終焉
「結局さぁ、2人共に自己中だったって事でしょ?」
お茶を飲みながら悪態着くのはアテナ先生。
精霊界で流れた『女子会』を再び開催中なのだ。
今回のメンバーはアテナ、ティア、アスカ、ウンディーネ。
シルフはジンのお使いで出ている為誘えなかった。
「元からあそこがくっついてれば、こんな騒動は起こらなかったじゃない?まったく、いい迷惑よ。」
ずっと女子会が出来なかったのを、根に持っていた様でオリジンとエウレカの愚痴が止まらない。
「まぁまぁ、やっと落ち着いたんだし、ゆっくりお茶を楽しみましょうよ。」
アテナを宥めながらお茶を進める。
あれから後始末と、王都へ出向いて経緯と今後の話し合いをした。
当事者2人が闇に消え、行方や詳しい詳細は分からなくなってしまった。人間界と精霊界を巻き込んで迷惑を掛けたにも関わらずに。
オリジンが元精霊王だった事で、迷惑かけたと精霊王達も積極的に協力する約束をしてくれた。皆がやる気なら解決も早いだろうと思う。
特にレムとプルートーは責任を感じ、率先して動くとの事。
レムやプルートーのせいじゃないと言ったけど、複雑そうな顔で微笑まれてしまった。
破壊された物は弁償なり修復をしたり、傷付いた者は治療やケアをすればいい。
精霊や妖精達のケアも精霊王達がやってくれる事になっている。
問題は消えた2人の今後。
また問題を起こすかもしれない。
また暴走するかもしれない。
狂気を含んだ二人をそのままにしておくのは心配だった。
しかし、どこへ行ったのか分からない。
辿る手立てが今の所ないのだ。
それで頭を抱えていた。
また今回の様な事が起こったら……
しかし問題はすぐに解決する。
「少し前から精霊界と魔界の狭間の闇から暗黒の気配を感じる。」
闇を纏う闇に詳しいプルートーが言う。
きっと2人はそこに居るの事。
人間界はすぐに捜索して捕まえようと言い出した。
精霊界と協力して策を練れば拘束して安全な所に幽閉出来るのではないか、と。
それに待たを掛けたのはユグ。
ユグの容姿に惚れ、ユグと同じ顔のオリジンに乗り換えたエウレカ。
1人の女に執着した結果、死ぬ勇気も無く狂い、甘い言葉をくれるエウレカを選んだオリジン。
お互いがお互いを変わりとして選んだ。
2人共に1人が淋しかっただけかもしれない。
孤独な心が呼び合ったのかもしれない。
元々、運命の2人だったのかもしれない。
きっと答えは2人にしか、分からない。
そもそも2人にも分からないのかもしれない。
「オリジンを見ていて、俺様にも将来有り得る姿だと思ってしまった。散々苦しんだ者だ。そっとして置いてやる事は出来ないだろうか?」
人間界は強い反対は無いものの難色を示した。
「お言葉ですが……彼らが暴走した時、人間界には抵抗出来るか分かりません。もちろん、今後対策や防衛を強化しますが、何せ元精霊王。それにエウレカ.イクレイは禁忌魔法も使えます。脅威となる以上、放置は……致し兼ねます。」
前回会議でも会ったウィルソン侯爵。国を代表し、心配しての言葉として最もだと思う。
「無闇に攻撃して再び争いを起こそうと?」
プルートーの言葉にウィルソンが慌てる。
「いえ、争いは我々も望んでいません。安全だと確認出来れば良いのです。」
皆望むのは平穏。
「それでは、安全が保証されれば宜しいのですね?」
ずっと何かを考えていたレムが、顔を上げた後1つの案を提案する。
「私とアテナが結界を張りましょう。破れれば我々もすぐ分かりますし、その時は駆けつける事をお約束します。」
「それなら我も協力しよう。監視なら任せておけ。それにいつになるか分からないが、その内二人は闇に溶ける。」
プルートーの言葉に周りは驚いた。
