となく


やっぱり


いつもと何か違う。



何だか緊張する。


「あ……の……、仕事は大丈夫?邪魔じゃない?」


「ティアが来て嬉しいから大丈夫だ。」

そう言いながら微笑まれた。

いつもの満面の笑みではなく穏やかに、そして上品に。


(あ"あ"あああぁぁぁぁ~!!)


いつもの台詞なのに……いつもとは雰囲気が違うだけで、ここまで破壊力がある物なのか。


色気にヤられそうになる。

ティアにとったら凶器だ。


気持ちを落ち着ける様にハーブティーを一口飲む。


無口なユグの美しい顔と色気のその雰囲気に慣れない。いつもの明るい雰囲気と親しさにどれだけ救われていたか思い知った。


「困ってる事はないか?」

「だっ大丈夫っ!」


どもってしまったティアに

「本当に?遠慮してるんじゃないのか?」

心配そうに問われ、慌てて答える。


「本当に!大丈夫、皆が優しいし良くしてくれるから。」


慌てて皆と言ってしまった。


ワザとではないにしてもユグをチラリと見る。


普段なら『俺様が1番優しい。1番良くしてる。』って言いそうなのに


「そうか。それなら良かった。」

とニッコリ笑うだけだった。




拍子抜けと言うのか……


それより


何だか……

胸がチリッとする。


攻略対象達の記憶喪失が思い出された。


彼らも突然だったから。


ユグに何かしらの影響が出たのかと、不安になった。

『忘れられてはいない』事に安堵の気持ちはあるけど、ストーリー補正とかがあったのかもしれない。


暫く大人なユグとギクシャクしながら会話をする。


いつもと違う違和感と不安と……

それなのに見た目だけは良く、喋るだけでドキドキとしてしまう。



「今日の夜は時間があるか?」


「え、あ……あります。」

突然、色気たっぷりに聞かれ、思わず敬語で返してしまった。




次の瞬間


「本当か!!もうまた(・・)明日とか言わないな!?」

身を乗り出しながら興奮気味に言われる。

勢いについ『はい。』と答えた。


「約束だぞ!アテナ聞いたな!!」


「良かったですね。ユグ様。」

ニッコニコの二人に付いていけないティア。


すると

「恋には駆け引きだとアテナが言ったのだ。」

「ユグ様。そこは言わないな方がよろしいですよ。」


駆け引き。


生前は恋愛偏差値の底辺な楓にとって、駆け引きなる物は苦手だった。


と云うか解らないのだ。


された事もした事もないが、小説やドラマで見てると、素直になればいいのに……と。

駆け引きとか試されてるみたいで嫌だなぁ、とも思っていた。


ユグの言葉にホッとしたティア。


これが駆け引きとなるのか、ティアには判断できない。が、やっぱり素直が一番だと思う。


怒るでも悲しいでも拗ねるでもなくホッとした。


いつものユグで良かった。


ストーリー補正とか……そう云うのじゃなくて本当に……良かったぁ。



安心したからかティアの瞳から涙が零れる。


慌てるユグ。


「言わない方が良かったか?」

しかしティアは首を横に振る。


「いつものユグで安心したの。アレク達は突然変わっちゃったから……」


それを聞いて急いでティアの隣に移動して抱き締めた。


「ビックリさせたな。俺様は変わらない。いつもティアの求めるままの姿でいると誓おう。」


『人間のオス達とは違う。ティアを忘れない。』


言葉に。力強い瞳に。

抱き締める腕に安心した。


確かな物なんてないけど、このまま在って欲しいとティアは思う。



「泣かせてしまった後だけど、いつもの俺様で改めて誘う。ティアと見たいんだ。星を一緒に見てくれるか?」


伺う様な瞳に「うん。」と笑いながら答える。


「やった!」と更に抱き着くユグ。

喜びを爆発させる姿はさながら大型犬だ。

いつもの姿に笑顔になった。


慣れ親しんだ笑顔の抱き着いてくるユグに安心する。


やっぱりコレだよね!




気付いたらアテナもノームも気を利かせたのか部屋から居なくなっている。


そして空には青空が広がり虹が出ていた。


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