あれだけ深い濃い闇。囚われれば逃れる術なく闇と同化してゆく。ただそれが500年後か、1000年後か計測は出来ないとの事だ。
レムとプルートーの言葉を踏まえ、人間界側で会議を重ねた。
結果
触らぬ神に祟りなし。
王都での話し合いで、何も無い限り2人を監視する事にした。監視と言ってもプルートーが2人に変な気配が無いか探るだけ。
ただ、今回は伝承として残すそうだ。
確かに前の事が伝わっていれば、何かしらの対策が出来たかもしれない。防げる事もあったかもしれない。
年数がどれだけ過ぎても、もしかしたらオリジンが一人きりにならなくても良かったかもしれない。
レムもプルートーも反省していた。
望んだ事と言っても、もう少し気にかけるべきだった、と。
幸せになれと送り出した。オリジンが一人きりで狂う程の時間を過ごす事を願った訳じゃない。たまにでも訪れていれば気づけた筈だと。
どんな言葉で励ましても、きっと2人の心は晴れないだろう。それでも2人に言いたかった。
エウレカもオリジンも、今は幸せなんじゃないかと思う、と。
それを聞いて2人は微笑んだ。
「そうであって欲しいですね。」
きっと、もう、エウレカにもオリジンにも会う事はない。
風が吹いて花びらが舞う。
楽しそうに笑うアスカとウンディーネを見て思う。
防げて良かった。帰って来れた。
ここが私のいる場所なのだ、と。
「ティア様?」
考えても仕方ない事は止めようと、思いと共に紅茶を流し込む。
ニコリ微笑むと、向こうからシルフが走って来るのが見える。
迎えようと立つと、その奥からこちらへ向かってくる人影が見えた。
「ティア様〜!アテナ様〜!すみませんっ!バレましたっ!!」
シルフを追い越し現れた人物。
もちろん、ジンだ。
「なんで仲間はずれにするの〜?僕もまざるぅ〜!」
「何を言ってるの?女子会はメスでなければダメだって前に言ったでしょ?」
「今日だけメスぅ〜」
アテナとジンの攻防戦。
「まったくジンは騒がしいな。」
しれっと横に座るユグ。
「っ!ユグ様!座らないで下さい!」
「なんだアテナは機嫌が悪いのか?」
悪びれもなくお茶をすする。
「やれやれ、まったくユグは困った者だな。」
「そういうプルートー様も座ってますよね?勝手に飲もうしてはいけません!あっ!イフリートも!勝手に食べるなっ!!」
皆を止めようとしれくれる、ポセイドン母さん。
頑張れ。
そんな皆を生暖かい目で見守るレム父さん。
結局『女子会』は『お茶会』に変わる。
不貞腐れてるアテナ先生。
また女子会チャレンジしましょうと宥めると
『オス共をどこかに閉じ込めてでもやるわよぉ』
不穏な事を言っていたのは聞かない振りをしておいた。
ふとレムから手紙を渡される。
アレクからだ。
『落ち着いたら、また王都に来て欲しい。皆も会いたがってるよ。』
嬉しい。
正直、会いたい気持ちもある。
アレクは大切な推しで、特別だと思った時もあった。が、今は大切な友達だと思ってる。もちろんフレデリック、ロバート、ルカも大切な友達だ。
でもユグと精霊界で生きると決めた私が会ってもいいのだろうか。
ユグが嫌がる事はしたくない。
「会って来ればいい。」
隣から発せられた声に声の主を見る。
「大切な友達なのだろう?俺様は特別だからな。友達に会うくらい気にならん。」
ニカッと笑うユグ。
「どこにいても、誰といても俺様のティアだ。そうだろう?」
怪しげに笑うユグにすっかり惚れてしまったティアは『そうだよ』と笑顔で返す。
精霊界と人間界の空には大きなキラキラ光る虹がかかっていた。
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(*・ω・)*_ _)ペコリ




